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鹿野淳が語る、ロックフェスの信念と『VIVA LA ROCK』の真実

鹿野淳が語る、ロックフェスの信念と『VIVA LA ROCK』の真実

『VIVA LA ROCK 2019』
インタビュー・テキスト
三宅正一
撮影:関信行 編集:矢島大地(CINRA.NET編集部)

フェスには自然と共存する楽しさや、いろんな要素があるけど、それと同じくらい大事な要素として、音楽を素晴らしい環境で多くの人に提供したいという理念がある。

—フェスが飽和状態を迎えてるという中で、たとえば『JAPAN JAM』という、スケジュールも出演アーティストの傾向も重複するフェスに対して鹿野さんはどういうスタンスでいるんですか?

鹿野:まず前提として申し上げたいのは、「ロッキング・オンは自分がかつて所属していた会社」という意味合いにおいて、僕が今やっていることは、社会論として考えていくと非常に非道なことかもしれないですよね。その自覚はあるし、コメントは申し上げにくいですよ。そのこと自体を謝る気も正当化する気もないから。それが現実で。まずそれは前提としてあるんですよ。

そのうえで『JAPAN JAM』を主催している会社もうちの会社も、競合相手とお互いにしのぎを削り合いながら自分たちの活動をしていくことには慣れている。それはどうしてかというと、ロッキング・オンさんにはたくさんの雑誌があって、そのたくさんの雑誌は未だに競合誌がある中で戦っているわけでしょ。たとえば『ROCKIN'ON JAPAN』とうちの雑誌(『MUSICA』)もそうだし。他にも『音楽と人』や『Talking Rock!』とかたくさんの雑誌と競合していく中で、毎月しのぎを削ってちゃんと発行しているわけじゃん。

だから、ロッキング・オンさんがどうかはわからないんだけど、うちの会社としては競合相手がいるということに対して、ことさら大げさに考える気持ちがないんですよ。ただ、世の中的に考えていくと、結局お互いのフェスが同じ日程で開催がぶつかって、千葉と埼玉でそれぞれ2万人以上のスケールの収容人数を持っている。それが結果的にウィンウィンにならなかったら食い合っているっていう状況になるし、何年後にどちらかが、もしくは両方がつぶれることになるでしょう。そういう危惧を持ちながら毎年『ビバラ』を開催している自覚はあるよ。ただ、フェスの主催者としてはアーティストの被りが多い、もしくは同じ時期に近隣で同じスケールのフェスがあるということよりも、もっと大切なことがたくさんあるんですよ、実際には。だってやれることをやりたくてやっているフェスじゃなくて、やりたいことをやりたくてやっているフェスだからね。この大切な部分のひとつの肝は、スケジュールだよね。

鹿野淳

—それはどういうことですか?

鹿野:さすがにスケジュールが固定化されている夏フェスシーズンの中に2014年から『ビバラ』が入っていくつもりは毛頭なかったし。年末に関しても、あれだけ成熟したフェスがたくさんある。そうやって考えていくと、日本の中でまとまった休みとフェスがちゃんと共存できる休みって、年末年始と夏休みと、ゴールデンウィークしかないと思うんですよ。だから新しくフェスをやるんだったら、ゴールデンウィークしか自分はやりたくないということは、最初からあらゆる人からのお誘いに対して言っていて。だからこの日程でやるということは、このフェスと自分にとってとても重要なんです。

しかもフェスって、自然と共存する楽しさとかいろんな要素があるけど、それと同じくらい大事なひとつの要素として、音楽を素晴らしい環境で多くの人に提供したいという理念がある。さいたまスーパーアリーナは、それを限りなくできる場所なんです。だからね、素晴らしい場所をこのフェスは手に入れたなと今でも思います。そんなスケジュールと、さいたまスーパーアリーナという場所。このふたつに勝るものはないなという気持ちを、『ビバラ』を立ち上げる決意をしたときから持っていたし、結果的に競合のフェスが近隣であるからといって、そこに対して場所とスケジュールをずらすというのは考えにくかった結果、こうなっているんじゃないかと思います。

