スチャとネバヤン、同じ電波をキャッチしちゃった似た者同士

世代もジャンルも異なるから意外な組み合わせのようでいて、その実、ナチュラルに噛み合うだろうと想像できる2組のコラボレーションが実現。スチャダラパーとnever young beach=「スチャとネバヤン」名義によるデジタルシングル”ネバやんとスチャやん”及び”スチャやんとネバやん”がデジタルリリースされた。

どこを切り取ってもオリジナルのヒップホップ文法で遊び続け、昨年デビュー30周年を迎えたスチャ、結成時から新鮮かつどこか懐かしい色褪せないバンドサウンドと歌を鳴らし続けているネバヤン。活動の様相としても、そして音楽的にも互いに時流に流されることなくマイペースなスタイルを貫く2組の好相性ぶりは、ここに結実した2曲にしっかり表れている。

ネバヤンの心地よく緩やかなアンサンブルに、「人生のたられば」論をなだめながら切り捨てるラップが絡む”ネバやんとスチャやん”。サンプリングっぽいフィーリングもまとったグルーヴィーなファンクサウンドに、スチャならではのセルフボースティングが踊る”スチャやんとネバやん”。どちらの楽曲のサビでもネバヤンのフロントマン、安部勇磨が泰然自若とした歌唱を披露しており、そのバランスもまた面白く味わい深い。

今回は、スチャのBoseとネバヤンの安部勇磨による対談を実施。2組が邂逅した経緯、そして2021年にこのコラボレーションが実現した必然性と親和性をたっぷり語ってもらった。

互いに感じる、感覚の近さ。世代を超えて共有する空気やバイブレーションの正体

スチャダラパー
ANI、Bose、SHINCOの3人からなるラップグループ。1990年にデビューし、1994年『今夜はブギー・バック』が話題となる。以来ヒップホップ最前線で、フレッシュな名曲を日夜作りつづけている。2020年4月8日、デビュー30周年記念アルバム『シン・スチャダラ大作戦』リリース。
never young beach(ネバーヤングビーチ)
土着的な日本の歌のDNAをしっかりと残しながら、USインディなど洋楽に影響を受けたサウンドと極上のポップなメロディ、そして地に足をつけて等身大の歌詞をうたった楽曲で、音楽シーンに一石を投じる存在として、注目を集めるバンド。2014年春に結成。

安部:Boseさん、僕さっきまで『ウイイレ』(サッカーゲーム『ウイニングイレブン』のこと)やってました(笑)。

Bose:僕も今朝やってたけど、その話をしだすとこの対談終わらないから(笑)。

―2人はゲーム仲間でもあるんですか?

Bose:そう。ゲームを一緒にやったりして、それが打ち解ける要素にもなったから。レコーディングよりもゲームで濃密な時間をすごした感じがあります(笑)。

去年コロナになって暇な時期に10年ぶりくらいに再開してネット対戦を始めて。それで安部くんと話してるときに「え、ウイイレやってんの!?」となって。これだけ歳が離れていてもいきなり共通項あった! って感じで(笑)。『ウイイレ』に関しては、僕はもう安部くんを師と仰ぐほど尊敬してるんです。それくらい強い。

安部:唯一、これだけは自信があります(笑)。6万人くらいいるユーザーのなかでだいたい200位とかなので。

Bose:マジで誇れるレベル。

―それにしてもスチャとネバヤンのコラボレーションと聞いて、意外なようでいてスッと合点がいったんですね。それは活動の様相としても、音楽的にも自分たちの意思で能動的にマイペースなスタイルを貫いてるゆえだと思っていて。

スチャとネバヤン“ネバやんとスチャやん”を聴く(Apple Musicはこちら / Spotifyはこちら

Bose:言ったら、僕らと安部くんたちって20歳くらい年齢差があるんだけど、でも、なんでネバヤンがこういうサウンドとかバンドの雰囲気になっているかは、なんとなくわかるというか。いま、自分たちが安部くんたちくらいの年齢で音楽をやってたら同世代の友だちになっていたと思う。もっと言ったら、年齢とか関係なくグループの雰囲気とかバイブレーションが近いんだろうなって。

左から:安部勇磨(never young beach)、Bose(スチャダラパー)

Bose:僕はネバヤンの音楽がずっと好きで、わりと最初の作品からずっと聴いてたんですけど。あと、これは偶然なんだけど、ネバヤンの最初のアルバムのジャケット(『YASHINOKI HOUSE』)のイラストを描いたのって京都精華大学出身の子でしょ?

