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『セラヴィ!』監督が語る、日仏で全く違う「対話」の考え方

『セラヴィ!』監督が語る、日仏で全く違う「対話」の考え方

『セラヴィ!』
インタビュー・テキスト
相田冬二
撮影:小林真梨子 編集:久野剛士

フランスでも日本でもみんなスマホを見続けている。まるで「自分の世界」というシャボン玉に閉じこもっているみたいに。

たとえば、危機的状況にあえて発する悪い冗談が、事態のムードを変えることがある。言葉はときにぶつかりあったり、すれ違ったりもするが、それでも何かを口にすることは、関係性の生成や回復につながる。恐れずに対話をすること。エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュの新作『セラヴィ!』には、「勇敢なおしゃべり」があふれている。

『セラヴィ!』場面写真 / ©2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE
『セラヴィ!』場面写真 / ©2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE

—本作が描くのは、主人公にとって人生最悪の日と言っても過言ではないと思います。それでも彼はスタッフたちとの対話を欠かしませんね。チームのメンバーたちは、従属的な部下ではないし、損得抜きの仲間でもない。それぞれ個性的な自立した存在です。

ナカシュ:社会がそうなっているからですね。一人ひとりの個性は違うけれども、一緒に生きていかなければならない。これは社会の縮図なんです。

—大変なときに、さらなる窮地に陥ったと絶望させるような過激なジョークを口にする女性がいる。また、ささいな言い間違いを、ことごとく指摘しつづける妙なこだわりを持った男性がいる。人物描写はユーモラスですが、違う者同士が対話することの難しさ、素晴らしさがここでは描かれています。

ナカシュ:よくわかってくれましたね。それが、この映画の核心なんです。この映画を企画したのはパリ同時多発テロ(2015年11月13日に起き、死者130名、負傷者300名以上の犠牲者を出した)が起こった頃。あの事件で、実は知り合いの知り合いが亡くなりました。ようするに、リアルに僕らに「関係する」事件だったんです。

僕らは人間だから、悲劇の影響を受ければ、もちろん泣いたりもするけれど、だからこそそのときに喜劇を作りたいと思いました。テロリストになんか負けたくないから、ドラマティックな悲劇を作るのではなく、社会の縮図を喜劇として描きたいと思ったんです。

オリヴィエ・ナカシュ

—対話には言葉が欠かせません。この映画は言葉をとても大切にしていますね。

ナカシュ:その通り。これは「言葉の映画」なんです。いま、世界中でインターネットや携帯電話によるコミュニケーションができるようになりました。でも、一人ひとりはすごく孤独だと思います。

今日、ここに電車で来たのですが、フランスと同じで日本の乗客もみんなスマホを見続けていますね。まるで「自分の世界」というシャボン玉の中に閉じこもっているみたいです。そんなシャボン玉を破裂させたいと思うし、そこから抜け出してもらうために、僕らはこの映画を作ったと言ってもいいかもしれません。

だから、この映画では生の言葉に具体的にフォーカスしています。個別に生きるのではなく、みんな一緒に前に進んでいかなければいけない。そのためには言葉で語らなければいけないし、対話をしなければいけないんです。それが僕らの関心事でした。

—スマホをデジタルな機器ではなく、あくまでもアナログなコミュニケーションツールとして映画的に用いていますね。閉じるのではなく、行動につながるようなものとして。そのことによって、また新たなハプニングも生まれるわけですが(笑)

ナカシュ:アナログからデジタルへの変化になかなかついていけない人間もいると思います。本来、これほどの先進技術の発展は1世紀ぐらいかけて行われていたはずなのに、いまはものすごくスピーディーになっていて、10年ごとのサイクルで変化します。わたしたちはちょっとそれについていけておらず、先進技術に翻弄されているような気がするんです。

オリヴィエ・ナカシュ

—そうした翻弄も肯定的に捉えるヒューマニティーが、この映画の魅力でもあります。 

ナカシュ:フランスでは「監督は仲裁役だ」と言われるくらいで、映画に登場する人すべてに、好意的な視線を投げかけたいと思っているんです。物語を作るときは、人物それぞれの個性をちょっと誇張するようにしています。でも、それは意地悪な見方をしているわけではなくて、その人たちを愛しているから。つまり、その人の存在に感動させられているからなんです。

ヴァンサン・マケーニュ(左端) / ©2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE
ヴァンサン・マケーニュ(左端) / ©2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE

ナカシュ:『セラヴィ!』に出てくる、自分をスターだと思い込んでるバンドのボーカルや、ちょっと横柄な新郎は、僕らフランス人にとっては本来「クソ野郎」なのですが、そういう人物にもどこかホロリとさせられるところがあるんですよ。それぞれの人間がちゃんと生きていて、ちゃんと共存している。誰ひとりとしてないがしろにしないような描き方をしたつもりです。

主演のジャン=ピエール・バクリ(1951年生まれ、フランスの俳優、脚本家)はフランスでは非常に尊敬されている大俳優で、映画には滅多に出てくれません。今回も5年かけてようやく口説き落としました。彼が演じた主人公マックスは、表面上はイライラしたりしてイヤなヤツなんだけど、心の中はあったかい、僕らが思い描く典型的なフランス人で、それをバクリは見事に体現してくれました。

左から、バンジャマン・ラヴェルヌ、ジャン=ピエール・バクリ / ©2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE
左から、バンジャマン・ラヴェルヌ、ジャン=ピエール・バクリ / ©2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE

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リリース情報

『セラヴィ!』

2018年7月6日(金)渋谷・シネクイント他全国公開
監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
出演:
ジャン=ピエール・バクリ
ジル・ルルーシュ
ジャン=ポール・ルーヴ
ヴァンサン・マケーニュ他
製作年:2017年
配給:パルコ

プロフィール

オリヴィエ・ナカシュ

1973年4月14日、フランス、オー=ド=セーヌ生まれ。エリック・トレダノ監督と林間学校で出逢い、映画好きなふたりは共同で映画作りを始める。1995年に初の短編映画『Le jour et la nuit』の監督・脚本を共同で手がけ、続く短編『Les Petits souliers』(99)はパリ映画祭観客賞を始めとする様々な賞を国内外で受賞し、一躍注目される。初の長編映画『Je préfère qu'on reste amis』(05)でジェラール・ドパルデューと出会い、主演のジャン=ポール・ルーヴは、観客からも批評家からも絶賛される。2011年、オマール・シーを主演に抜擢した『最強のふたり』が大絶賛を浴び、フランスをはじめ、世界各国で驚異的なヒットを成し遂げる。さらに世界中の賞レースを席巻、セザール賞全9部門、ゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞、ヨーロッパ映画賞、放送映画批評家協会賞にノミネートされ、東京国際映画祭では東京サクラグランプリに輝く。ハリウッドでのリメイクが進行中で、コリン・ファース、ケヴィン・ハートが出演する予定。妹は、『プレイヤー』などに出演している女優のジェラルディン・ナカシュ。

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