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糸奇はな×『UNDERTALE』作者 相思相愛の音楽&ゲーム談義

糸奇はな×『UNDERTALE』作者 相思相愛の音楽&ゲーム談義

糸奇はな『PRAY』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:中村ナリコ 編集:山元翔一

日本では直接ストーリーを語る曲があまりないそうですね。それって本当?(トビー)

—そもそもトビーさんが音楽を作りはじめたのは、ゲーム制作をはじめるより前なんですよね?

トビー:はい、ちょっと話が複雑なんですけどね。プロとして音楽を作りはじめたのは、プロとしてゲームを作るより先でした。でも、「GameMaker」というゲーム制作ツール自体は、10歳の頃から触っていました。当時は単なる趣味でしたけどね。

—ご自身に影響を与えてきた音楽というと、どんな音楽が思い浮かびますか?

トビー:難しい質問だな……本当にたくさんあるんですけど、自分に影響を一番与えてくれたものを挙げろと言われたら、やっぱり『MOTHER』シリーズの音楽ですね。

—『MOTHER』シリーズの音楽を手がけたのは、田中宏和さんと、鈴木慶一さんですね(参考記事:語り継がれる名作『MOTHER』からの25年 鈴木慶一×田中宏和)。

トビー:はい。ちょうど今、自分が心から好きだと思うゲームミュージックの膨大なリストを作っているんですけど。僕、本当にものすごく、ものすごくたくさんのゲーム音楽に影響を受けてきたんです。ほら……(ゲームの名前がズラリと並んだスマホ画面を見せながら)。

—うわ、本当に膨大な数ですね。

トビー:これ全部、僕のお気に入りです。これがファミコンの曲、これがゲームボーイの曲。こっちはスーパーファミコン、こっちはメガドライブ、こっちはプレイステーション、こっちはプレイステーション2……とにかく、僕はいろんなゲーム音楽が好きなんです。

トビー・フォックス

—先ほど糸奇さんがおっしゃっていた「音そのもので情景を描く力」というのは、数多くのゲーム音楽に触れるなかで養われたものなのかもしれないですね。

トビー:僕が聴くのはゲーム音楽ばかりですからね。もちろん、できるだけありとあらゆるものからインスピレーションをもらうように心がけていますけど。音楽は僕にとってすごく大切なものだし、聴いたことのある音楽は、みんな好きです。でも、じっくりと聴くのはゲーム音楽ですね。

—“74”を作る際に、歌詞の面で意識したことはありましたか?

トビー:こうやって歌モノの曲を作るのは初めてだったけど、詩人というよりは、ストーリーの語り手のような感じで書こうと思ったんです。そういえば、前に聞いたんですけど、日本では直接ストーリーを語る曲があまりないそうですね。それって本当?

糸奇:オペラで言うと、「アリア」って、ときが止まっている状態なんですね。「あの人が好き、好き、でもああこの気持ちどうしたらいいの、ああ、でも好き~」という場面があって、それで終わり、みたいな。そういう曲が日本には多いのかなって思います。曲中で物語が動きはじめて、人の気持ちや状況とかがパッと移り変わっていくっていうのは、珍しいような気がします。

トビー:世の中には「Oh, I miss my girlfriend~♪」なんて歌はたくさんあるから、僕はそういうのは書かなくていい(笑)。

糸奇はな“74”を聴く(Apple Musicはこちら

リスナーには、それぞれ好きなように、作品の秘密について考えてほしい。(糸奇)

—やはりトビーさんも糸奇さんも、物語であれキャラクターであれ、何かを「創造」するという点に、非常に強い力を信じているのかなって思いました。

トビー:もちろんです。クリエイティビティーというのはツールだから、どんなことだってできる。言ってしまえば、クリエイティビティーで人を殺すことだって、できてしまうんです。だからこそ、自分の内側にあるクリエイティビティーをどう使うかは、自分次第なんですよね。もちろん、自分が意図したことだけじゃなくて、受け取った人たちが、それをどう使うかにもよるけど。

糸奇:その感覚には、私も思うところがあります。誰かの言葉で、「矢は放たれるけど、思ったふうに飛んでいくとは限らない」というのがあって。自分が放った矢が、自分が意図していないところにブスッと刺さるかもしれない。そして、その矢を誰かが拾って、別の場所をグサグサと刺しはじめるかもしれない。そうやって自分の言葉や作品が、思わぬところで、思わぬ形で受け取られたりする場合もある。