安部:あ、そうです。オオニシアキオさん。

―Boseさん、京都精華大学のポピュラーカルチャー学部で教授をされてましたよね。

Bose:そう。「ネバヤンのジャケってあの子が描いてるんだよ」って聞いてたから。そういうところでも縁がありましたね。初めてネバヤンに会ったのは4年前くらいの対バンなんだけど(2017年6月22日に代官山UNITにて開催された『Election-10th Anniversary-』)。

never young beach『YASHINOKI HOUSE』ジャケット
never young beach『YASHINOKI HOUSE』ジャケット(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

―勇磨くんはどうですか? 先ほどBoseさんからは世代は関係なく雰囲気やバイブレーションが近いという言葉がありましたけど。

安部:Boseさん、スチャのみなさんが僕らに気を遣ってくれていることもわかったうえで言いますけど、やっぱり僕らも感覚が近いなと思っています。世代が違う人と関わっていくなかで年齢差とか関係なく近くに感じられる人がいるなと思うんですけど、Boseさんにもそれを感じますね。

―もしかしたら勇磨くんにとっては細野(晴臣)さんもそういう存在なのかもしれないと思います。

安部:ああ、そうですね。細野さんもBoseさんも柔軟な発想を持っていろんなアンテナを立ててる方だからこそ、僕らにも接しやすい空気をつくってもらえてると思うんですけど。みなさん、心がずっと若いというか。Boseさんも朝5時くらいまで一緒に『ウイイレ』やってくれるので(笑)。やっぱ年齢は関係ないなぁって思います。

「いまだにどこかで、いつかは就職するんじゃないか? と思ってやってるところもあるんですよ」(Bose)

Bose:逆に言うと、そういう意味ではこっちが進歩してない部分が絶対にあって。30歳くらいまでは、この先年齢を重ねていくともっと変わっていくのかなと思ってたんだけど。投資とか資金運用のことを考えたりとかさ(笑)。

でも、そこは変わらなかったという戒めの意味も込めて「安部くん、20年後も同じようなことして遊んでるよ!」って言いたいですね。

安部:あははははは!

―昨年、スチャダラパーとRHYMESTERの対談をしたときもBoseさんは「自分たちにとって好きなことや面白いことってそんな変わらない」と言っていたのを覚えてます(参考記事:スチャダラパー×ライムスター対談 最初からズレてるから一貫できる)。

Bose:そうなんですよ。やっぱりどこかおかしいんですよね。宇多丸とかも自覚してるけど、僕らはもともとおかしいんだけど、そのおかさしさが50歳くらいになってくるとあたりまえになってきて。

若いころはみんなちょっと尖ったりもしてるし、そのなかでも「なんか違和感あるよね」という感じだったんだけど、気づいたら残ってたのはうちらだけ、みたいな。変な人だけが残るというね。

―だからこその、すごみがありますけどね。

Bose:いやぁ、懲りないというかね。

安部:僕はいま30歳なんですけど、20代後半に差し掛かったときに体力の衰えを感じたりして、「自分はいつまでいまと同じようなことができるんだろう?」って考えたことがあって。

でも、Boseさんたちがそのままのスタイルでやってるから「あ、僕も変わらないんだな」と思えたんですよね。それですごく気がラクになりました。

Bose:20代後半とか30歳くらいのときに僕らもよくそういうことを歌詞にしてたんだけど。「もう30歳だぜ」とか「30にもなってこんなことやってんのヤバい」みたいなさ。でも、50歳にもなったらヤバいというか、「そもそもそんなやついねぇし」ってなってきて。

