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キイチビールを変貌させた、終わった恋、新しい恋。本秀康と話す

キイチビールを変貌させた、終わった恋、新しい恋。本秀康と話す

キイチビール&ザ・ホーリーティッツ『鰐肉紀譚』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:今井駿介 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

「こういう音楽がメインの世の中で、自分は音楽で生きていけるのか?」って、不安になることがよくあって。(キイチ)

:でも最近のキイチくんの曲を聴いると、キイチくんは今まで以上に作家性に目覚めはじめているんじゃないかと思うんです。新譜の『鰐肉紀譚』、最高なアルバムだと思ったんけど、このアルバムを聴いて思うのは、曲作りも、サウンド面も、キイチくんがプロになってきたなっていうことで。

キイチ:1stアルバム(2018年発表の『トランシーバ・デート』)と今回のアルバムは、全く違うなっていう感覚が自分でもあるんですよね。それがなぜなのか、自分ではわからなかったんですけど……。作家性かぁ。

キイチビール&ザ・ホーリーティッツ『トランシーバ・デート』を聴く(Apple Musicはこちら

:前作もすごくよかったけど、「天才が鼻歌で作った」っていう感じの曲がたくさん入ったアルバムだったと思う。でも、今回の『鰐肉紀譚』は譜割りやサウンドもすごく凝りはじめているよね。昔のキイチくんは「いくらでも曲が書けるんです」って言っていたけど、今はどう?

キイチ:もう無理です。「もっと突き詰めたい」っていう欲も出てきたし、許せないことも多くなってきました。前は許せたメロディーでも、今は許せない。聴いたことあるようなものは作りたくないし……曲を作っていくなかで、とにかく今の自分が理想には程遠いんだなと実感することが多くて。それで心が折れそうにもなるんですけど、それを突破するぐらいのバーンッと弾けた曲ができると、「もう最高!」みたいな気分になるんですよね。

:すごくいい変化だと思うよ。

本秀康(もと ひでやす)<br>1969年京都府生まれ。イラストレーター、マンガ家。1990年よりフリーイラストレーターとして活動。音楽への造詣が深く、音楽誌への寄稿、CDジャケットのイラストレーションも数多く手がける。2014年には7インチレコード専門レーベル「雷音レコード」を立ち上げる。2019年4月25日、新作『あげものブルース』を発表。
本秀康(もと ひでやす)
1969年京都府生まれ。イラストレーター、マンガ家。1990年よりフリーイラストレーターとして活動。音楽への造詣が深く、音楽誌への寄稿、CDジャケットのイラストレーションも数多く手がける。2014年には7インチレコード専門レーベル「雷音レコード」を立ち上げる。2019年4月25日、新作『あげものブルース』を発表。

—本さんは漫画を描くうえで、ご自身の作家性の目覚めは意識されていましたか?

:う~ん。僕は「ガロ系」と呼ばれる、つげ義春さんや杉浦茂さんのような現代のメインストリームとは違った志向性の作家さんに影響を受けてきたんですよ。ただ、僕はそもそもイラストレーターなので、「本業ではないけど、描きたいから漫画を描く」っていうスタンスで。自分がプロの漫画家であると認識していないんです。

そういうスタンスで生きてきたので、デビューしてからの20数年間は、友達が送ってくれた漫画以外は、全く同時代の漫画を読んでいなくて。でも……すごくマイノリティーな発言になってしまいますけど、僕が好きなタイプの漫画は、どうやら世間では評価されていないんですよね。僕が面白くないと思うであろう漫画ばかりが評価されている(笑)。

キイチ:あはは(笑)。

:でも、キイチくんのように、僕の漫画を評価してくれる人もいるんですよ。そういう人たちの好きな漫画が世間に評価されていないのは、もったいないじゃないですか。それなら僕は、作風を変えないまま評価されなければいけない。そういう意識から、僕の作家性は生まれているような気がしますね。

キイチ:「作風を変えないまま評価されなければいけない」っていうのは、すごくよくわかります。それって、ポップミュージックというものを作る人間の根本にある意思のような気もする。

僕も、世の中で流行っている音楽があまりにも自分の価値観と離れすぎていて、「どうしてだろう?」って思うことがよくあって。理解できないから不思議で仕方がないし、「こういう音楽がメインの世の中で、自分は音楽で生きていけるのか?」って、不安になって落ちることがよくあって。「もう終わりだ!」みたいな……(苦笑)。

キイチビール(キイチビール&ザ・ホーリーティッツ)

:でも、初期のキイチビール&ホーリーティッツの音楽って、「僕は大好きだけど、世の中は受け入れてくれるかな?」っていう感じもあったけど、今回のアルバムは、音楽を熱心に掘っているわけじゃない人たちが聴いても楽しめるような、現代的なグルーヴ感がちゃんとあると思う。そういう部分って、曲作りの段階から意識していたの?

