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Spangle call Lilli lineの美学 20年消費されなかった秘密を探る

Spangle call Lilli lineの美学 20年消費されなかった秘密を探る

Spangle call Lilli line『Dreams Never End』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:高橋一生(sui sui duck) 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

特定のシーンに属していないとはいえ、つながりは大事。

—同時期に活動していたポストロック系のバンドが解散していくなかで、スパングルはポップスとして独自進化したからこそ、『PURPLE』という到達地点があったんだと思うんですよね。一方、日本におけるポストロックは、toeを筆頭にしてオルタナの文脈でより広がっていった。8枚目の『forest at the head of a river』にtoeの美濃(隆章)さんが参加しているのは、感慨深かったなって。

藤枝:特定のシーンに属していないとはいえ、つながりは大事ですよね。美濃さんや、7枚目の『VIEW』でもう一度益子さんとやっているのは、20周年の7インチシングル(『therefore』)でナカコーさんをゲストボーカルに迎えたことと発想は近くて、リスペクトというか、同時期に活動しているバンドなので親近感はあります。

『VIEW』は当時の気分でスタジオワークも重ねながら、もう一度『nanae』を作る感覚で、『forest at the head of a river』はまたその反動で、同じ編成のバンドで一発録りでやる。それぞれを、益子さんと美濃さんと作ったら面白そうだなと思ったんです。

Spangle call Lilli lineの7thアルバム『VIEW』を聴く(Apple Musicはこちら

Spangle call Lilli lineの8thアルバム『forest at the head of a river』を聴く(Apple Musicはこちら

—toeに対してはシンパシーがありますか?

藤枝:toeって、もともと前身バンドが「BAD NEWS」(くるりを輩出し、海外アーティストも含めて数多くの作品を発表するインディーズレーベル)周辺だったと思うんですけど。

—美濃さんがやっていたpopcatcherがBAD NEWSからリリースしてましたよね。

藤枝:そうそう。で、椛沢くんはBAD NEWSの社員だったし、笹原くんが美濃くんのバンドの写真撮ってたりするんじゃないかな。だから僕のなかでは、BAD NEWS周辺っていうことも含めてシンパシーがありますね。

笹原くんと話していたんですけど、もはやスパングルは解散する理由がないんですよね。

—ここまで振り返っていただいた歩みも踏まえつつ、新作『Dreams Never End』を作るにあたっては、どのような青写真がありましたか?

藤枝:前作から今作は一連の流れがあって、前作が「隙間」なら、今回は「余韻」みたいな感じ。これまでは、ひとつのアルバムのなかにバラエティーや振り幅があっていいと思っていたんですけど、直近の2作はひとつのモードで押し切っている。

Spangle call Lilli lineの9thアルバム『ghost is dead』を聴く(Apple Musicはこちら

藤枝:今作に入っているインストの曲(“give each other space”)って、自分のギターも入ってないし、大坪さんのボーカルも入ってないんです。20年経つとそこまでいけるというか(笑)、それでも全然「スパングルだね」ってところまで来た感じはありますね。あえて音数を増やしたり、フレーズを複雑にするんじゃなくて、むしろ間引くことで出る個性のほうが、本質に近いのかなって。

—この音数の少なさっていうのは、近年のビートミュージックとのリンクも感じました。

藤枝:そうですね。“lay low”あたりは、ビートミュージックの削ぎ落とされたサウンドを生で自分たちっぽくやっている感じ。実際、日本のバンド文脈とも違うし、トラックメーカーの人がやるフィメールボーカルものとも違うものになったなと。

音数を削ぎ落とした分、1音1音の距離感、配置、ディレイの深さとかにはすごく気を遣いました。バンドをはじめてすぐにこれをやろうとはならないと思うし、今のサポートメンバーとじゃないと作れないと思う。もはや、サポートの3人も含めてスパングルでいいんじゃないかなって。だから、作り方はすごく独特で……ジャンルが何かって言われると、どうなんだろう?