30歳だとまだボーダーラインにいて、「周りに近い感じの人もいるけどだんだんいなくなってくるな」みたいな不安感もあったんだけど、それがだんだん「あ、このまま変わらないんだな」というあきらめの境地になってくる。

―ロールモデルがいないということは、不安を覚える要素もないという。

Bose:そう。でも、やっぱりいまだにどこかで「いつかは就職するんじゃないか?」と思ってやってるところもあるんですよ。

安部:(笑)。

―ほんとですか?(笑)。

Bose:ほんと、ほんと。こういうことを言うとみんな笑うけど、「いつか任天堂に入れるんじゃないか?」とか思ってる。

―任天堂とスチャは関係性もあるし、なくもなさそう(笑)。

安部:でも、いまもそういうこと考えるんですね。

Bose:若いときから「いつかは任天堂で働くんじゃないか?」と思ってたんだけど、「いつになっても呼ばれないな」みたいな(笑)。いまも一番カッコいいのは任天堂と宮本茂(現・任天堂株式会社代表取締役フェローで、『マリオ』シリーズの生みの親)という感覚だから。

2人に共通する、「ラッパー」「ミュージシャン」といった肩書きを背負うことの違和感について

Bose:あとは、スチャダラパーってラップで食っていくという発想がもともとなかったし、いまもこれが自分たちの職業とは思ってないところがどこかであって。

だから肩書きを書くときには、みうらじゅんさんに倣って「ラッパーなど」って書くんだけど。はっきりと「ミュージシャン」とか「ラッパー」って書くほど自信があるわけではなくて。

―公的な書類の職業欄にはなんて書いてるんですか?

Bose:会社役員(笑)。それも事実だからね。まぁ、でもいつか自分も社会的に普通の人になるのかなと思ってたけど、ならないというね。今回のコラボレーションではそういう戒めをネバヤンに伝えたいところもあって(笑)。実際に歌詞もそういうことがテーマになってるから。

―“ネバやんとスチャやん”の<たられば 言ってないで やらねば>ってまさにですね。

Bose:そう。「あのときスタジオをちゃんと建てればよかったなぁ」とか、「結局まだ賃貸だよ、やべぇな」とか言ってる感じ(笑)。

安部:僕いま、引っ越しを考えていて。書類とかに職業を書くときにミュージシャンって書くのは恥ずかしい気持ちもあって。それで、自営業とか自由業って書いてるんですけど。

いまは運よく音楽ができてるけど、こうやってコロナになったように今後もなにがあるかわからないし、いつか音楽とは違うことをやりたいと思うこともなくはないなぁと思って。実際に他に興味のあることもあるし、いまはライブもあまりやれないからミュージシャン活動を言うほどやってないんですよね。

Bose:だからね、自分の会社をつくって会社役員という肩書きを持つのは社会的に理由がつくからすごくラク(笑)。まぁ、名義をそうしてるだけなんだけど。ミュージシャンって通りが悪いからさ。家とかも貸してもらいにくいしね。「自由業という職業はないです」とか言われるんだから。

安部がソロ活動をはじめたわけ。「生活の延長線上で作品をつくることができた」

―勇磨くんは6月末に初のソロ作品もリリースするじゃないですか。それはコロナで時間ができたことも関係しているんですか?

安部:コロナになる前から、自分の趣味とかバンドでやることじゃない音楽の分別が発生し始めていて。コロナになって時間ができたんですけど、昔みたいな頻度で人とも会わなくなったし、そこでネガティブなことを考えるようになってしまったので。それなら(ソロ作品を)つくったほうがスッキリしそうだなと思ってつくり始めました。それは本当によかったです。

Bose:ソロをつくってみて、ちょっとラクになった部分もあるの?

