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近藤良平が思う、ここ10年のダンスシーンの激変と勝負どころの今

近藤良平が思う、ここ10年のダンスシーンの激変と勝負どころの今

『Dance Dance Dance @YOKOHAMA 2018』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:川浦慧

「ダンスを見る」ましてや「ダンスを踊る」と聞いて、気恥ずかしさを覚える昭和日本人的な感覚は、今やずいぶん遠いものになった気がする。アニメのエンディングに流れるダンスを真似ることから始まった「踊ってみた」カルチャーや、Instagramが押し広げた自撮りの一般化を経て、若者が自己表現としてダンスすることのハードルは驚くほど低くなった。また、古くさいものの代名詞のひとつだった地域の盆踊りが、失われつつある共同体を結ぶための手段・場として再注目されたことも、ダンスを取り巻く状況の変化を反映しているだろう。人類最古の芸術表現とも言われる「踊ること」は、21世紀の今も、その意義をアップデートさせながら私たちの近いところにある。

横浜を舞台に3年に一度開催されるダンスフェスティバル『Dance Dance Dance @YOKOHAMA』も、そんな時代の鏡と言えるかもしれない。国内外から招聘されたプロフェッショナルの作品上演は、同フェスの大きな柱だが、それと並んで重視されているのが、市民参加型の公募プログラム『横浜ダンスパラダイス』だ。約2か月間、横浜各地で行われる多彩なパフォーマンス、ワークショップは、今日のダンスシーンの多様性を示すものとも言えるだろう。

今回、共同ディレクターとしてフェスティバルに関わる近藤良平は、2000年代後半から、自作の発表だけでなくダンスを通したコミュニティーシーンの形成に意識的に活動してきた振付家 / ダンサーだ。彼から見える、ダンスの風景、ダンスの現在地を聞いた。

去年はバブリーダンス、今年はポカリスエットの高校生ダンスのCMが話題で、その年ごとのダンスの「顔」が見えてくるようになった。

—2012年に始まった3年ごとのダンスフェスティバル『Dance Dance Dance @YOKOHAMA(以下、DDD)』に近藤さんは毎回出演してきましたが、今回はなんとディレクターとしての参加ですね。

近藤:はい。これまでは毎回盆踊りでの参加でした。6年前の第1回は横浜ランドマークタワー下のドッグヤードガーデン(『コンドルズと踊る! 横浜大盆ダンス』)、第2回は横浜赤レンガ倉庫の広場にやぐらを組んで(『コンドルズと踊る! 横浜大盆ダンス2015 ブルーライトヨコハマ編』)、お客さんと一緒に踊りました。

近藤良平
近藤良平

—2018年は日仏交流160周年ということで、今回の『DDD』はフランスの『リヨン・ダンス・ビエンナーレ』と連携しています。同ビエンナーレ監督のドミニク・エルヴュさんとの共同ディレクションを行うとのことですが、どんな構想で臨んでいますか?

近藤:ドミニクさんは海外アーティストを中心とする招聘プログラムを担当して、僕はどちらかというと市民参加型のプログラムで「なにか面白いことができないかな?」と、たくらむ係(笑)。今は8月11日から始まる『横浜ダンスパラダイス』の準備の真っ最中です。

同プログラムは、プロ / アマチュアの区別なく、全国のダンス好きが自由に参加できる応募型の公演プログラムです。ヒップホップ、フラメンコ、チアダンスといったパフォーマンスを、開催から9月30日までの毎週末、無料で観ることができます。約2か月の会期中、観たことのないダンス、自分好みのダンスに出会えるチャンスがたくさんあります。

近藤良平振り付けによるオリジナルダンス『レッド・シューズ ‐Red Shoes』(公式サイトはこちら

—公式サイトを見ると、ジャンルの多彩さに驚かされます。やっぱりヒップホップなんかは人気ですが、なかには能楽もあったりします。

近藤:今あるダンスが全部集まっているような勢いでしょう? ディレクターとして運営に関わってみて面白かったのは、エントリーの内容や数から、今の「ダンス」の風景がわかること。例えば、今年はポールダンスの盛り上がりがすごくて、全国にこんなに愛好する人たちの会があるとは知りませんでした。

それから、去年は大阪府立登美丘高校のバブリーダンスが人気でしたけど、今年はポカリスエットの高校生たちが踊るCMが話題になっていて、その年ごとのダンスの「顔」みたいなものが見えてくるようになっている。

—作品ではないですけど、音楽にのせてショートダンスを共有するアプリ「Tik Tok」なんかも、最近登場したばかりです。

近藤:あれもすごく今っぽいダンスの表れですよね。一方で、フラダンスなんかは時期に関係なく不動に人気がある。ニコニコ動画やYouTubeから生まれた「踊ってみた」系も元気で、あらゆるジャンルを集めるとのべ4,000人がエントリーしている。趣味・趣向を持って踊っている人がそれだけの数いることに、まずびっくりします。

