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Poet-type.Mが語る、30代の気づき「つまんねえ人間になってる」

Poet-type.Mが語る、30代の気づき「つまんねえ人間になってる」

Poet-type.M『Pocketful of stardust』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:高橋一生(sui sui duck) 編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)

苦手なことは苦手だからいいやって、心を閉ざしてしまうことは本当にくだらないことだなって心の底から思いました。

—“Star dust”“MoYuRu”“瓦礫のオルフェオ(Om br a mai fu)”では、アートディレクターの高橋一生くんと、ダンサーの櫻井香純さんを迎えて、インスパイアドムービーが作られています。若いクリエイターとのコラボレーションも新たな選択ですよね。

門田:めちゃめちゃ刺激になりましたね。自分より十以上若い子たちのもの作りに対する気持ちって、正直すっげえ勉強になりました。今の自分には彼らみたいな勇気がなかったなって。そこはすごく、今回自分の中で一番大きな変化だったかもしれない。

最近いろんなことを前向きにやるようになったんですよ。苦手なことは苦手だからいいやって、心を閉ざしてしまうことがあるじゃないですか?

—年齢を重ねれば重ねるほどそうなりますよね。自分のスタイルみたいなものもできてくるし。

門田:でも、それは本当にくだらないことだなって心の底から思いました。実は最近踊りを始めたんです。それは香純ちゃんを見たからで、自分の音楽を自分で表現できたら、こんな素敵なことはないなって。だから、次のライブでは踊ろうと思っていて。

—これまでの門田さんのライブからは想像できないですね。

門田:そういうことに少しずつ肯定的になってきた。自分にはわからないこと、得意じゃないことに自分を捧げるという行為を、もう少しやっていいんじゃないかって。

本のジャンルにしても、歴史書だったり、今まで読んでこなかったものを読み始めたりしてて。昔からあったものを、頑なに否定したり、わからないって言ったりするんじゃなくて、そのルールや分節を理解して、なんでそうなのかをわからないと次に行けない気がして。

門田匡陽

—じゃあ、今まさに変化の最中というか……。

門田:そうなんです。過渡期ですね。それは無意識に今回のアレンジにストリングスをたくさん入れた要因にもなってると思って。これまではストリングスのルールやマナーを理解してなかったし、日本語に乗るストリングスがダサいと思ってたから、自分では上手くやれる気がしないというか、苦手意識があって。

でも、ちゃんとルールやマナーを自分の中で消化したら、意外とできたんですよね。文化の分節を見極める意味でも、歴史あるストリングスの要素を自分の音楽の中に取り入れたいと思ったんです。

—数量限定のパッケージ盤では8曲目に収録されていて、デジタルではエクストラとして3月に配信される“光の言語(Absolute Blue)”では、ダンサーの櫻井さんがボーカルとして参加していますね。

門田:もともと誰か女の子に歌ってもらいたいと思ってて、いろいろトライはしてみたんですけど、全然パッとしなかった中で、初めて香純ちゃんに会ったときに、「天使みたいな声してるな」って思ったんです。

天使って、両性具有なんですよ。女の子の声でも、男の子の声でもない、すごくいい声だなと思って、「歌ってみない?」って聞いたら、二つ返事で「やります」って。そのときが、さっき言った「知らない世界に飛び込む勇気」を垣間見た瞬間で、俺もこうじゃないとダメだなって。

門田匡陽

表現することに関して、テヘペロは許されない。

—ここまでの話を聞いて、今回の作品は二軸あるなという印象です。内容的には、「思い出」がキーワードになっていて、これまで出会ってきた人や音楽が今の門田さんという「独り」を構成していることを改めて感じさせつつ、その一方では櫻井さん、高橋くんといった自分より下の世代との出会いによって、その培ってきたものが崩されようとしている。「過渡期」という言葉が出てたのも、そういうことなのかなって。

門田:うん、かなり崩されました(笑)。この作品を作ることではっきりと句読点を打って、そこから過渡期に入った気がしますね。本当は「D&D」で打ちたかったけど、その打ち方をずっと探してた。そうしたら、「こうやって打つしかないですよ」ってA&Rが言ってくれたり、かと思えば、ハッシー(高橋)や香純ちゃんみたいに、俺とは全然違う打ち方をする人と出会って、なるほどなって思ったり。そうやって揺れる自分を楽しんでた。

今までお願いしてたミュージシャンに頼まないで、「今回は俺独りでやるから」って意志表示するのも、結構大変なことだったんです。本当に今回は崩れたし、崩せたとも思う。

門田匡陽

—「次は踊る」という話もありましたし、ライブもいい意味でこれまでとは違うものになりそうですね。

門田:10月にあった『アメリカン・ミュージック・アワード2018(以下、AMA)』を見て、正直悔しかったんですよね。表現することに関して、テヘペロは許されないなって。でも、俺も含めて、日本はテヘペロが好きで、自分の表現方法を許してくれる人のことをファンだと思っちゃってる。

ただ、どうやら俺の音楽を聴いてくれる人はそうじゃないらしく、「私は絶対GDHM」「俺はBURGER NUDS以外は聴かない」「PtMの方が絶対いい」みたいに意見が分かれてて、「なにをやっても門田が好き」という人は多くない。つまり俺は、もともとテヘペロが許されない人だったんですよね。それなのに、今までどんだけテヘペロに甘えてきたんだと思って。

—「テヘペロ」っていうのは、「人間性で許してもらう」みたいなこと?