安部:すごくラクになりました。今回はソロでしたけど、やっぱり定期的になにかつくらないとモヤモヤしちゃうんだなと思いましたね。つくらないとストレスが溜まってイヤな気持ちになってきちゃう。

でも、ソロの曲で書いた歌詞をバンドで歌いたいかというとそれは違うなという気づきもあったりして。ソロの歌詞は、バンドメンバーと楽しくライブで演奏してる姿が想像できなくて。

安部:ソロを一緒にレコーディングしたメンバーは普段から遊んでた人たちなんです。(私生活と)イコールの感覚があるんですよね。

ネバヤンのほうはいろんなスタッフの方々に動いていただいて、ありがたいことに「こういう曲を提供してほしいです」という話をいただいたりすることもあって。その反動もあってソロをやってみようとなりましたね。

Bose:すごいミュージシャンっぽい発言だよ、もう(笑)。

安部:あははははは

―ソロ作品では細野晴臣さんがミックスを手がけた曲もあるんですよね。

Bose:そうなんだ! へぇー!

安部:4曲やっていただきました。

―デヴェンドラ・バンハートがギターで参加したり、シンプルにいま一緒にやりたい人と音楽をつくることができたんですかね?

安部:そうですね。そこは本当に運がよかったなと思います。一人で好きなように曲をつくってるなかで、ひょんなことからそういうことが実現するんだなって。

細野さんから「ただやりたいことをやってたら、自然とこうなったんだ」みたいな話を聞いたことがあって、「嘘つけ!」とか思ってたんですけど(笑)。

Bose:うんうん(笑)。

安部:でも、いまは「あ、こういうことなのか」ってちょっと思えて。バンドだといろんな人が動いてくれる分、自分が思い描いていたイメージと違う方向に進んでしまうこともあると思うんですけど、一人でやってみたらスムーズにいろんなことが進んでいって。

―生活の延長線上で作品をつくることができた。

安部:そう、本当にそういう感じです。ネバヤンを始めたときと近い感覚というか、気づいたらこんなふうになっていたみたいな状況が楽しかったです。

迷える安部にBoseが助言。外部からの要求を受け入れることと抗うことを繰り返して至る、30年の境地

―バンドの規模も大きくなっていくなかで、そういう場所がほしいと思うようになっていった?

安部:そうですね。自意識過剰に思われてしまうかもしれないけど、タイアップのお仕事もやらせてもらうようになって、ネバヤンのイメージが固定化して「こういう曲をつくってほしい」と言われることも増えてきて。

そういうリクエストをもらえる理由がわかる反面、「そうじゃない自分をどう出したらいいんだろう?」ってちょっと悩み始めたタイミングだったので。それでソロをやってみようと思ったというのもありますね。

Bose:クライアントはすぐに「こういうふうに歌ってほしい」って言うしね(笑)。それで安部くんがブチ切れたりね(笑)。

安部:Boseさん、なんでそういうこと言うんですか!(笑)

Bose:いや、でもそこでハッキリ言うと向こうも背筋が伸びて次からヘタなことは言わなくなるから、言ってあげればいいんだよ。

安部:そうですね。最近ようやく自分のなかで譲れないラインが整理できてきた感じです。

Bose:ある程度キャリアを重ねるとそういう時期に突入するよね。僕らも“今夜はブギー・バック”(1994年)を出した後は“ブギー・バック”みたいな曲を求められたりしたし。つい最近でもまだ「パーパラッパッパッパラみたいな曲(“GET UP AND DANCE” / 1994年『スチャダラ外伝』収録曲)あるじゃないですか」とか言われて。「30年前の曲だけど!?」みたいなさ(笑)。そういうことはずっと続くと思うんだよね。

Bose:それはそれでありがたいと思うところもありつつ、ネバヤンもそういう周期に入ったということだと思う。それをいなしたり、「と、見せかけて」とかやりつつ、繰り返していくんだと思うよ。

