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遠藤薫はアイデアで取り締まりをかわし、規格外の変化球を投げる

遠藤薫はアイデアで取り締まりをかわし、規格外の変化球を投げる

shiseido art egg
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:前田立 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

工芸を勉強していくなかで出会ってきた、「価値観の逆転」

書道の家に生まれたからこそ、外から書の本質を考えてみる。沖縄の外からやって来たからこそ、沖縄伝統の紅型への介入の仕方を考える。クラブカルチャーの危機に、笑えるアイデアで変化球を投げてみる。

遠藤のそういった活動を振り返ってみると、ときに理不尽さを伴うさまざまな状況に対して、直球勝負ではないアゲインストの方法を探ることが、彼女の表現の起点になっているのだと気づく。

遠藤:海外の現代美術の作家さんたちは、作品を通して、あるいは作品以外でも、政治や社会の理不尽な状況に対しててらいなくアゲインストしています。最近は、そういう直接的なアクションを見習いたいな、と思ったりもするんです。例えば、異なる土地の文化に共通点を見出して、それをつなぐことで状況を変えることを、私は目論んでいます。

沖縄の芭蕉布の製法はかつてベトナムにもあったのですが、17世紀には消えてしまいました。おそらく、それは工程があまりにも過酷すぎてみんな作らなくなったから。でも、沖縄はそれしか選択肢がないのでずっと芭蕉布を作り続けてきた。それを民藝の提唱者である柳宗悦が発見して「こんな素晴らしいものを民衆みんなが着てる!」と驚くわけです。工芸のことを勉強していくと、至るところでこういった価値観の逆転みたいな出来事に出会います。

―たしかに。

遠藤:最近、ベトナムのまったく観光地化されていない少数民族の村で芭蕉布を復興させるプロジェクトを立ち上げました。同国にはもう芭蕉布の作り手はいませんから、沖縄からプロフェッショナルを招待してワークショップを9月に行います。こういった交流の過程では、逆向きの伝達も起こります。例えば、大麻を原料とする布は日本では簡単には作れませんから、その技術をベトナムの人たちから学ぶ機会が生まれたりもするんです。

少数民族と現代経済との関わり方の中で、どうすれば彼らや私も含めた人間が、自尊心を保ちうるのか? よい生活を選択できるのか? それを考えてみたいんです。

―活動が作品制作だけではなくなっている。

遠藤:それに、そもそも沖縄とベトナムは古くから技術の交流があって、染織の原料も酷似していますからね。沖縄のニライカナイ信仰のミルク神(弥勒神)はベトナムから来た、という記述もあったりして、共通点は多いです。そのことをベトナムの仲間に伝えると「ぜひ助け合おう!」と、自然となるんですよ。

遠藤薫

―アートでなく工芸だからこそ結ばれるネットワークがある。

遠藤:もちろん美術にはよいところがたくさんあります。「ペンは剣よりも強し」というか、なんらかのアイデアでちょっと転換してみたり、抜け道を作ったりすることができるのは美術の大きな魅力です。でも、ちょっとメタ的になりすぎる感じもある。だから美術らしさとは別のやり方で、ベタに経済に介入するとか、政治的なことにも関与するとか、そういうことに興味があるんです。

―これまでは現代美術という「外」から、工芸について考えてきたけれど、さらに別の「外」から、今度は現代美術を考え直してみることもできそうですね。

遠藤:どんなことでも、外から見てみることで本質的なことを考える視点を持つことが可能になるんだと思います。現代美術には、他のジャンルのアイデアや技術を獲得して、アートの本質を広げていく、包摂していくという性質があると考えられていますが、私はそんな風に工芸を美術として扱っていません。工芸だけをしていてもできないことを現代美術が引き受けてくれているのと同じように、美術だけでは足りないことを、工芸が引き受けてくれているのが今の状態。それらは、単なる領土の拡大ではないのだと思っています。

もっと言い換えるなら、「世界+美術=世界」だな、と。一見すると皮肉っぽく理解されるかもしれませんが、これは私にとってずいぶん複雑な、希望的な数式なんです。

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イベント情報

『shiseido art egg 13th』
遠藤薫展

2019年8月30日(金)~9月22日(日)
会場:東京都 資生堂ギャラリー
平日 11:00~19:00 日・祝 11:00~18:00
毎週月曜休(祝日が月曜にあたる場合も休館)
入場無料

作家によるギャラリートーク
遠藤薫

2019年8月31日(土)14:00~14:30
会場:東京都 資生堂ギャラリー

※事前申し込み不要。当日開催時間に直接会場にお越しください。
※予告なく、内容が変更になる場合があります。
※やむを得ない理由により、中止する場合があります。
中止については、資生堂ギャラリー公式Twitterにてお知らせします。
※参加費無料

プロフィール

遠藤薫(えんどう かおり)

1989年、大阪府生まれ。2013年に沖縄県立芸術大学工芸専攻染めコース卒業。2016年、志村ふくみ(紬織, 重要無形文化財保持者)主催、アルスシムラ卒業。現在は、ハノイ/大阪府在住。

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