さっきトビーさんは、「人を殺すこともできる」っておっしゃいましたけど、そういう両面を持っているという意味でも、やっぱりクリエイティビティーは強いものだなって思います。

—だとすると、自身の創造物を受け取る、受け手に対する信頼のようなものも、重要になってくるのかもしれないですね。

糸奇:トビーさんがいつだったか、「シークレットは、シークレットとして残しておきたい」と言っていたことがあって。私も、自分の音楽やキャラクターに秘密を残すようにしているんです。

トビー:自分の作品を受け取った人の反応というのは、コントロールしたくないものですよね。

糸奇:そう。聴いてくれる方には、それぞれ好きなように、作品の秘密について考えてほしいんですよね。

 

トビー:ねぇ、もし自分がRPGのなかで武器を持つとしたら、何を持つ?

糸奇:う~ん……ちなみに、トビーさんは?

トビー:僕は、武器は持たないよ。

糸奇:えーっ! ズルい(笑)!

トビー:僕はただの犬になる。武器はいらない。もし、敵が大きな剣を持ち出してきたら……攻撃をくらって、一発で死んじゃう(笑)。

—なんだか今の発言に、トビーさんの創造力の大事な部分があるような気もしますね。

糸奇:私は、剣は使いたくないから、魔法を使ってもいい?

トビー:うん。

糸奇:じゃあ、魔術かな。白魔術じゃなくて黒魔術。それで、音を使って攻撃する。悪い音のフルートとかで、敵を狂わせるんです。

—語弊があるかもしれないけど、ちょっと糸奇さんっぽいですよね(笑)。

トビー:念のため断っておきますけど、糸奇さんの音楽はそんなじゃないですからね(笑)。彼女の音楽は素晴らしいし、聴き手にダメージを与えたりはしませんよ(笑)。

左から:トビー・フォックス、糸奇はな

糸奇はな『PRAY』ジャケット
糸奇はな『PRAY』ジャケット(初回生産分限定盤をAmazonで見る

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リリース情報

糸奇はな『PRAY』初回生産分限定盤
糸奇はな
『PRAY』初回生産分限定盤(CD)

2018年8月7日(火)発売
価格:4,180円(税込)
PLCD-1187
※特製スリーブケース、特製立体ペーパーシアター付

1. きみでないのなら
2. ROLE PLAY
3. 74
4. Pillowman
5. A love suicide
6. 環 -cycle-
7. 不眠症ロンリーガール
8. 忘却舞踏
9. 四角い世界
10. Wither
11. 体内時計
12. あこかがれ

糸奇はな
『PRAY』通常盤(CD)

2018年8月7日(火)発売
価格:2,808円(税込)
PLCD-0003

イベント情報

『PLAY In The FRAME』

2018年9月10日(月)
会場:東京都 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
開場 18:45 / 開演 19:30
料金:前売り4,000円 / 当日4,500円

作品情報

『Undertale』

2017年8月16日より配信
価格:1,620円(税込)(PS4,PS Vita)、980円(税込)(PC,Mac,Linux)
開発:トビー・フォックス
発売・移植:ハチノヨン

プロフィール

糸奇はな
糸奇はな(いとき はな)

英仏の歌曲を吸収したボーカルパフォーマンスと、儚い内面性を表現する歌詞世界、クラシカルな要素が強くありながらも打ち込みを駆使した現代的かつエッジーなサウンドメイクで独自の幻想的な音楽を提示するアーティスト。小学生の頃に観た『オペラ座の怪人』に衝撃を受け、憧れ、声楽を学び始めた後、オリジナル曲の制作を開始。2016年8月10日には初のフィジカル作品となる『体内時計』手づくり版を110枚限定リリースし即完売。この作品は1枚1枚手刷りした版画でCDを包みナンバリングをするという凝りに凝った作品。これが音楽関係者の間で話題となり、11月にはタワーレコード限定の全国流通版として『体内時計』レプリカ版がリリースされ話題となった。歌唱、作詞、作曲、アレンジ、打ち込み、楽器演奏、といった音楽にまつわる全てのことをひとりでこなし、それだけでなくイラスト、動画、漫画、版画、刺繍、ゲーム作りからモールス信号まで、様々なやり方で独自の世界を表現するマルチアーティスト。

プロフィール

トビー・フォックス

アメリカ合衆国の作曲家、ビデオゲーム開発者。Webコミック『Homestuck』への音楽提供、2015年発表のコンピュータゲーム『UNDERTALE』の開発で知られる。

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