安部:なるほど~。

Bose:僕らもずっと求められてきたから「絶対にライブで“ブギー・バック”はやらねぇ」とか、そういう時期はありましたよ。

―その時期を経ていまがある。

Bose:そう。それを経て「はい、“ブギー・バック”どうぞ!」みたいな時期にまた突入していくという。「もう小沢健二は来ません!」ってちゃんと言うとか(笑)。

僕らが「“ブギー・バック”はやらねぇ」ってなってたのはまさにいまの安部くんの時期、ちょうど30歳くらいのときじゃないかな。ネバヤンもそういう時期に入ってるのかなと思う。

Bose:でも、それで安部くんのソロができて、今回僕らとやった曲も安部くんのソロを経て生まれた雰囲気なのかなと思うから。“ネバやんとスチャやん”(のデモ)を最初に聴いたときに「安部くんのいまやりたい感じが出てると思う、絶対にこれがいい!」と思ったよ。

「ジャンルは違えど、僕らとネバヤンは音楽をやってる意味はほとんど一緒」(Bose)

―あらためて、今回のコラボレーションの話はどういう流れで生まれたんですか?

Bose:4年前に対バンして以降は、連絡先は交換してるけどフェスでたまに会うくらいで。で、今回はスタッフから「ネバヤンとのコラボレーションってどうですか?」という話が出てきて、「あ、やるやる」みたいな。

お互いコロナの影響で時間があるタイミングだしいまだったらできるなと思って。こっちは昔から勝手にネバヤンのことが好きなんだけど、後輩の人たちに対して「一緒にやってもらうのも悪いよね」みたいな気持ちもあった(笑)。

安部:僕らはこういうこと(他アーティストとのコラボレーション)をあまりやらないタイプなんですよ。お話をいただいても関係性によっては「会ったことがないからやめておこう」みたいな感じになっちゃうんですけど、スチャさんとは対バンしたこともあるし、みなさんの人柄もわかっていたし、楽しそうだなと思って。しかもコロナがあってバンドの動きも全然なかったので。

Bose:それが大きいよね。だから逆にこのタイミングがチャンスだったというか。

「スチャとネバヤン」アーティスト画像
『スチャとネバヤン』を聴く(Apple Musicはこちら

安部:自分のなかではバンドで曲をつくる感覚を忘れていたところがあって。なので、今回はスチャさんと一緒にやることを一番に考えて、こういう音色で、こういうリズムで、ここにBoseさんとANIさんのラップが入ったら楽しいだろうなと思いながら自然と曲のアイデアが出てきましたね。

Bose:“ネバやんとスチャやん”は安部くん主導でつくって、“スチャやんとネバやん”のほうはSHINCO主導で「こういうサウンドをネバヤンが演奏したらカッコいいんじゃない?」という感じのファンキーな曲をつくったという流れで。

―本当にすごく自然なコラボレーション曲に仕上がってるし、「最高の想像通り」みたいな2曲で。

Bose・安部:あははははは。

Bose:そうだよね。できないことはやれないし、やるつもりもまったくなかったし。この2組でEDMつくろうとはやっぱならないからね(笑)。できることで面白いことをしよう、と。お互い寄り添いながらつくった感じです。

あとは、ジャンルは違えど、僕らとネバヤンは音楽をやってる意味はほとんど一緒というかね(笑)。時代が違って安部くんが僕らと同世代だったらラップしてたかもしれないと思うし。

世界中がコロナ禍によって、基本的にはうまくいっていない。そんななかでポジティブすぎることは歌えない

安部:そう言っていただけるのはすごくうれしいです。ネバヤンとして曲をつくってリリースするのが本当にひさしぶりだったので不安もあったんですけど。

Bose:そっか。前のネバヤンのアルバム(『STORY』2019年)が出たのっていつだっけ?

安部:もう2年前になるんですよね。

never young beach『STORY』を聴く(Apple Musicはこちら

Bose:アルバムを出したあとも、本当はツアーとかあったはずだもんね。

安部:そうなんです。コロナ以外でもCDの売れ方とか音楽の聴かれ方がどんどん変わってきているし、音源を出すのがひさしぶりすぎてソワソワしていたので。

―この2曲のサビで勇磨くんが歌ってる感じがちょっと老成しているというか(笑)、スチャよりも達観してる感じがあってそのバランスも面白かったです。

Bose:ああ、そうそう!

