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雪下まゆは、後味悪いラース・フォン・トリアー映画に救われる

雪下まゆは、後味悪いラース・フォン・トリアー映画に救われる

『ハウス・ジャック・ビルト』
インタビュー・テキスト
宮田文久
撮影・編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

友人との楽しい旅行でも、客観的に見てしまう。

―トリアー作品を初めて見たのはいつですか。

雪下:『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000年)を、DVDで見ました。高1のとき、「後味の悪いラストの映画ってありますか?」って、ヤフー知恵袋で聞いたんですよ(笑)。

―わざわざ聞いてしまうくらい、後味の悪い映画を欲していたんですね。

雪下:はい(笑)。それで答えてもらった一覧の中に『ダンサー・イン・ザ・ダーク』が入っていて。トリアーという名前は知らずに見たんですが、すごく好きでした。ラストのシーンも、全然包み隠さず、そのまま映すじゃないですか。

『ハウス・ジャック・ビルト』場面写真 ©2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31, ZENTROPA SWEDEN, SLOT MACHINE, ZENTROPA FRANCE, ZENTROPA KÖLN
『ハウス・ジャック・ビルト』場面写真 ©2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31, ZENTROPA SWEDEN, SLOT MACHINE, ZENTROPA FRANCE, ZENTROPA KÖLN

―未見の方のために詳細は伏せますが、衝撃のシーンですね。

雪下:あれがいいなあ、と。あそこで想像の余地みたいなものを持たせるよりも、現実的な描写のほうが、私は心に刺さるんです。「ここまで描写しちゃう映画があるんだな」とそのときに思いましたね。

―次にご覧になったトリアー作品は?

雪下:『ニンフォマニアック』(2013年)ですね。そのときも実は、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』と同じ監督だと意識していなくて。ポスターデザインがとても好みだったので観たのですが、大好きでした。

『ハウス・ジャック・ビルト』撮影中のブルーノ・ガンツ(左)と、ラース・フォン・トリアー(右) by Zentropa-Christian Geisnaes
『ハウス・ジャック・ビルト』撮影中のブルーノ・ガンツ(左)と、ラース・フォン・トリアー(右) by Zentropa-Christian Geisnaes

―シャルロット・ゲンズブール演じる色情狂の女性ジョーが、セックスに淫した自らの半生を、たまたま出会った中年の男性に告白する作品ですね。

雪下:『ハウス・ジャック・ビルト』と、映画の構成は似ていますよね。

―今作も、ジャックが過去の殺人を、謎の聞き手を相手にずっと告白していますね。

雪下:回想する本人と、アート文脈とかからの引用を交えて、相槌をうつ聞き手がいますよね。『ニンフォマニアック』も、主人公のとんでもない話を、聞き手が超まじめな解釈に無理やり落とし込んでいく感じが面白かったです。私も、最初はその解説を「なるほどな」と思って聞いていたんですけど、途中からだんだん鼻につく感じになってきて(笑)。でもラストの終わり方でスカッとする映画でしたね。なんだろう、『ハウス・ジャック・ビルト』も、どこか滑稽な感じがするんですよね。

『ハウス・ジャック・ビルト』予告編 

―少し時期は戻りますが、暗い映画を見はじめた頃には、既にイラストは描きはじめていたんですか。

雪下:イラストは、小さいときからずっと描いていました。漫画やアニメの影響を受けた絵を描いていたんですが、映画を見はじめてから、他人のイラストを見ることがあまりなくなったんですよね。

特に最近の絵は、自分で撮った写真をもとに描いているんです。その切り取り方とか、この瞬間を撮りたいといった思いは、映画の影響を受けているかもしれません。

『ハウス・ジャック・ビルト』場面写真 ©2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31, ZENTROPA SWEDEN, SLOT MACHINE, ZENTROPA FRANCE, ZENTROPA KÖLN
『ハウス・ジャック・ビルト』場面写真 ©2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31, ZENTROPA SWEDEN, SLOT MACHINE, ZENTROPA FRANCE, ZENTROPA KÖLN

―映画は時間が流れますが、写真を元にしたイラストとなると、本来的には一瞬のものですよね。でも、雪下さんのイラストにはその瞬間、その人物をとりまく背景や時間の流れが感じられます。

雪下:昔から友だちと遊んでいるときに、楽しくても、どこか完全になじめず、傍から見ているような感覚が常にありました。 友だちと何人かで旅行に行ったときもそうです。その有限の時間を全力で楽しもうとしているみんなの姿を見て、「この人たちはこの時間が終わることがわかっているからこそ、こんなにめちゃくちゃ楽しもうとしているんだな」って感じて。客観的に見ていて抱くそういう感覚が、切なくて、すごくいい。そういう瞬間を描いているのが、最近は楽しいですね。

―瞬間の出来事なんだけど、ちょっと違う時間幅をもって客観的に捉えているんですね。そういうふうに見える瞬間が好きなんですか?

雪下:好きというか、そうとしか見れないんです。描いているうちに、勝手にそうなっているのかもしれません。

雪下まゆのイラスト作品
雪下まゆのイラスト作品
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作品情報

『ハウス・ジャック・ビルト』
『ハウス・ジャック・ビルト』

2019年6月14日(金)から新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開

監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:
マット・ディロン
ブルーノ・ガンツ
ユマ・サーマン
シオバン・ファロン
ソフィー・グローベール
ライリー・キーオ
ジェレミー・デイビス
配給:クロックワークス、アルバトロス・フィルム
©2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31, ZENTROPA SWEDEN, SLOT MACHINE, ZENTROPA FRANCE, ZENTROPA KÖLN

プロフィール

雪下まゆ(ゆきした まゆ)

1995年12月6日生まれ、多摩美術大学デザイン卒。イラストレーター。TwitterやInstagramといったSNS上にアップした、女の子をモチーフにしたイラストが、10代、20代の女子を中心に人気を集める。アパレル、CDジャケット、雑誌、またイベントでのライブペイントを行う。主な活動に、国府達矢「ロックブッダ」アルバムジャケットや渋谷PARCOでのライブペイントなど。

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