門田:それもあるし、例えば、日本の有名なアーティストのライブって、彼らの曲に興味がない人は置き去りにしちゃってると思うんです。でも、『AMA』に出てるような人たちって、見てる人を自分の表現で殴りに行くんですよ。

俺は今までそれができなかった。ぶん殴りに行って、からぶったら、「20年やっててこの程度かよ」ってなるのが怖かった。でも、それもできないのにお金もらって音楽なんてやっちゃダメだと思ったし、「俺だからこれでいいでしょ」っていうのは絶対にナシだなって思ったんですよね。

門田匡陽

—じゃあ、次のライブはダンスだけでなく、編成的にもかなり変わりそうですか?

門田:そうですね。『AMA』を見ていてすげえなって思ったのが、「それ普通成立しないでしょ?」ってことを、本気でやってるんですよ。例えば、ポスト・マローンなんて、あのスタイルなのに口パクで、でもそれを本気でやってる。レベルが低いわけではなくて、ちゃんとそれを仕上げてるんですよね。

門田:俺に今必要なのは「こうやりたい」って思ったことに対して、100%走れることだと思いました。それこそ“光の言語(Absolute Blue)”で香純ちゃんが歌ってるように、「難しいことは考えずに、今やりたいことに全部を賭けろ」って。ちょこちょこ猫パンチ打ってないで、「こういう表現をしたい」って思ったら、全身全霊でやれよって。もちろん、怖さはあるけど、この怖さはすげえ嬉しいんですよね。「俺、安心してねえな」って。

—それにしても、かなり大きな変化ですよね。同い歳として、自分を顧みる機会にもなったというか、勇気づけられた部分もあります。

門田:この歳になると、こういうタイミングが来たとしても、それに気づかないスキルも身についちゃってると思うんですよね。そのスキルを捨てられるかどうかだった気がします。「俺、つまんねえ人間になってるな」って認めましたもん。

俺の周りは20年来の付き合いばっかりで、それだとだんだん自分の世界が狭くなってくるから、絵や本や映画でチューニングをして、ずっとそれに助けられてきた。でもそれってやっぱり副次的で、人との関わりが一番ダイレクトだったんですよね。

門田匡陽

—これからの門田さんがどうなっていくのか、楽しみです。

門田:今楽しくてしょうがないですよ。この歳になって、こういうモードになるなんて、自分でもびっくりしてるけど(笑)。

今やろうとしてる演出を遂行できたら、次はすげえ過酷なライブになると思うけど、でも頑張ります。「よくわかんなかったね」じゃ許されない、ダメならダメでもいいから、自分の表現で殴りに行く、そういうライブにするつもりです。

門田匡陽
Poet-type.M『Pocketful of stardust』

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リリース情報

Poet-type.M
『Pocketful of stardust』
Poet-type.M
『Pocketful of stardust』

2019年1月9日(水)配信

1 Star dust
2 MoYuRu
3 イプシロンは泣いてたよ(A Boy In The Avenge)
4 ファンタジア(What Makes You Beautiful)
5 瓦礫のオルフェオ(Ombra mai fù)
6 贖罪の夜、オーケストラは鳴り止まず(Modern Romance)
7 ただ美しく(Grace)
8 光の言語(Absolute Blue)
※ “光の言語(Absolute Blue)”は、デジタルシングルとして3月に配信予定

Poet-type.M
『Pocketful of stardust』(CD)
Poet-type.M
『Pocketful of stardust』(CD)

2019年2月4日(月)発売
価格:2,000円(税込)
PTMM-1029

1 Star dust
2 MoYuRu
3 イプシロンは泣いてたよ (A Boy In The Avenge)
4 ファンタジア (What Makes You Beautiful)
5 瓦礫のオルフェオ (Ombra mai fù)
6 贖罪の夜、オーケストラは鳴り止まず (Modern Romance)
7 ただ美しく (Grace)
8 光の言語 (Absolute Blue)

イベント情報

『Pocketful of stardust』

2019年2月4日(月)OPEN 19:20 START 20:00
会場:東京都 渋谷 La.mama

プロフィール

Poet-type.M
Poet-type.M(ぽえと たいぷ どっと えむ)

1980年1月30日、東京都生まれの音楽家・門田匡陽(もんでんまさあき)。BURGER NUDS / Good Dog Happy Men のボーカル&ギター。Poet-type.Mは門田のソロワーク名義。

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