Spangle call Lilli lineの10thアルバム『Dreams Never End』を聴く(Apple Musicはこちら

—そういう感じもある意味、今っぽいというか、いわゆる「YouTube以降」の、ジャンルが最初から関係ない感じに近い。ただ、それが前提になっている若い世代と、バンドとして培ってきたものがあるスパングルだと、説得力が別ものだとは思います。

藤枝:最近YouTubeを見ていると、すぐ「~のパクリ」とか「~に似てる」ってコメントする風潮が気になって。あれ、言ってる人は可哀想だなって思うんです。「~に似てる」ってその人は言うけど、そのさらに奥には別の元ネタや影響源があるのをわかってなかったりするんだろなって。

たとえば、8割似ているとしたら、似てない2割のほうが大事だと思うんですよ。そこにオリジナリティーとか本質がある気がする。僕らは20年やってきて、やっとそのことにうっすら気づきはじめたというか。今のスパングルにとって音数が少ないことは不安なことじゃなくて、むしろその空間とか余白にしか出ない強さみたいなものが、自分たちの美学だと思うんです。

藤枝憲

藤枝:今作を作り終えて、笹原くんと話していたんですけど、もはやスパングルは解散する理由がないんですよね。20周年にして、やっとこういうニュアンスが出てきたってことは、この部分はバンドの芯としてこの先も残ると思うんですよ。前作と今作はそういう部分が強く出ていて、「アートフォームとして強い」というか、そういうゾーンまで来たなって。

20年続けられなかったら、そのフォームすらわからないまま解散していたかもしれない。これまでシーンとかテクノロジーとかいろんな変化を見てきたけど、そういうものを全部取り払った先に、「自分たちには何が残るのか?」っていうことを確認できただけでも、20年間やってきた意味はあるなと思うんですよね。

—今回の作品は、アートワークも含めて、磨き上げられたクリスタル感がありますよね。

藤枝:ありますね。僕、スパングルみたいなバンドって本当に理想なんですよ。音楽の内容だけじゃなくて、活動のスタイルやスタンスも含め、さっき言ったアートフォームとして、全部理想の形なんです。僕らを知ってくれるリスナーがちょっとずつちょっとずつ増えていて、その曲線すらもすごく美しいなって思うんですよね。

—それこそ、活動と活動の合間の期間にも微増している感じもありますもんね。

藤枝:それは本当にありがたいです。4月にEX THEATER ROPPONGIでやるのも、20周年にして過去最大キャパなんですよ。「デビュー2年で武道館を目指す」とかじゃなくて、スパングルは20年かけて、ジワジワと切っ先を磨いてきた。やっぱり、アートを作っている感じなんですよね。Spangle call Lilli lineっていう、アートフォームをやるって感じ。そのなかに音楽も含まれてて、音楽がすべてでもあるというか、そういう感じなんじゃないかなって自分でも思うんです。

Spangle call Lilli line『Dreams Never End』ジャケット
Spangle call Lilli line『Dreams Never End』ジャケット(Amazonで見る
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リリース情報

Spangle call Lilli line『Dreams Never End』(CD)
Spangle call Lilli line
『Dreams Never End』(CD)

2019年1月9日(水)発売
価格:2,916円(税込)
PECF-1166 / felicity cap-301

1. red
2. lay low
3. so as not to
4. still three
5. touei
6. sai
7. toss out it
8. give each other space
9. mio
10. tesla
11. therefore(ボーナストラック)

イベント情報

Spangle call Lilli line
『This time of night ~SCLL LIVE 20th Anniversary~』

2019年4月20日(土)
会場:大阪府 umeda TRAD
料金:前売4,500円(ドリンク別)

2019年4月27日(土)
会場:東京都 EX THEATER ROPPONGI
料金:1階スタンディング4,500円 2階座席指定5,000円(全てドリンク別)

プロフィール

Spangle call Lilli line
Spangle call Lilli line(すぱんぐる こーる りり らいん)

1998年結成。メンバーは大坪加奈、藤枝憲、笹原清明の3人。今までに10枚のアルバム、2枚のシングル、3枚のライブアルバムと、ベストアルバム2枚をリリース。数々のコンピレーションアルバムなどにも参加。ボーカル大坪加奈による「NINI TOUNUMA」名義のソロや、藤枝&笹原による「点と線」名義でのリリース、国内外のアーティストの作品への参加など、サイドプロジェクト等も精力的に活動。

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