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吉田大八監督が、映画とCMの狭間で揺れるその心模様を語る

吉田大八監督が、映画とCMの狭間で揺れるその心模様を語る

BRANDED SHORTS 2018
インタビュー・テキスト
内田涼
撮影:鈴木渉 編集:久野剛士

動画マーケティングに力を入れる企業が増える中、「ブランデッドムービー」と呼ばれる映像が、企業側のメッセージや理念を伝えるコンテンツとして注目を集めている。こうした状況を受けて、アジア最大級の国際短編映画祭『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア』が、ブランデッドムービーに独自の基準を設け、日本で唯一の国際的な広告映像部門として『BRANDED SHORTS』を設立した。3回目となる今年は、審査員長に映画監督の吉田大八を迎え、計9名の審査員が「BRANDED SHORTS OF THE YEAR」を選出する。

本稿では某日、審査を終えた直後の吉田大八監督(『桐島、部活やめるってよ』『美しい星』『羊の木』)のインタビューを通じ、CMディレクターと映画監督という2つのキャリアを横断する吉田監督ならではの映像表現に対する思いをひも解く。

CMは「誰かが喜んでくれているか?」って部分を、映画以上に気にします。

—『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007年)で映画監督デビューを飾り、数多くの話題作を手がけている吉田監督。今回は『BRANDED SHORTS』の審査委員長を務めていらっしゃいますが、普段は作品に対する評価や批評を受ける立場でいらっしゃいますね。

吉田:そうですね。映画は公開されたあとで、興行結果やご覧になった皆さんの反応、映画賞とかいろんな物差しがあるんですけど、やっぱり監督として自分の名前と作品がセットになってしまうので、いろんな意味でもう開き直るしかないです。

『BRANDED SHORTS』の審査委員長を務める映画監督・吉田大八
『BRANDED SHORTS』の審査委員長を務める映画監督・吉田大八

—CMの場合は、いかがですか?

吉田:CMは「誰かが喜んでくれているか?」って部分を、映画以上に気にしますし、その点を見失わないようにしたいなと意識していますね。その「誰か」はクライアントかもしれないし、CMの企画をしたプランナーや、出演したタレントだったりするかもしれない。

いろんな意味で、「自分の仕事は、役に立ったのかな?」「自分の得点は、勝ち負けに関係あったのかな?」って。話を映画に戻すと、もう自分の名前で作ったんだから、勝っても負けても「自分の責任」で済むんですよ(笑)。

『BRANDED SHORTS』ノミネート作品『DREAM MAKERS』(Mike Skrgatic監督、イギリス、2017年)
『BRANDED SHORTS』ノミネート作品『DREAM MAKERS』(Mike Skrgatic監督、イギリス、2017年)

制限や条件を、ネガティブに捉えずにバネにしないと、表現はジャンプできません。

—吉田監督は、原作となる小説や戯曲の脚色を手がける映画作品も多いですね。

吉田:そうですね。ただ、すでに完成し、流通している原作を、わざわざ映画という形で作り直すモチベーションが自分の中で見出せないと、脚色は難しいですね。「ヒットしそう」とか、そういうことではなくて、すでに存在しているのに「もう1つの作品を生み出す意味」がどこにあるのかと。だから、単純に「原作を楽しめた」から脚色しやすいということはなく、自分が「原作をつかみ直せるか」という可能性を感じるかどうかが、大きな基準になっています。

角田光代原作、吉田大八監督作の『紙の月』予告編

—原作を脚色したり、映画化する際の「窮屈さ」みたいなものは感じますか?

吉田:窮屈だと思ったら、何もできないですよ。制限や条件を、ネガティブに捉えるのではなく、バネにしないと表現はジャンプできませんし。制限や条件が何もない状態で、「自由にどうぞ」って言われると、逆に手も足も出ない。

それに、そもそも自分の自由を他人のお金に換える覚悟なんて、そう簡単には持てません。だから、集団作業としての映画においては、「原作」や「納期」といった制限はあった方が、クリエイティブな意味でより自由になれる、という逆説はあると思います。

吉田大八

—「制限や条件をバネに」というのは、CMディレクターとしてのご経験から?

吉田:たぶん、それが大きいと思いますね。CMって、多くの場合は広告代理店のプランナーや、クリエイティブディレクターが企画して、それをCMディレクターが演出する。だから、毎回企画コンテを演出コンテに書き換える作業が必要になるんです。すごく単純に言うと、企業に向けて作られたものを世の中に向けて開く、その設計図を描く。それって、映画で言うと原作を脚色する作業に非常に近い。だから、CM出身の映画監督は脚色がうまいはずなんじゃないかなと思いますけどね。

『BRANDED SHORTS』ノミネート作品『春』(泉田岳監督、日本、2018年)
『BRANDED SHORTS』ノミネート作品『春』(泉田岳監督、日本、2018年)

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イベント情報

『BRANDED SHORTS 2018』

2018年6月5日(火)~6月8日(金) 会場:東京都 虎ノ門 アンダーズ東京 アンダーズスタジオ(虎の門ヒルズ)

上映作品:
『The Perfomance』(監督:Cole Webley)
『CLASH OF KINGS』(監督:Yuki Saito)
『窓と猫の物語「幼なじみ」篇』(監督:江藤尚志)
『DREAM MAKERS』(監督:Mike Skrgatic)
『春』(監督:泉田岳)
『Love U, XOXO』(監督:Thitipong Kerdtongtawee)
『MIRAI 2061』(監督:児玉裕一)
『ROAD TO YOU -君へと続く道-』(監督:川又浩)
『美知の通勤電車』(監督:田中嗣久)
『石油男とマッチ女』(監督:萩原健太郎)
『LOST PANDA』(監督:Mark Molloy)
『AKE DEMO』(監督:Komson Yamshuen)
『「アリキリ」第1話「残業編」』(監督:内山勇士)
『クルマから愛を、もっと。START YOUR IMPOSSIBLE』(監督:原田陽介)
『It's Tuna』(監督:Augusto Gimenez Zapiola)
『社畜ミュージアム』(監督:小山巧)
『General Howe's Dog』(監督:Noam Murro)
『Tomorrow's News』(監督:Rubin Henry-Alex)
『Lighthouse』(監督:鈴木智也 & Fawaz Al-Matrouk)
『恋人がファミチキ2017』(監督:江藤尚志)
『The Red Stain』(監督:Rodrigo Saavedra)
『Christmas together』(監督:Ismael Ten Heuvel)
『母の辛抱と、幸せと。』(作画:鉄拳)
『日清焼そばU.F.O.【6月24日はUFOの日】未確認藤岡物体襲来』(監督:佐藤渉)
『The Vodka With Nothing To Hide』(監督:Sam Hibbard)
『玉城ティナは夢想する』(監督:山戸結希)
『Overlook Hotel』(監督:Matt Dilmore)
『The Boy Nobody Could See』(監督:Martin Stirling)
『Three Minutes』(監督:Peter Chan)

プロフィール

吉田大八(よしだ だいはち)

1963年生まれ、鹿児島県出身。CMディレクターとして国内外の広告賞を受賞する。2007年『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で長編映画監督デビュー。第60回カンヌ国際映画祭の批評家週間部門に招待され話題となる。その後の監督作として『クヒオ大佐』(2009年)、『パーマネント野ばら』(2010年)。『桐島、部活やめるってよ』(2012年)で第36回日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞受賞。『紙の月』(2014年)で第38回日本アカデミー賞優秀監督賞受賞。2018年2月、最新作『羊の木』が公開された。

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