
フルカワユタカ×アジカン後藤 仲良くなかった2000年代を振り返る
フルカワユタカ『epoch』- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:山川哲矢(Showcase) 編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
まさかのDOPING PANDA復活が実現した初の主催フェス『5×20』(「ソロ活動5年×ミュージシャンキャリア20年」という意味)を経て、フルカワユタカが新作『epoch』を完成させた。Base Ball Bear、HAWAIIAN6の安野勇太、POLYSICSのハヤシヒロユキ、the band apartの原昌和とのコラボ曲が収録された本作は、フルカワのキャリア史上最も外側に開かれた作品であり、文字通りのエポックメイキングな作品となっている。
そんなフルカワが「今一番話したい相手」として挙げたのが、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文。同世代でありながら、これまで直接的な接点はなかった2人だが、フルカワは後藤に対して特別な想いがあったという。2000年代を駆け抜け、2010年代はそれぞれの道を歩んできたフルカワと後藤は、当時をどう振り返り、今なにを見つめているのか。じっくりと語り合ってもらった。
後藤くんはラスボス。やっぱりトップランナーはアジカンだったんですよ。(フルカワ)
―フルカワさんと後藤さんは同世代で共通の知り合いもたくさんいらっしゃると思いますが、これまで直接的な接点はなかったそうですね。
フルカワ:後藤くんとは前から話をしてみたかったんです。というのも、僕はもともと同世代のアーティストの友達がいなかったんですよ(笑)。人見知りもあるけど、尖ろうと尖ろうとしてて……まあ、当時はみんなそうだったと思うんですけどね。今の若いバンドみたいに一緒にイベントやったりとかは、本当にない文化だったから。
後藤:そうだよね。
フルカワ:しかも、メジャーデビューしたとき(2005年)に、それまで距離の近かった『AIR JAM』周りの人たちとも袂を分かっちゃったから、木下理樹(ART-SCHOOL / killing Boy)くらいしか友達いなくて。
でも、バンド(DOPING PANDA)が2012年に解散してから、徐々に同世代と仲良くなって。ACIDMANの大木(伸夫)とは昔から仲良かったけど、2016年にBase Ball Bearのサポートをやって、そのあとLOW IQ 01のサポートもやるようになって、細美(武士 / ELLEGARDEN、the HIATUS)くんとかホリエ(アツシ / ストレイテナー)くんとかとも仲良くなって。
後藤:俺からしたら、細美くんと一緒に映ってる写真を見たときは衝撃でしたけどね。「そこ、一番仲悪かったところだろ」みたいな(笑)。
フルカワ:(笑)。HAWAIIAN6ともまた一緒にやるようになって、locofrankとかdustboxとか、パンク界隈とも仲良くなっていくなかで……後藤くんはラスボスっていうか。ELLEGARDENもいたけど、やっぱりトップランナーはアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)だったんですよ。僕がイケイケのときはMCでアジカンのことをいじったりもしてたんだけど、そういうのがどう映ってたのかとか、しゃべってみたいなって。
後藤:確かに、そもそもみんな無用につるむ感じじゃなかったけど、ドーパン(DOPING PANDA)とは特に接点がなくて……でも、音楽はかっこいいなと思って聴いてた。『PINK PaNK』(2002年リリース)とか今聴いても先進的で、全然古くないし。だから、音楽的な志が高いバンドとして見てたというか。
DOPING PANDA『PINK PaNK』を聴く(Apple Musicはこちら)
後藤:ただ、フルカワくんは「スター」キャラだったから、無用なバトルを仕掛けにいく癖はあったよね(笑)。でも、馴れ合う空気はなかったし、張り合ってた時期はみんなあったと思いますよ。
フルカワ:僕らって、世代的に「ロスジェネ」と言われてますけど、バンドに関しても「ロスジェネ」なんですよ。僕らの上には『AIR JAM』の世代がいて、ライブハウスに行くと、英語じゃないと対バン組めないみたいな時期が本当にあって。
後藤:あった、あった。ライブハウスでは、「メロコア以外は音楽にあらず」っていう(笑)。
フルカワ:俺は上京してそこに入っていったわけだけど、アジカンとかテナー(ストレイテナー)とかACIDMANとか、結果的にそのあとフェスで主役になっていくバンドは、当時ある種の疎外感というか、『AIR JAM』に対するアレルギーみたいなのがあったのかなと思って。その頃の僕らやthe band apartのことはどう見えてたのかな? って。
リリース情報

