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『バジーノイズ』むつき潤が語る、ロックマンガへのカウンター

『バジーノイズ』むつき潤が語る、ロックマンガへのカウンター

Eggs
インタビュー・テキスト
阿部美香
撮影:新妻和久 編集:久野剛士

人間同士のコミュニケーションを最も現代的な形で反映している「SNS」とは何かを描きたかったんです。

—絵柄の話で言えば、音楽という形のないものを、いかに絵で表現するかは、とても難しいと思うんです。ところが、『バジーノイズ』はその表現方法もとても新鮮でした。清澄が音を鳴らすと、シャボン玉のような大小の丸がぽわぽわと彼の周りに飛び交いますね。

むつき:それも既存の音楽マンガへのカウンターですね。ロックマンガの演奏シーンに描かれる、勢いのある「ギュイーン!」みたいな表現を、今回はしたくなかった。

 

むつき:丸い玉は、音源制作ソフトの画面に打ち込みの音の点々が浮かんでいるのを見たのがヒントになりました。僕にとって音楽の最大要素はビートなので、ポンポン弾むもののイメージがそこに重なり、ピンときた気がします。もうひとつは、YOOKsの“hanashi”のミュージックビデオ。ネオンが光の玉となって車窓を過ぎ去っていく映像にも、インスパイアされました。

—その丸い玉に囲まれて、幸せそうな顔になる清澄の音楽表現。さらに、清澄の心がモヤモヤしたときには、実際にモヤモヤな線が画面を埋めて、心情表現されている。表情が非常に乏しい清澄の微妙な心の動きが、そのふたつで可視化されているのが、とても面白いです。

むつき:モヤモヤに関しては、構想の初期段階で、彼が突発性難聴を患っているという設定があったときの名残なんですよ。僕にも突発性難聴を抱えてる友達がいて、片耳がずっと耳鳴りがしているそうなんです。設定自体はなくなりましたが、結果的にフラストレーションが溜まったときに出てくるノイズ感をモヤモヤで残すのは面白いと思い、活かしてます。

むつき潤

—シンプルでスタイリッシュ、クールな印象を受ける『バジーノイズ』のビジュアルですが、読んでみると音楽や心のモヤモヤといった有機的なものが、絵からあふれ出して見えます。その表現自体が、とても音楽的だと思います。

むつき:そう言っていただけると、うれしいですね。僕はマンガにせよ音楽にせよ、かなり遅れて入った人間なので、固定観念がない。それが逆に良かったのかも知れないですね。

『BECK』も『ソラニン』も、実際に音楽をやってらっしゃった方が描いていると聞くので、僕にしか描けないものをキープするためには、まず音源制作の詳しいところを描く選択肢を、あえて削ごうと思いました。それは僕が描きたい物語ではない。

僕は人間同士のコミュニケーションを最も現代的な形で反映している「SNS」とは何か? を描きたくて『バジーノイズ』を始めました。そこで、いわゆる「ミニマムな暮らしで満足し、余計な希望を持たずひとりになりたいと思う現代性」は清澄に、「SNSで承認欲求を満たす1億総発信者たる現代」というものの投影は潮に担ってもらっています。

左から:潮、清澄
左から:潮、清澄

—SNS社会における、現代人のふたつの層が、2人のメインキャラクターに投影されているんですね。

むつき:そうですね。そして、僕の中にもその2人の要素は確実に共存しています。いま連載のほうで清澄はバンドを組むようになるんですが……清澄と潮たちは現実の人との繋がりを通じて、どうなっていくのかを描いていきたい。音楽とマンガの相似性というものを裏テーマにしながら、『バジーノイズ』に僕が現在の社会に思うことを、込めていければと思います。

むつき潤
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『Eggs』
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料金:無料

書籍情報

『バジーノイズ(1)』
『バジーノイズ(1)』

2018年9月12日(水)発売
著者:むつき潤
発行:小学館

プロフィール

むつき潤(むつき じゅん)

マンガ家。兵庫県出身。大学時代に新人賞を2度受賞するもデビューには至らず。大学卒業後、新聞社でバイトをしながらマンガを描きつづけ、2015年『ビッグコミックスピリッツ』に掲載された『ハッピーニューイヤー』でデビュー。2018年5月から『ビッグコミックスピリッツ』で初の連載マンガ『バジーノイズ』を執筆中。

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