ただ、審判をくだすのは結局参加者ですから。参加者が今話したような理由で『ビバラ』から離れていったり、このフェスが誰も得をしないフェスになるんだったら、それは僕らの敗北になるんじゃないかなという気持ちを持ちながら崖っぷちでやってるけどね。

音楽業界側重視か、メディア重視か、お金重視か、現場重視か。この4つがイベントをやる中での大きな欲望要素。その中でほぼ多くを現場要素が占めている。

鹿野淳

—これはお客さんには関係ないことですけど、鹿野さんがフェスにこだわる理由のひとつは『ROCK IN JAPAN』を立ち上げた人という切符を持ってるからだと思うし、その切符って結局、業界的にはすごく大きなものだと思うんですよね。

鹿野:自分はたしかにあのフェスの主なる部分を最初の4年間担当していたけど、自分の会社の裁量でやったわけじゃないし、その意味ではそこをイコールで捉えられるのは不思議なんですよ。だけど、そのイメージが大きいこともわかっているし、その意味では感謝と、永遠に持ち続けられる退職金をそこで頂いたみたいな感じで思ってます。こうやって面と向かって言われたのは初めてだからアレなんだけどね。

ただ、「自分は昔の名前で食っていく」という気持ちでやってたら終わりだと思うから。少なくとも自分の中では、今の自分の屋号で頑張ろうという気持ちを持ってるよ。あとは、赤字を出したことが今までフェスではなくてね(笑)。フェスで経済的に失敗したことないという、そんなちっぽけな自負はある。

—『BUZZ』と『JAPAN』の編集長時代からライブハウスやクラブでイベントをやっていたという根底の現場感というのもデカいと思うしね。

鹿野:そうなんだ。基本的にスタンスはずっと変わらない。現場重視ってことだよね。結果的に、音楽業界側重視か、メディア重視か、お金重視か、現場重視かっていう、この4つが一番イベントをやっていく中での大きな欲望要素だと思うの。僕は「現場重視100%だけでやってます」というつもりはさらさらないんだけど、結果的に一番多くの部分を現場要素が占めていて。

じゃあ、現場要素とお金要素というところで考えると──たとえば今年、ふたつの大きなステージがひとつのアリーナに存在するスタジアム仕様になったから、そのスケール感を楽しんでもらうために10メートルの気球がずっと巨大な空間を浮遊するんだけど。

—それ、大丈夫なんですか?

鹿野:大丈夫だよ(笑)、最高だろ。それって、スタジアムモードという巨大な空間であることを、何らかの立体的なインフラとしてみんなに楽しんでほしいから実施するのね。本来はいらなくても、現場の夢を現実化させようとすると、そういうことをやりたいわけ。これがたとえば企業フェスだったら100%やらないよね。過剰出資になるから。

でも、過剰出資という視点は「面白いな」と思ったことに対してはないし、そこでNGを出す人を排除することがこのフェスの今の座組なの。みんなが想像するよりも極力ミニマムな資本体系でこのフェスはやってるんだけど、それはこういう発想に対してNGを出す人がいない状況を作りたいからでもあるわけ。

結局、これだけの大きなフェスだから、関わっている人が少なければ少ないほど人の顔が見えるじゃん、僕以外の顔もね。だからね、このフェスで自分がビジネス的な赤字を出すと、どれだけ人が苦しむのかということがはっきりと見えているから、その緊張感はすごくあるんですよ。でも、その緊張感がお金に対してもあるくらいで、やっぱり根幹には現場欲望が一番高いんだよね。

—やっぱりそうなんでしょうね。

鹿野:このフェスのブッキングの責任は自分が取るんです。で、未だになんでそれをできるかと言うと、僕は新人アーティストに対して今もワクワクしてるんですよ。うちのフェスは毎年何組かは、レーベルもプロダクションもわからないアーティストのホームページを見て「コンタクト」という欄があると、そこからオファーしてる。「『ビバラ』というフェスを主催している鹿野と申します」って連絡を取ってオファーをするんだよね。