- フルカワユタカ
『epoch』(CD) -
2019年7月3日(水)発売
価格:3,300円(税込)
NIW1471. コトバとオト feat.Base Ball Bear
2. ゲッコウとオドリコ
3. クジャクとドラゴン feat.安野勇太(HAWAIIAN6)
4. コーラとアメスピ
5. セイギとミカタ
6. インサイドアウトとアップサイドダウン feat.ハヤシヒロユキ(POLYSICS)
7. ボトルとサイダー
8. デストラクションとクリエイション
9. ドナルドとウォルター feat.原昌和(the band apart)
10. ロックスターとエレキギター
イベント情報
- 『フルカワユタカ ワンマンツアー「epoch」』
-
2019年8月31日(土)
会場:千葉県 千葉 LOOK2019年9月1日(日)
会場:神奈川県 横浜 F.A.D YOKOHAMA2019年9月8日(日)
会場:群馬県 高崎 club FLEEZ2019年9月29日(日)
会場:茨城県 水戸 LIGHT HOUSE2019年10月14日(日)
会場:埼玉県 西川口 LIVE HOUSE Hearts2019年10月19日(土)
会場:京都府 京都 磔磔2019年10月20日(日)
会場:岡山県 岡山 ペパーランド2019年10月22日(火)
会場:静岡県 静岡 UMBER2019年10月27日(日)
会場:宮城県 仙台 space Zero2019年11月2日(土)
会場:北海道 札幌 COLONY2019年11月3日(日)
会場:福岡県 福岡 Queblick2019年11月9日(土)
会場:大阪府 梅田 Shangri-La2019年11月10日(日)
会場:愛知県 名古屋 APOLLO BASE2019年11月16日(土)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-WEST
リリース情報

- ASIAN KUNG-FU GENERATION
『ホームタウン』初回生産限定盤(2CD+DVD) -
2018年12月5日(水)発売
価格:4,968円(税込)
KSCL-3121~3123[CD1]
1. クロックワーク
2. ホームタウン
3. レインボーフラッグ
4. サーカス
5. 荒野を歩け
6. UCLA
7. モータープール
8. ダンシングガール
9. さようならソルジャー
10. ボーイズ&ガールズ[CD2]
『Can't Sleep EP』
1. スリープ
2. 廃墟の記憶
3. イエロー
4. はじまりの季節
5. 生者のマーチ[DVD]
『ASIAN KUNG-FU GENERATION America Tour Documentary Pt.2(Latin America)』

- ASIAN KUNG-FU GENERATION
『ホームタウン』通常盤(CD) -
2018年12月5日(水)発売
価格:3,146円(税込)
KSCL-31241. クロックワーク
2. ホームタウン
3. レインボーフラッグ
4. サーカス
5. 荒野を歩け
6. UCLA
7. モータープール
8. ダンシングガール
9. さようならソルジャー
10. ボーイズ&ガールズ
プロフィール

- フルカワユタカ
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1997年にDOPING PANDAを結成し、2005年フロントマンとしてメジャーデビュー。通称ドーパメイニアと呼ばれるファンから「ロックスター」の愛称で親しまれたが、2012年惜しまれながら解散。翌年2013年1月に渋谷クアトロ3daysのライブよりソロ活動をスタート。2019年7月には、the band apart・原昌和、POLYSICS・ハヤシヒロユキ、HAWAIIAN6・安野勇太、Base Ball Bearら盟友たちと作り上げたコラボ曲をコンパイルした、4枚目となるフルアルバム『epoch』のリリースと、全国14か所を回る全国ツアーの開催が決定。自身のソロ活動はもちろん、楽曲提供仕事など、精力的に活動を続けている。

- 後藤正文(ごとう まさふみ)
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ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル&ギター。新しい時代とこれからの社会を考える新聞『THE FUTURE TIMES』の編集長を務める。インディーズレーベル『only in dreams』主宰。また著書に『凍った脳みそ』『銀河鉄道の星』(ミシマ社)他。ASIAN KUNG-FU GENERATIONとしては、2018年12月5日にアルバム『ホームタウン』をリリースし、2019年5月15日には最新シングル『Dororo / 解放区』を発表した。