安部:あんまりわかりやすくポジティブなことを歌いたくなかったんですよね。曲をつくるとき、Boseさんに軽く歌詞のイメージを共有したんですけど、最近の世の中はいろんなことが前向きすぎてイヤだなというのがあって。

前向きなことを歌うにしてもどういう言葉を使うかとか、ピッチを下げて歌ってみるとか、囁くように歌ってみるとか。最近考えていたそういうニュアンスがちょっと出たのかなと思います。

Bose:僕らも「上がっていこうぜ」とか「お母さんを大事に」とか「君だけを愛す」みたいなことは言ってこなかったし、どうしてもそれは信じられないというか。ネバヤンも最初からそういう雰囲気があるから、表現は違えど似たようなアプローチをしてるなと思う。

―“スチャやんとネバやん”のスチャのヴァースにはいろいろ経た人たちならではのセルフボースティング感があるなと。伊達に長くやってません、という。

Bose:「いくつになってもこんなことばっかりやってる」というダメな感じを表現してるとも言えるんだけど。

あとはなにを書いてもいまはコロナ前提みたいなところもあるからね。世界中の人たちが全員同じ状況に直面してるわけで。基本的には上手くいってないことが前提でそんなに明るくないなって感じだけど、それでもやっぱり楽しいことがないと生きてられないからね。さらに演奏も含めて安部くんたちの若き力がそこに合わさって上手いことポップに着地できたなと(笑)。

スチャがみうらじゅんらから受け取った「少しズレてる」電波。いつの時代にもいる、同じ電波を発する人、そこにしっくりきちゃう人

安部:僕は中学生前後くらいからスチャダラパーをあたりまえのように聴いてきて、子どもながらに豊かな軽やかさのようなものを感じていたんですよね。「なんなんだ、この人たちは」って思って(笑)。意識しなくてもそういう影響が自分のなかに入ってるんだと思います。

Bose:僕らはそういう感じをみうらじゅんさんたちから受け取って、その電波に汚染されてしまってるから。で、また僕らがその電波を出したときに絶対に引っかかちゃう子がいるんだよ。「あ、この感じなんかしっくりくる」みたいな。

僕らも自分たちで勝手にこうなったというよりは、その電波を受け取ってしまったという感じなんだよね。それこそ細野さんたちが発していた電波もあるだろうし。みんなとはちょっとズレてる電波を受け取って、自分たちも発してつなげてるだけ、みたいな。

―たとえば川勝正幸さんが編集者としてその電波を媒介していたんだろうし。

Bose:そう、川勝さんが翻訳してた。たとえば僕らもはっぴいえんどをリアルタイムで聴いてはなかったんだけど、安部くんたちと同じようにハタチくらいのときに後追いで聴いてみたら「あ、こうやって同じような電波を発してる人たちがいたんだ」って気づくみたいな。

―その電波について一昔前までは「サブカル」という言葉で片付けられていたけれど、いまはもうそういう時代ではないですよね。

Bose:そう、そういうところに集まってきちゃった人たちみたいな。そこにジャンルとかはあまり関係なくて、音楽をやってたり、お笑いをやってる人もいるというだけだと思う。そこに集まってる人のなかには売れる人もいるだろうし、ネバヤンだって僕らと同じ時代に出てきたらもっとマイナーな雰囲気を発してたかもしれないけど、時代が変わったからね。

―星野源氏だって、あきらかにその周波数を受け取っているけど、いまや大スターですから。

Bose:電波を受け取りつつどこかでチューニングをグイッと変えたんだと思う(笑)。

1990年デビューのスチャと2015年デビューのネバヤン。当時といま、どっちがいい?

―Boseさんは30年以上やってきて、1990年代のほうがよかったとか、そういうふうに思うことってありますか?

