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なぜAlfred Beach Sandalは名義を変えた? 北里彰久が語る

なぜAlfred Beach Sandalは名義を変えた? 北里彰久が語る

北里彰久『Tones』
インタビュー・テキスト
松永良平
撮影:前田立 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

「その日の、そのときのこと」を歌にするというよりは、そのときの温度感とか雰囲気を曲にするような感覚。

―『Tones』の曲に関しては、音もメロディーも言葉も最初から最低限の要素だけで成立しているものを作りたかったんじゃないかと感じました。

北里彰久『Tones』を聴く(Apple Musicはこちら

北里:曲を作るうえでは、具体的なイメージは思い浮かんでいるんですよ。たとえば、ピザ屋でメシ食ってたら友達が店の外で待ち伏せしてて、そのまま車で夜の海まで行って、その車内でロイ・エアーズがかかってよかったな、みたいなこと。でも、曲にするときは「その日の、そのときのこと」を歌にするというよりは、そのときの温度感とか雰囲気を曲にするような感覚。

過去のことを思い出話として語りたいんじゃなくて、未来のことを言うためにわざわざ過去の話をするとか、現在の話をするために未来にことを持ち出すとか。それが自分にとってのサイケな感覚なんですよ。時間が伸び縮みしてるとか、自分がしゃべってる言葉が誰の言葉かわからなくなる。そういうつもりで曲は作りました。

北里彰久

―そういう感覚って、特に初期のAlfred Beach Sandalの曲では、エキゾ的な言葉をモチーフとして入れたりしていた部分にもありましたよね。その意味での異国とか異世界的な言葉は、今はほとんどなくなった。

北里:そのときは素直にやっていたし、今でも好きな手法なんですけど、今回はそういう飾りをどんどん削ぎ落としていく感覚で。「ここじゃないどこか」を想像しながら作る感覚ともちょっと変わりましたね。「ここじゃないどこか」のことを考えるのって、今いる「ここ」のことを考えるのと一緒だなとも思うようになったし。

―逆にいえば「ここ」も「どこか」になりうるというか。

北里:そう。それを自分のインナースペースから広げたいっていう感覚はありました。外に出ていつもと少し違う道を通って、みたいな感覚というか。そのうえで、そのとき体感したことを音楽に落とし込めたらいいなと。タイトルを『Tones』にしたのも、具体的な物事じゃなく、音色とか温度感とか、そういう調子みたいなものがいろいろあるということを言いたかったからなんです。

北里彰久

zAkさんにお願いしたのは、とにかく音の感じを親密にしたかったから。

―ひとりではじめたアルバムだという話がありましたけど、そういう意味では、デモからベーシックへの流れも自分でかっちり決めて臨んだんですか?

北里:ほぼほぼそうですね。これまでと比べたら、他人のアイデアで鳴っている音って本当に少ないと思います。

―STUTSが今回も参加しているとクレジットを見て思う人もいるでしょうけど、関与の仕方はコラボのときとは全然違う。

北里:今回はトラックメイカーとして参加してもらってないですからね。リズムのパターンも自分で組んでいたけど、STUTSはいい音、いいブレイクをいっぱい持ってるから、「こういうふうにしたいんで、ドラムの音を入れてほしい」っていう参加の仕方です。今回はマニピュレーター的な立場というか。あとは、パーカッションとか鍵盤とかもやってもらっています。

STUTSがビートプログラミングや鍵盤、パーカッションで参加した北里彰久“チークタイム”を聴く(Apple Musicはこちら

―zAkさんが共同プロデューサーにクレジットされています。『Unknown Moments』もzAkさんがエンジニアだったわけですけど、今回は制作過程にどういうふうに関与しているんでしょうか?

北里:zAkさんにお願いしたのは、サウンド面をどうまとめるかの部分です。あとは完全に俺がひとりで作っている曲のアレンジの枝葉の部分を切り落としたり、整頓してくれる作業もやってもらっています。わざわざ言葉で確認しない方ですけど、最初にデモを持っていった時点でシンプルにしたいっていう意図はわかってくれてたと思いますね。

zAkさんにお願いしたのは、サウンドがすごく好きだからというのもあるけど、とにかく音の感じを親密にしたかったからで。それはzAkさんだけじゃなく、演奏メンバーにも思っていました。

北里彰久

北里:テクニックも大事だけど、距離の近さみたいなものがある人に頼みたかったんですよね。自分がここ数年で見ているニュアンスをなんとなく感じ取ってくれる人。つまり、「シンプルにしたいんだ」って説明しなくてすむ人です。最初に「シンプルにしたい」って外枠を決めると、そこから目減りしていくのがイヤだったので。zAkさんに関しては、そういうことを演奏のなかから感じとってくれるうえに、さらに音に落とし込んでくれる抜群の耳とセンスの持ち主ってことで、そこに甘えちゃいました。

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リリース情報

『Tones』
北里彰久
『Tones』(CD)

2019年7月10日(水)発売
価格:2,700円(税込)
PECF-1175

1. 子午線
2. Easy Tempo
3. チークタイム
4. Flowers for a Stranger
5. エンドオブヴァケイション
6. 夜光のスケッチ
7. 出発
8. 夏のさなか
9. Fortune

イベント情報

『北里彰久“Tones”release tour』

2019年7月28日(日)
会場:長崎県 崇福寺 Coffee & clayworks 笠
Live:北里彰久(Acoustic Band Set)
料金:前売2,800円 当日3,300円(共にドリンク別)

2019年7月30日(火)
会場:福岡県 正屋 本店
ライブ:
北里彰久(Acoustic Band Set)
Cobalt boy
料金:前売2,500円 当日3,000円(共にドリンク別)

2019年9月1日(日)
会場:兵庫県 神戸 旧グッゲンハイム邸
ライブ:北里彰久(Band Set)
前売:前売3,300円 当日3,800円(共にドリンク別)

2019年9月14日(土)
会場:東京都 青山 CAY
ライブ:北里彰久(Band Set)
DJ:nutsman
料金:前売3,300円 当日3,800円(共にドリンク別)

2019年10月5日(土)
会場:愛知県 名古屋Live&Lounge Vio
ライブ:北里彰久(Band Set)/ odd eyes
DJ:nutsman
料金:前売3,300円 当日3,800円(共にドリンク別)

プロフィール

北里彰久
北里彰久(きたざと あきひさ)

2009年よりフリーフォームなソロユニットAlfred Beach Sandalとして活動開始。3枚ほどアルバムを作る。ロックからMPB、ブラックミュージックまでを三次元的にイビツに迷走していく手腕には一定の評価をいただく。「DJ的発想で曲を作っている」と言われ、いい気になって「そうですね」と答えたことがある。最近はよりひとりぼっち方面の活動が増え、歌にフォーカスしていく傾向がみられる。ギターもちょっと弾ける。

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