僕はダンスをするようになってずいぶん経ちますが、コンドルズや自分で踊るダンス、誰かのために振り付けするダンス、あるいは今みたいにインタビューに応えて発言することも、すべてダンスの世界に関わっているわけで、こんなに大きなシーンに成長したのが素直に嬉しいです。

—特に近藤さんは、ワークショップや教育の場でもダンスの普及に関わってらっしゃったので、感慨も大きいように思います。池袋で始めた『にゅ~盆踊り』も今年で11回目になりましたから。

近藤:びっくりですよね。正直言って、盆踊りはかなりテキトーに作った振り付けなんです(苦笑)。小さなワークショップから始まって、まさかこんなに長く続くとは思ってもいませんでした。でも、そのテキトーさがけっこう重要で、「伝統に残そう!」なんて気張りがないから、遊びみたいなことを試すことができた。そして思った以上に盛り上がったので、「じゃあ来年もやろうか」って感じで続いてきました。

近藤良平

近藤:ダンサーや振付家として活動していると、基本的に毎回新作を求められるんですよ。そのつど、アイデアを絞り出すのにかなり苦労するんだけど、盆踊りのように型が定まってくると「新しいものを作ろう!」ってモチベーションのほかに「続けていこう!」ってモチベーションが湧いてくる。その意識は関わる人や参加者にも伝わるので、もしも僕がその場にいなくてもダンスそのものは続いていくんです。ちょうど今年の盆踊りを先週やってきましたけど、そういうことを強く感じました。

だから『DDD』が今年で3回目というのもいいと思うんですよね。3年に一度、馴染みのあるダンスの波がやって来て、そこに毎回参加する人がたくさんいて、そして改めてダンスを見直す機会になる。それは僕自身にとってもありがたい経験です。

近藤良平振り付けによるオリジナルダンス『レッド・シューズ ‐Red Shoes』振り付けレクチャー動画(公式サイトはこちら

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イベント情報

『Dance Dance Dance @YOKOHAMA 2018』
『Dance Dance Dance @YOKOHAMA 2018』

2018年8月4日(土)~9月30日(日)
会場:神奈川県 横浜市内全域
出演:
東京バレエ団
近藤良平
東京ゲゲゲイ
コンドルズ
バレエ・ロレーヌ
マチュラン・ボルズ
森山未來
s**t kingz
ほか

『Fly Me to the Moon~いとしのペリー~』

2018年8月10日(金)
会場:象の鼻パーク 特設ステージ(野外)
出演:コンドルズ

『近藤良平・ヨコハマ・ガラ』

2018年8月12日(日)
会場:象の鼻パーク 特設ステージ(野外)
出演:平山素子、大前光市、近藤良平、お茶の水女子大学、埼玉大学、筑波大学、横浜国立大学(各大学ダンス部有志)ほか

『横浜ダンスパラダイス』

2018年8月11日(土)~9月30日(日)
参加アーティスト:
s**t kingz
OSK日本歌劇団
横浜DeNAベイスターズオフィシャルパフォーマンスチーム diana
株式会社 崎陽軒社員
ZiNEZ-ジンジ-
プリキュア15周年記念企画 ダンススペシャルステージ
ひつじのショーンステージ
ほか

プロフィール

近藤良平(こんどう りょうへい)

ペルー、チリ、アルゼンチン育ち。コンドルズ主宰。平成28年度(第67回)文化庁芸術選奨文部科学大臣賞受賞。第4回朝日舞台芸術賞寺山修司賞受賞。TBS系列「情熱大陸」、NHK「地球イチバン」出演。NHK教育「からだであそぼ」内「こんどうさんちのたいそう」、「かもしれないたいそう」、「あさだからだ!」内「こんどうさんとたいそう」、NHK総合「サラリーマンNEO」内「サラリーマン体操」などで振付出演。「AERA」の表紙にもなる。他にも野田秀樹作演出NODA・MAP「パイパー」に振付出演。野田秀樹演出、NODA・MAPの四人芝居「THE BEE」で鮮烈役者デビュー。前田哲監督映画「ブタがいた教室」などに役者として出演。サントリーBOSS「シルキーブラック」TVCMにも出演。NHK連続TV小説「てっぱん」オープニング振付、三池崇史監督映画「ヤッターマン」、宮崎あおい主演「星の王子さま」などの振付も担当。郷ひろみ「笑顔にカンパイ」振付。女子美術大学、立教大学などで非常勤講師としてダンスの指導もしている。愛犬家。

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