
Homecomingsインタビュー 寂しさに寄り添い、日々に祈るように
Homecomings『WHALE LIVING』- インタビュー・テキスト
- 天野史彬
- 撮影:岩元崇 編集:山元翔一
「変わらないために、変わっていく」――この言葉の意味は、大人になればなるほどわかってくるものだ。Homecomingsは、変わり続けてきたバンドである。彼らは作品を重ねるごとに、音楽性を拡張させ、サウンドを変化させてきた。そして、10月24日にリリースされる3rdフルアルバム『WHALE LIVING』において、彼らは「日本語詞」という新たな領域に足を踏み入れた。「平賀さち枝とホームカミングス」の活動などで日本語詞を披露することはあったものの、自身の作品では初の試み。『WHALE LIVING』は、全10曲中、2曲のインスト曲と、映画『リズと青い鳥』に書き下ろされた“Songbirds”を除く7曲が、日本語詞による楽曲で構成されている。
Homecomingsは、再び変わった。しかしそれは、変わらないための変化だ。本作を聴くと見えてくるもの、それは日常のなかにある細やかな幸せを紡ぐような、あるいは、部屋で頬杖をつく少女のため息にそっと色を灯すような――そんな、彼らが一貫して表現し続けてきた小さくて気高い祈りのようなもの。そう、Homecomingsは変わらない。彼らはずっと、あなたの「寂しさ」に寄り添い続けている。この素晴らしい作品の誕生を祝して、福富優樹と畳野彩加に話を聞いた。
「バンドにも賞味期限があるな」っていうことを前々から感じていたんです。(福富)
—Homecomings(以下、ホムカミ)は、作品を経るごとに変化を重ねてきたバンドだと思うんです。ただ今回、アルバムの大半の歌詞を日本語詞で制作されたのは、これまでにない大きな覚悟のようなものを感じました。まず、今作『WHALE LIVING』で日本語詞を取り入れようと思った理由から聞かせていただけますか?
福富(Gt):「いつか日本語でやりたい」という気持ちは、ずっとあったんですよ。でも、なんというか……嫌な言い方をすると、「バンドにも賞味期限があるな」っていうことを前々から感じていたんです。こうやってアルバムをリリースできることが当たり前じゃなくなる、そういう瞬間がいつかくるんじゃないかっていう感覚が、自分にはあって。
—「バンドの賞味期限」って、聞いている側としてもグサッとくる言葉なのですが。
福富:そうですよね(苦笑)。
—それは、いつごろから生まれた感覚なのでしょうか?
福富:2016年に『SALE OF BROKEN DREAMS』を出して、そこからすごい数のライブをやって。そこで生まれた「ライブ感」を作品に落とし込んでみようという試みで、去年『SYMPHONY』というEPを作ったんです。
あのEPはすごく気に入っているんですけど、その流れでアルバムを作るのはしんどくて。去年の夏の終わりごろから、明らかにバンドが消耗して、危うくなる瞬間が出てきたんです。
Homecomings『SYMPHONY』収録曲
福富:ライブと制作を両立する怒涛の日々のなかで活動を続けていけるバンドだったらよかったけど、僕らはそういうタイプではなかった。そういう状況になったとき、バンドを「続けていきたい」と思うからこそ、考えなきゃいけないことがあるなと思って。
僕らは、自分たちのなかにある「音楽をやりたい」っていう気持ちと同じくらい、外からやってくる波に乗って進んできたところもあるんですよ。たとえば、今のような形で作品がリリースできなくなって、宅録で作った作品を自主制作で出すしかない、みたいな状況に置かれたら、僕らはもうホムカミをやらなくなると思っていて。
—ホムカミは、自分たちの気持ちだけで完結できるバンドではなかった。
福富:そうなんです。それなら、ちゃんと聴いてもらえて、ある程度、自分たちの作りたいものを作らせてもらえる環境が整っているうちに、「やりたい」と思っていたことはやっておかないといけないなって思ったんです。
日本語でやることで広がりが生まれて、次のアルバムや、その次のアルバムも作れたらいいなとも思いましたしね。ただ、今、僕が言ったことに関しては、4人でちゃんと話したっていうことではないんですけど。
リリース情報

- Homecomings
『WHALE LIVING』(CD) -
2018年10月24日(水)発売
価格:2,592円(税込)
PECF-1162︎1. Lighthouse Melodies
2. Smoke
3. Hull Down
4. Parks
5. So Far
6. Corridor(to blue hour)
7. Blue Hour
8. Drop
9. Whale Living
10. Songbirds
イベント情報
- 『2018寒梅館コンサート「Our Town, Our News」』
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2018年11月8日(木)
会場:京都府 同志社大学寒梅館ハーディーホール
出演:Homecomings
Guest:岸田繁(くるり)
料金:2,500円
※チケット購入特典:Homecomingsによる京都新聞CMソング「アワー・タウン」のCDを入場時にプレゼント。
- 『Homecomings「LETTER FROM WHALE LIVING」TOUR』
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2018年11月30日(金)
会場:広島県 4.14
料金:前売3,500円
※ワンマンライブ2018年12月1日(土)
会場:福岡県 UTERO
料金:前売3,500円
※ワンマンライブ2018年12月8日(土)
会場:石川県 金沢GOLD CREEK
料金:前売3,500円
※ワンマンライブ2018年12月15日(土)
会場:北海道 苫小牧 ELLCUBE
出演:
Homecomings
NOT WONK
YOU SAID SOMETHING
料金:前売2,500円2018年12月16日(日)
会場:北海道 札幌 COLONY
出演:
Homecomings
NOT WONK
料金:前売3,500円2018年12月22日(土)
会場:大阪府 梅田 Shangri-La
料金:前売3,500円
※ワンマンライブ2018年12月24日(月・振休)
会場:愛知県 名古屋 APOLLO BASE
料金:前売3,500円
※ワンマンライブ2018年12月25日(火)
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO
料金:前売3,500円
※ワンマンライブ
プロフィール

- Homecomings(ほーむかみんぐす)
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京都を拠点に活動する4ピース・バンド。The Pains of Being Pure at Heart / Mac DeMarco / Julien Baker / Norman Blake(Teenage Fanclub)といった海外アーティストとの共演、3度に渡る「FUJI ROCK FESTIVAL」への出演など、2012年の結成から精力的に活動を展開。2016年2ndフルアルバム『SALE OF BROKEN DREAMS』、2017年に5曲入りEP『SYMPHONY』をリリース。同年新たなイベント「New Neighbors」をスタート、Homecomingsのアートワークを手掛けるイラストレーター”サヌキナオヤ”氏との共同企画で彼女たちがセレクトした映画の上映とアコースティックライブを映画館で行っている。FM802「MIDNIGHT GARAGE」での月1レギュラーコーナーは3年目に突入、2018年4月から始まった京都αステーションでのレギュラー番組「MOONRISE KINGDOM」は毎週水曜23:00放送中。また4月21日全国ロードショーとなった映画「リズと青い鳥」の主題歌を担当している。
関連チケット情報
- 2021年1月29日(金)〜2月14日(日)
- 【動画配信】Homecomings BLANKET TOWN BLUES
- 会場:PIA LIVE STREAM(その他)