キイチ:う~ん、自分ではあんまり意識していないんですけど……ちょっと聴いてみますか?(と言って、iPhoneの音楽制作アプリ「GarageBand」からアルバム収録曲“鰐肉紀行”のデモを流す)

—曲作りはiPhoneが多いんですか?

キイチ:そうですね。僕、パソコンが使えなくて。……(デモを聴きながら)あ、でも、結構デモの段階からグルーヴィですね。ビートがちょっとヒップホップっぽい。自分でも今気づきました(笑)。

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リリース情報

『鰐肉紀譚』(CD)
キイチビール&ザ・ホーリーティッツ
『鰐肉紀譚』(CD)

2019年5月15日(水)発売
価格:2,300円(税込)
KBHT-0006

1. 鰐肉紀行
2. 今夜浮かれたい
3. Tシャツ
4. こーかい
5. 日照りになれば裸になって
6. 平成がおわる<album take>
7. 透明電車が走る
8. 軽めな二人
9. なんでも知ってる女の子
10. 終電でまた会おうぜ
11. 海老肉志向

イベント情報

『キイチビール&ザ・ホーリーティッツ 2ndフルアルバム「鰐肉紀譚」リリースツアー』

2019年6月7日(金)
会場:宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 3rd
ゲスト:FINLANDS

2019年6月9日(日)
会場:北海道 札幌 Spiritual lounge
ゲスト:さよならミオちゃん

2019年6月20日(木)
会場:福岡県 the voodoo lounge
ゲスト:バレーボウイズ、yound、ハチマライザー

2019年6月22日(土)
会場:愛知県 名古屋 CLUB ROCK‘N’ROLL
※ワンマン公演

2019年6月23日(日)
会場:大阪府 Shangri-La
※ワンマン公演

2019年6月29日(土)
会場:東京都 渋谷 WWW X
※ワンマン公演

リリース情報

『あげものブルース』
『あげものブルース』

2019年4月25日(水)発売
著者:本秀康
価格:1,080円(税込)
発行:亜紀書房

プロフィール

キイチビール&ザ・ホーリーティッツ
キイチビール&ザ・ホーリーティッツ

2016年4月にライブ活動をスタートとさせた、東京の5人組ロックバンド。ライブ会場といくつかの店舗/通販サイトにて枚数限定で販売された1stEP「俺もハイライト」/1stミニアルバム「世の中のことわからない」がいつしか全国的に評判になり、完売し、各地のライブハウスを賑わす存在に。2017年の夏には二つのフェス系コンテストを勝ち抜き、ROCK IN JAPANとSUMMER SONICにいきなり出演。注目度が加速度的に上がる。2019年5月15日、2ndフルアルバム『鰐肉紀譚』をリリース。

本秀康(もと ひでやす)

1969年京都府生まれ。イラストレーター、マンガ家。1990年よりフリーイラストレーターとして活動。その後95年にマンガ家としてもデビュー。音楽への造詣が深く、音楽誌への寄稿、CDジャケットのイラストレーションも数多く手がける。2014年には7インチレコード専門レーベル「雷音レコード」を立ち上げる。マンガ『たのしい人生完全版』(青林工藝舎)、『レコスケくん』(ミュージック・マガジン)、『ワイルドマウンテン』(小学館)、『アーノルド』(河出書房新社)、絵本『まじかるきのこさん』(イースト・プレス)など著書多数。

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教室でも放課後でも負け続けたこと、弱さ故に大事な友達も傷つけてきたことーー振り返るほど情けなさでズタズタになってきた自分達の青春を全部吐き出しながら、だからこそ今まで裏切らず側にいてくれた人を離さず抱き締めて生きていきたいのだと表明する1stアルバムが『サンキュー・マイ・フレンド・アンド・マイ・ファミリー』だ。ブッチャーズ、eastern youth、NUMBER GIRLを抱き締めて離さない号泣ファズは変わらぬまま、アルバムタイトルの通り「誰に何を歌いたいのか」に重心を置いた結果としてバンドサウンドが撚られ、歌がグッと前に出た。汗と唾を撒き散らす激情の成分はやや減ったが、あなたと友達になりたい、友達との絆を目一杯歌いたい、だからまずは自分達が素っ裸になってあなたと向き合いたいという意志がスウィートなメロディに乗って突き抜けている。「たったそれだけ」をたったひとりに伝えるためにもんどり打つ、バンドの核心がそのまま映し出されたMV。端からライブの中核を担ってきた名曲がさらに躍動している。(矢島大地)

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