Bose:どこの部分に対してそれを感じるかだよね。インターネットもないから、みんながまだ手探りの状態でいまみたいに答えがすぐに出るような時代じゃなかったのがよかったと思う反面、自分たちも歌詞に書いてたりするけど、「って言いながらやっぱいまは最高だよ」という部分ももちろんあって。

Bose:悪くなってるなと思う部分もありながら、いまになってみて「あの時代は海外のモノとか情報が全然手に入らなくてつまんなかったな」と思う部分もあるし。前だったら「ラップが好きなやつがどこかにいるらしい」みたいな感じで、ラップが好きな人同士でつながるのも難しかったけど、いまなんか一瞬で友だちになれるじゃん(笑)。

―DM送ったら一発ですもんね。

Bose:そう(笑)。それはめちゃくちゃいいことだと思うし。

―勇磨くんがネバヤンでデビューした2015年にはもう音楽業界になにか期待するとか、そういう空気はとっくになかったわけじゃないですか。

安部:ああ、そうですね。全然期待とかしてなかったですね。

Bose:大人がいっぱいお金を持ってるとか、そういうこともなさそうだもんね。

安部:インディーズでデビューして、しかも6年前の北澤さん(ネバヤンが所属する「Bayon production」代表の北澤学)は本当にそんなにお金を持ってなかったと思うんですよ(笑)。「レーベルに入れるなんてそれっぽいじゃん」くらいにしか考えてなくて。

でも、レーベルに入ったらこういうふうになれたので。実際にやってみていいときもあれば、よくないときもあるんだろうし、それはしゃあないなという感じですね。

Bose:なにしろ安部くんがソロをつくれたんだから、そりゃもういまがいいに決まってるよ。これが3年前だったらつくれてないかもしれないんだしさ。

―いまだからこそスチャとネバヤンのコラボレーションも実現したわけで。

Bose:うれしいですよ。世間的にはニッチかもしれないけど、こうやって生き方が似たような人たち同士でどんどん寄り添って楽しくやっていけるのはすごくいいことだと思うから。

リリース情報
スチャとネバヤン
『ネバヤンとスチャやん』

2021年5月26日(水)配信

1. ネバやんとスチャやん
2. スチャやんとネバやん

プロフィール
スチャダラパー

ANI、Bose、SHINCOの3人からなるラップグループ。1990年にデビューし、1994年『今夜はブギー・バック』が話題となる。以来ヒップホップ最前線で、フレッシュな名曲を日夜作りつづけている。デビュー25周年となる2015年にアルバム『1212』をリリース。2016年に『スチャダラ2016 ~LB春まつり~』を開催し、ミニアルバム『あにしんぼう』をリリース。2017年に『ミクロボーイとマクロガール / スチャダラパーとEGO WRAPPINʼ』、『サマージャム2020』の2曲を発売。2018年4月に日比谷野外大音楽堂で『スチャダラパー・シングス』を開催し、ライブ会場限定販売となる4曲入りCD『スチャダラパー・シングス』を発売。2019年11月に『ヨン・ザ・マイク feat. ロボ宙&かせきさいだぁ』を配信リリース。2020年4月8日、デビュー30周年記念アルバム『シン・スチャダラ大作戦』リリース。

never young beach (ネバーヤングビーチ)

土着的な日本の歌のDNAをしっかりと残しながら、USインディなど洋楽に影響を受けたサウンドと極上のポップなメロディ、そして地に足をつけて等身大の歌詞をうたった楽曲で、音楽シーンに一石を投じる存在として、注目を集めるバンド。2014年春に結成。2015年に1stアルバム「YASHINOKI HOUSE」を発表し、「FUJI ROCK FESTIVAL」に初出演。2016年に2ndアルバム「fam fam」をリリースし、様々なフェスやライブイベントに参加。2017年にSPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビューアルバム「A GOOD TIME」を発表。2018年に10inchアナログシングル「うつらない / 歩いてみたら」をリリース。そして2019年に、4thアルバム「STORY」を発表し、初のホールツアーを開催。また近年は上海、北京、成都、深圳、杭州、台北、ソウル、バンコクなどアジア圏内でもライブに出演。



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