一昨年に出演してもらったポルカドットスティングレイもそう。今こう言っても誰も信じないと思うけど、ヤバイTシャツ屋さんもそうなの。「コンタクト」から始まってる。それが未だにできるんですよ。現実的に今はもう『MUSICA』の編集長はやってないから、僕のところに新人のプロモーションはそんなに来ないですよ。そんなに来ないけど、風は聞こえてくるんですよね。ブッキングというのは、そういう音楽の風を読むのが大事だと思うんだよね。というか、それが楽しい。

—風は聞こえてくる。サカナクションの曲タイトルみたいですね(笑)。

鹿野:なんだそれ。でも、ほんとにそうなんだよ。大切なのは、たぶん、風なんだよ(笑)。今年のGhost like girlfriendもそうだしさ。

鹿野淳
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イベント情報

『VIVA LA ROCK 2019』
『VIVA LA ROCK 2019』

2019年5月3日(金・祝)、5月4日(土・祝)、5月5日(日・祝)、5月6日(月・休)
会場:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ

5月3日出演:
ACIDMAN
THE ORAL CIGARETTES
KEYTALK
go!go!vanillas
Saucy Dog
崎山蒼志
SUPER BEAVER
DJライブキッズあるある中の人
Tempalay
Nulbarich
ニトロデイ
ネクライトーキー
BURNOUT SYNDROMES 
BIGMAMA
藤井 風
BRADIO
BLUE ENCOUNT
フレデリック
Base Ball Bear
PELICAN FANCLUB
Bentham
ヤバイTシャツ屋さん
ユアネス
LAMP IN TERREN

5月4日出演:
青木慶則
赤い公園
ASIAN KUNG-FU GENERATION
OGRE YOU ASSHOLE
Awesome City Club
Official髭男dism
King Gnu
Creepy Nuts
ゲスの極み乙女。
Ghost like girlfriend
Suchmos
SKY-HI
スガ シカオ
竹原ピストル
田島貴男(ORIGINAL LOVE)
THE CHARM PARK
CHAI
DJピエール中野
TENDRE
TENDOUJI
never young beach
PUNPEE
VIVA LA J-ROCK ANTHEMS
【Ba:亀田誠治/Gt:加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)/Gt:津野米咲(赤い公園)/Dr:ピエール中野(凛として時雨)】
FIVE NEW OLD
YAJICO GIRL

5月5日出演:
愛笑む
秋山黄色
UVERworld
大森靖子
折坂悠太(合奏)
KANA-BOON
クリープハイプ
SHISHAMO
神聖かまってちゃん
ズーカラデル
w.o.d.
DJダイノジ
teto
the telephones
Nothing's Carved In Stone
NICO Touches the Walls
パノラマパナマタウン
ハルカミライ
Hump Back
マカロニえんぴつ
マキシマム ザ ホルモン2号店
※フランチャイズ店メンバー
眉村ちあき
UNISON SQUARE GARDEN
yonige

5月6日出演:
打首獄門同好会
ENTH
オメでたい頭でなにより
キュウソネコカミ
Getting Better :片平実
G-FREAK FACTORY
SiM
SHADOWS
四星球
SCOOBIE DO
10-FEET
東京スカパラダイスオーケストラ
TOTALFAT
Track's
Halo at 四畳半
04 Limited Sazabys
FOMARE
HEY-SMITH
The BONEZ
眩暈SIREN
ヤングオオハラ
LUNKHEAD
リーガルリリー
ROTTENGRAFFTY

プロフィール

鹿野淳(しかの あつし)

音楽ジャーナリスト。1989年に扶桑社入社、翌1990年に株式会社ロッキング・オンに入社。98年より音楽専門誌『BUZZ』、邦楽月刊誌『ROCKIN'ON JAPAN』の編集長を歴任。『ROCK IN JAPAN FES』は構想から関わり、企画/オーガナイズ/ブッキングに尽力。2003年には『COUNTDOWN JAPAN 03/04』を立ち上げ、国内初のカウントダウン・ロック・フェスティバルを成功させた。2004に年ロッキング・オンを退社後、有限会社FACTを設立(現在は株式会社)。2006年に月刊『STARsoccer』を(現在は休刊中)、2007年3月には『MUSICA』を創刊させた。そして2014年には、埼玉県最大のロックフェス『VIVA LA ROCK』を立ち上げ、2019年に6回目の開催を迎える。

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