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中村佳穂という「歌」の探求者。魂の震えに従う音楽家の半生

中村佳穂という「歌」の探求者。魂の震えに従う音楽家の半生

中村佳穂『AINOU』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:池野詩織 編集:山元翔一
2018/11/06

芸術の本質とはなにか? その解釈は人によって様々だろうけど、僕はやはり「コミュニケーション」なのだと思う。芸術を通して自分を知り、芸術を介して人とつながり、それによってさらに深く自分を知ることにもなる。京都在住の音楽家、中村佳穂のこれまでの歩みを振り返ると、そんなことを改めて考えさせられる。

京都精華大学在学中に本格的に音楽活動をスタートさせると、ソロ~デュオ~バンドと流動的な形態でライブ活動を展開。固定メンバーを決めずに、全国各地で出会ったミュージシャンを引き入れては、セッションを行ってきた。2016年に発表した1stアルバム『リピー塔がたつ』は高い評価を獲得し、同年『FUJI ROCK FESTIVAL』への出演も果たしている。

レミ街の荒木正比呂と深谷雄一、CRCK/LCKSの小西遼、吉田ヨウヘイgroupの西田修大らとともに制作された新作『AINOU』は、生演奏とプログラミングが有機的に溶け合ったトラックの上で、中村がソウルフルかつ土着的な歌を響かせる、ポップでありながらも先鋭的な文句なしの傑作。Hiatus Kaiyoteらとのリンクもありつつ、あくまで魂の震えに従って作られた、オリジナルな作品であることは強調したい。音楽と美術で悩み続けた学生時代から、2年間のコミュニケーションの結晶である『AINOU』についてまで、存分に語ってもらった。

絵か音楽か、大学に入る直前まで、どっちの道に進むか悩みに悩み続けて……というか、幼稚園のころから悩み続けていた。

—プロフィールには「京都精華大学に入学した20歳から本格的に音楽活動をスタート」とありますが、まずは中村さんが「音楽」という表現を選ぶに至るまでをお伺いしたいです。

中村:幼いころから歌を歌うことと絵を描くことが大好きで、鼻歌を歌いながら何時間も絵を描いてるような子どもでした。両親が教師で、いろいろ習い事をさせくれてたんですけど、そのなかでも音楽と絵が特に好きだったみたいです。

中村佳穂
中村佳穂

—お母さんがかなりの音楽好きなんですよね。

中村:そうです。奄美大島の人なんですけど、手に入りにくいCDやレコードを頑張って探して、それをずっと聴いているような人でした。結婚して、関西に移ってもそれは変わらずで、昔から家ではずっと音楽が流れていました。

—お母さんは奄美大島ご出身なんですね。中村さんの歌から感じる、土着的なフィーリングのルーツが少しわかったような気がします。中高は吹奏楽部だったそうで、そのころから音楽にシフトしていった?

中村:いや、まだ絵も音楽もどっちもやっていました。高校のときは美術部の半幽霊部員みたいになりながら、美術の大学を目指していたんです。その一方で、吹奏楽部でフルートとサックスと学生指揮をやってたので、毎日どっちもやってた感じですね。大学に入る直前まで、どっちの道に進むか悩みに悩み続けて……というか、幼稚園のころから悩み続けてた(笑)。

高校は普通科だったんですけど、美術が強い学校で、「中村さんは美術がいいと思うから、美大に入りながら音楽をやったら?」って先生に言われていたんです。その先生がすごく変わってて、「なぜ君は絵を描くのか?」とか「こういう表現をしたいなら、なぜ黄色を選んだのか?」とか、根本的なところを聞くタイプの人で。

中村佳穂

中村:そうやって3年間自分と向き合いながら絵を描いてきて、実際に美大合格の直前までこぎつけたんです。でも、卒業制作として大きなキャンバスに絵を描いていたら、なんか泣けてきて。悲しくも嬉しくもないのに、でも泣けてきて、泣きながらずっと筆を動かしてて。

—それはどんな涙だったんだと思いますか?

中村:ずっと「なぜ描くのか?」ってことに向き合ってきたので、なにか本質的にズレてるんじゃないかって、描きながら体が無意識に反応していたんだと思います。

ずっと絵か音楽かで悩んでたなかで、「絵をやりつつ、上手くいけば音楽もやるか」くらいの気持ちでやっていたけど、「これは一本にしたほうがいい。しかも、絵ではないんだ」って直感したというか。確信はないんですけど、「これだけ泣けるんだから、音楽なんだろう」くらいの感じ。それで「歌にしよう」って決めて、両親を説得して、もう一度オープンキャンパスで大学を選び直すところからはじめました。

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リリース情報

『AINOU』
中村佳穂
『AINOU』(CD)

2018年11月7日(水)発売
価格:3,024円(税込)
DDCB-14061

1. You may they
2. GUM
3. きっとね!
4. FoolFor 日記
5. 永い言い訳
6. intro
7. SHE'S GONE
8. get back
9. アイアム主人公
10. 忘れっぽい天使
11. そのいのち
12. AINOU

イベント情報

『中村佳穂BAND presents. 2nd album「AINOU」release party』

2018年12月4日(火)
会場:京都府 磔磔

2018年12月6日(木)
会場:愛知県 名古屋 TOKUZO

2018年12月22日(土)
会場:東京都 下北沢 club251

『中村佳穂 presents. 2nd album「AINOU」release party~好きな人の音楽で旅立たせるの巻~ at下北沢440』

2018年12月22日(土)
会場:東京都 下北沢 440
開場 12:00 / 開演 13:00

出演:
中村佳穂SOLO
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プロフィール

中村佳穂
中村佳穂(なかむら かほ)

「彼女が自由に歌うとき、この世界は輝き始める。」数々のイベント、フェスの出演を経て、その歌声、音楽そのものの様な彼女の存在がウワサを呼ぶ京都出身のミュージシャン、中村佳穂。ソロ、デュオ、バンド、様々な形態で、その音楽性を拡張させ続けている。ひとつとして同じ演奏はない、見るたびに新しい発見がある。今後も国内外問わず、共鳴の輪を広げ活動していく。2016年、『FUJI ROCK FESTIVAL』に出演。2017年、tofubeats『FANTASY CLUB』、imai(group_inou)『PSEP』、ペトロールズ『WHERE, WHO, WHAT IS PETROLZ?? -EP』に参加。2018年11月、2ndアルバム『AINOU』をリリース。

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