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パソコン音楽クラブの部活感の秘密。作家性や主張より大事なこと

パソコン音楽クラブの部活感の秘密。作家性や主張より大事なこと

『NEWTOWN 2019』
インタビュー・テキスト
柴崎祐二
撮影:Kay N 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

特定のジャンルから浮遊する感じも含め、ヴェイパーウェイヴにも通じる考え方があったのかもしれない。(西山)

―西山さんが1994年で、柴田さんが1995年生まれということですが、10代の頃から「Maltine Records」(2005年に設立)などのネットレーベル文化に親しんでいたのでしょうか?

柴田:自分としては、「Maltine Records」を完全に後追いで知って。高校生の頃とかでしたが、なんか東京のほうで面白そうなことをやっているなあっていうくらいのイメージでしたね。

西山:僕らはネットレーベル第一世代ではないし、すでに音楽をはじめたときにはそういうものが存在していて、それを遠くから眺めていたっていう感覚ですかね。

左から:西山、柴田

―機材面とは別に、発足当初に音楽性の面で「こういうのを目指したい」とかいうのはあったんでしょうか?

柴田:あまり特定のジャンルを目指していた感じではなかったですね。

西山:それは今も変わらないですね。当時の機材のプリセット音源を触っていて、今の時代ではかえって珍しい音にインスパイアされて曲を組み立ていくことが多いです。だから、音色に応じて曲調も変わっていく。

当時はそこまで意識をしてなかったですが、特定のジャンルから浮遊する感じも含め、ヴェイパーウェイヴにも通じる考え方があったのかもしれないです。実はあまり聴いたこともなかったんですが。

―なるほど。ヴェイパーウェイヴというと、1980~1990年代的意匠やチープさみたいなものをわりと自覚的 / 批評的に扱うという側面がありますが、パソコン音楽クラブの場合は単に古い機材へのキッズ的な興味からはじまったというのが面白いですね。海外のヴェイパーウェイヴを聴いてみて、「うわー、わかるわー」みたいな感覚ありました?

西山:それはかなりありましたね。音楽の聴き方が決定的に変わっていくな、という感覚。ショッピングモールで流れているようなフュージョンとかBGMミュージックとかそれまで「ダサい」とされていたものの捉え方が覆りました。

柴田:僕はGiant Clawとか、「Orange Milk」レーベルのものとかを聴いてそう思ったかも。ペナペナのMIDI音源を使ってて、「おもろいやん!」って。新しい音楽ジャンルっていうか、発想の転換、発明、みたいな。

―ヴェイパーウェイヴに見られるように、作家的個性や記名性から離れたい、というのもありますか?

西山:それはあります。最近ようやく自分の顔写真を出せるかな、って(笑)。単に気恥かしさもありますけど。

パソコン音楽クラブのアーティスト写真
パソコン音楽クラブのアーティスト写真

好きなことに素直に向き合いたいからこそ、作家性とか主張とかで自分たちのイメージをくくってしまいたくないな、とは思います。(柴田)

―たとえばインタビューとかで、「この曲には作家としてどんな主張を込めていますか?」とか訊かれても困っちゃう?

西山:そうなんですよ。作っている以上はもちろん気持ちは入っているけど……僕たちの音楽は、特定の個人のメッセージとかそういうものが込められている音楽ではないと思うので。もちろん「俺の声を聴け!」みたいな思想や主張のある音楽も好きだし、必要だし、憧れる部分もあります。

自分も政治的にこう思うとかはあるし、願望もいろいろな規模感でありますけど、音楽を作ったり聴いたりするうえでそれだけになってしまうとむしろ息苦しくなってしまうとも思うんです。強い感情とかイズムから離れて、そこにある感覚や質感を味わう音楽があってもいい。それを聴いてもらったうえでどう感じるかは聴く人に委ねられている、というのが健全だと思います。

柴田:それとやっぱり好きなことに素直に向き合いたいからこそ、作家性とか主張とかで自分たちのイメージをくくってしまいたくないな、とは思います。

左から:柴田、西山

―ある種のコンセプチュアルアートの発想法に近いのかもしれないですね。おふたりの場合はガチガチに固め過ぎていない分、どこかチャーミングさが溢れている気がしますが(笑)。

柴田:そう捉えてくれたら嬉しいですけどね(笑)。

―おふたりの音楽は、ネット発のカルチャーの匂いを纏っている一方で、ダンスミュージックとしてのフィジカルな現場志向も感じるんですよね。

西山:プライベートな空間でのリスニングとダンスの現場、どちらに優劣があるとかは思わないのですが、両方の大切さがあるなと思っていて。最初はパソコン音楽クラブとしてライブをしようなんて全く思ってなかったし、クラブにもほとんど行ったことがなかったんですよ。

でも実際にライブをしていくうちに、より踊ってもらいやすい曲調や低音の構成を考えていくようになりましたね。みんなが一体になって同じ曲を聴きながら踊って盛り上がるってすごく不思議というか、尊さがあるなと思うんです。

柴田:たとえばプリセット音のなかによいキックの音が出てきたら四つ打ちの曲を作りたくなるし、やっぱり音色から発想している部分は大きいですね。

左から:西山、柴田

―「ダンスミュージックの未来を切り拓いていくぞ!」みたいな意識ではない?

西山:それはないですね。クラブイベントに呼んでもらって、1時間ただアンビエントをやり続けても……というのもありますし(笑)、どうせなら集まってくれた人とみんなで楽しく盛り上がりたい。その場に応じてリスニングミュージック的なものとダンス志向のものどちらもできるというのが、まさに自分たちの思う匿名性みたいなものに繋がっていると思うんです。

柴田:ライブでフュージョンやったあとにゴリゴリのテックハウスやることが普通にあるんですけど、自分たちのなかでは特に違和感がないんです。それはたぶんお客さんも一緒だと思います。

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リリース情報

パソコン音楽クラブ『Night Flow』
パソコン音楽クラブ
『Night Flow』(CD)

2019年9月4日(水)発売
価格:2,160円(税込)
PSCM002

1. Invisible Border(intro)
2. Air Waves
3. Yukue
4. reiji no machi
5. Motion of sphere
6. In the eyes of MIND
7. Time to renew
8. Swallowed by darkness
9. hikari

イベント情報

『パソコン音楽クラブ2ndアルバム「Night Flow」リリースパーティー』

2019年9月7日(土)
会場:大阪府 南堀江 SOCORE FACTORY
出演:
長谷川白紙
パソコン音楽クラブ

2019年10月12日(土)
会場:京都府 CLUB METRO
出演:
Soichi Terada(House Set)
SEKITOVA
Stones Taro(NC4K)
cool japan
seaketa
パソコン音楽クラブ

2019年 10月26日(土)
会場:東京都 渋谷 WWW
出演:
長谷川白紙
パソコン音楽クラブ

プロフィール

パソコン音楽クラブ
パソコン音楽クラブ(ぱそこんおんがくくらぶ)

2015年結成。ローランドSCシリーズやヤマハMUシリーズなど1990年代の音源モジュールやデジタルシンセサイザーを用いた音楽を構築。2017年に配信作品『PARKCITY』を発表。tofubeatsをはじめ、他アーティスト作品への参加やリミックス、演奏会、ラフォーレ原宿グランバザールのTV-CMソングなど幅広い分野で活動。2018年6月に自身初となるフィジカル作『DREAM WALK』をリリース。2018年9月、2ndアルバム『Night Flow』を発表。

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