
劇団子供鉅人11人インタビュー。関西時代から伝え続ける普遍の愛
『NEWTOWN』- インタビュー・テキスト
- 萩原雄太
- 撮影:豊島望 編集:川浦慧
日本全国に数多の劇団がひしめくなか、関西発の劇団子供鉅人は、独特の魅力を放っている。近年では、「熱い」関係を嫌って少人数編成での劇団が増えつつあるなか、益山3兄弟をはじめする11人の劇団員たちは「熱苦しい」関係のもとに、圧倒的にエネルギッシュで美しい作品を発表し続けている。
そんな子供鉅人が、11月10~11日に多摩で開催されるカルチャーイベント『NEWTOWN』に登場。そこで上演されるのは、ハチャメチャな舞台を展開するパワフルな子供鉅人のA面ではなく、しっとりと美しい物語を奏でる言わばB面としての姿。3人の俳優とピアニストの生演奏という少人数編成によって紡ぎ出される作品『ニュータウン / パラダイス』では、ニュータウンの在りし日の姿が語られる……。はたして、どんな作品になるのだろうか?
本インタビューは、劇団員11人全員の証言をもとに子供鉅人のこれまでや、劇団の根底に流れ続ける「愛」を紐解いたものだ。一軒家を利用した劇団事務所に全員が結集し、熱(苦し)い激論が交わされた!
演劇っていう方法がいちばん遊びやすかったんです。(益山貴司)
—今日は、総勢11人の劇団員全員に集結してもらいました! よろしくお願いします。
一同:よろしくお願いします!
—ところで、あちらの人は……。
益山U☆︎G(以下、U☆︎G):これ、僕の制服なんで。
益山貴司(以下、貴司):お前何なん?
U☆︎G:え? これが普通やで。
貴司:普通ちゃうやん。無視してください。
—……はい(笑)。まずは、子供鉅人結成のいきさつからお話を伺っていきたいと思います。現在は東京で活動していますが、以前は大阪を拠点に活動していましたね。そもそも、なぜ劇団を立ち上げたのでしょうか?
貴司:もともと、僕が高校生の頃から演劇をしていたんですよ。芸術系の高校に通っていたので、いろんなジャンルの人とよく遊んでいました。その後、高校を卒業して20歳になってから大阪でバーを始めたんです。その時に、いろんな人と出会っていくうちに「おもしろい人となにかをしたい」という気持ちがふつふつと湧いてきた。その時に、自分としては、演劇っていう方法がいちばん遊びやすかったんです。そこで、子供鉅人を結成し、公演を行いました。
—そもそもが、演劇をやるという目的で劇団を作ったのではなく、おもしろい人と遊びたいというモチベーションから始まったんですね。
貴司:そうですね。だから、ここにいる劇団員も全員、まず僕がおもしろいと思った人たち。今でも、究極的な目的は「おもしろいことをしていきたい」ということだけなんです。だから、普通に劇場で芝居をするだけでなく、興味の赴くままにいろいろなことをしています。
—ベルギーやフランスといったヨーロッパでもたびたび公演を行う一方、下北沢のライブハウスでハロウィンパーティーを企画するなど幅広い活動を展開していますね。
貴司:ヨーロッパツアーも、フェスティバルに呼ばれて行くような通常の劇団が通る正規のルートではなく、「ドサ回り」や「自腹ツアー」と呼んでいるもの。そもそも、ヨーロッパに行きはじめたきっかけは、大阪でバーをしていた時にたまたま知り合ったベルギー人ミュージシャンのツテなんです。彼らを家に泊めたことから仲良くなって、現地に芝居をしに行くようになりました。かれこれ、もう4回もツアーを行っていますね。
—既成概念にとらわれない活動で『CoRich舞台芸術まつり!』では2012年に準優勝、関西で本当におもしろい芝居を選ぶ『関西ベストアクト』では2期連続1位を獲得し、2014年には東京への進出を果たしています。大阪で活動を続けることも可能だったはずですが、なぜ、東京での活動を選んだのでしょうか?
貴司:東京に来た理由は、自分らがやりたいおもしろいことを続けていくためには、仕事にしないといけないから。そのためには、やはり関西では厳しいんです。いちばんのきっかけとなったのが、僕自身、NODA MAP(演出家・野田秀樹の主宰する劇団)にアンサンブルとして出演したことでした。
東京で、最高のキャスト、スタッフと劇場の環境に触れたことによって、「こういうところで戦いたい!」という思いが湧いてきたんです。
—東京に進出を果たしたことによって、作品の内容も変わったんでしょうか?
貴司:いや、変わっていないと思いますね。ただ、東京に来てからは、しっかりとした劇場で作品を作ることが多くなっているかもしれません。大阪では空き家を借りたり、船の上で上演したり、アパートを解体する演劇をしたりしていた。そういった劇場以外の環境でやる場所が、大阪の場合は豊富なんです。
—アパートを解体する演劇……とは?
貴司:2016年に、茨木市で行った『文化住宅解体公演』という作品です。おそらく、演劇史上初、建物を解体しながら行われる演劇でした。
山西竜矢(以下、山西):あれ、粉塵大丈夫やった? 俺、粉塵を吸い込みまくってすごく体調悪くなって、終わってからもずっと咳してたんだけど……。
キキ花香(以下、キキ):お客さんは防じんマスクを使っていたけど、役者はほとんど付けていなかったやろ。しかも、最後まで付けてなかったのは山西くんだけやもんな。
貴司:アパートの中のいろいろな部屋で演劇が展開されていくんですが、それらのすべての部屋から山西がいる部屋に向かって壊していくんです。
—怖すぎます……。
山西:壁を壊していく人を見ながら、人って狂気の姿があんねんな……と思いました。
イベント情報

- 『NEWTOWN』
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2018年11月10日(土)、11月11日(日)
会場:東京都 多摩センター デジタルハリウッド大学 八王子制作スタジオ(旧 八王子市立三本松小学校)
時間:10:30~19:00(予定)

- 劇団子供鉅人
『ニュータウン / パラダイス』 -
2018年11月10日(土)、11月11日(日)
会場:東京都 多摩センター デジタルハリウッド大学 八王子制作スタジオ(旧 八王子市立三本松小学校)公演日時:
11月10日(土)13:45 / 17:15
11月11日(日)13:45 / 17:15
作・演出:益山貴司
出演:億なつき、益山寛司、古野陽大
演奏:トム・カラーツ(ピアノ)
チケット料金:2,000円 / 学生前売1,500円(要学生証)
プロフィール

- 劇団子供鉅人(げきだん こどもきょじん)
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05年益山貴司・寛司兄弟を中心に大阪で結成。関西タテノリ系のテンションと骨太な物語の合わせ技イッポン劇団。団内公用語関西弁。人間存在のばかばかしさやもどかしさをシュールでファンタジックな設定で練り上げ、黒い笑いをまぶして焼き上げる。生バンドとの音楽劇から4畳半の会話劇までジャンルを幅広く横断。4度に及ぶ欧州ツアーや台湾公演など国内外にて精力的に公演中。近年は東京に拠点を移し、本多劇場にて出演者100人よる「マクベス」、お化け屋敷パフォーマンスでSICF19グランプリ受賞など勢力拡大中。CoRich舞台芸術まつり!2012準優勝。関西でほんとに面白い芝居を選ぶ「関西ベストアクト」二期連続一位。