
フレデリックの表現がユニークな理由 双子の関係と想像力に秘密が
フレデリック『VISION』- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:ヤオタケシ 編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
今年メジャーデビュー5周年を迎えたフレデリック。彼らはこれまで、楽曲の強度を自らの核としながら、そのライブパフォーマンス力をロックフェスの現場で発揮し、ミュージックビデオやアートワークのユーモラスさをスマホの画面の中から爆発させることで、2010年代の音楽シーンにおいて唯一無二の存在感を放ってきた。
今回CINRA.NETでは、フレデリックがいかに「音の視覚化」を実践してきたかという点に着目して、双子の三原健司と康司にインタビューを敢行。10代の頃に兄・健司は音楽の専門学校へ、弟・康司は芸大へと進むことを選び、音楽や創作において、もっと言えば生きることにおいて、一番大切な「想像力」を磨き続けてきたことを語ってくれた。
10月9日にリリースされるEP『VISION』は、今まさに自ら掲げた「未来」へと歩みを進めているバンドの姿を、音とアートワークの両面で刻み付けた作品となっている。
「それが面白いと思ったら、それでいいじゃん」って、どんどん思えるようになってきた。(康司)
―2月にリリースされた2ndアルバム『フレデリズム2』は、『フレデリズム』(2016年10月リリース)以降の2年半の集大成であると同時に、新しい側面も見せた作品で、特に1曲目“LIGHT”のダンスミュージック的なアプローチが印象的でした。
健司(Vo,Gt):“LIGHT”はもともと「いつかやりたい」と思っていたタイプの曲ではあったんです。ただ、2014年に“オドループ”というBPMの速い曲でメジャーデビューをしたので、そこにフレデリックの魅力を感じてくれた人を手放したくないという想いがあって、これまではそっちの側面が前に出ていて。
でも、インディーズ時代にフィッシュマンズの柏原(譲)さんにプロデュースしていただいた楽曲みたいに(参考記事:見えないものを信じる力 フレデリック×柏原譲対談)、フレデリックならではの、汁の濃いテイストも忘れたくなくて。リードトラックではないにしても、アルバム曲としてはずっと作り続けていたんですよね。
メジャーデビューアルバム『oddloop』(2014年9月リリース)の1曲目“オドループ”2ndアルバム『フレデリズム2』(2019年2月リリース)の1曲目“LIGHT”
―確かに、いわゆる「ダンスロック」ではない作風というのも、もともとフレデリックの持ち味でしたよね。
健司:5年間やってきて、一般的にも、フェス界隈でも、「ただ盛り上がるだけのバンドではない」ということがある程度認知されてきたタイミングかなと思って。ここで一回舵を切って、思いっ切りダンスミュージックに振っても、「フレデリックらしい」と思ってもらえるんじゃないかって、一発勝負を賭けてみようと思ったんですよね。
あとは、音をアップデートすると同時に、「配信限定シングル」としてリリースすることで、売り方もアップデートするのが面白いんじゃないかとも考えていました。“LIGHT”を出したのはフレデリックにとっていいターニングポイントになったし、2019年のフレデリックにとっていい舵の切り方ができたという感覚があります。

フレデリック
左から:三原健司、三原康司
神戸にて結成された三原健司(Vo,Gt)、三原康司(Ba)の双子の兄弟と、赤頭隆児(Gt)、高橋武(Dr)で編成される4人組バンド。2018年4月には初のアリーナ単独公演を開催。2019年2月にメジャー2ndフルアルバム『フレデリズム2』をリリースし、2作連続でオリコンアルバムTOP10入りを果たす。同年4月より全国ツアーを開催中、来年2020年2月には横浜アリーナでの単独公演が決定している。
―“LIGHT”はエレクトロニックな質感が強まり、サウンドデザインという意味でも、新たなチャレンジだったのではないかと思います。ミックスに海外エンジニアを起用していたのも、その一環だったと思うし。
康司(Ba):去年の4月に神戸のアリーナを経験したことで、「アリーナで鳴らす楽曲を作る」というところへ視野が広がったので、その意味で言えば、BPMが落ちていくのは自然なことでもあったんですよね。
洋楽のダンスミュージックは基本ループなので、コード進行があまりつけられなくて、歌謡のメロディーと合わせるのがすごく難しかったんですけど、自分のベースをすごくシンプルにしたり、海外ミックスでちゃんと音圧も出したり、いろんなこだわりが詰まっていて、最終的にはすごくいいバランスになったと思っています。
―「シンプル=ただわかりやすい」ではない、洗練された仕上がりだったと思います。
康司:“LIGHT”もそうだし、今回の『VISION』もそうですけど、変化することを恐れなくなったというか。「それが面白いと思ったら、それでいいじゃん」って、どんどん思えるようになってきたんです。「フレデリックがまた新しいことをやり始めてる」みたいに、僕たちの挑戦し続ける姿を見ていてもらえたらなって思いますね。
リリース情報

- フレデリック
『VISION』初回限定盤(CD+DVD) -
2019年10月9日(水)発売
価格:2,200円(税抜)
AZZS-98[CD]
1.VISION
2.イマジネーション
3.終わらないMUSIC
4.シンセンス(FAB!!)Live at 新木場 STUDIO COAST 2019
5.かなしいうれしい(FAB!!)Live at 新木場 STUDIO COAST 2019
6.夜にロックを聴いてしまったら Live at 新木場 STUDIO COAST 2019[DVD]
・「FREDERHYTHM TOUR 2019~夜にロックを聴いてしまったら編~」at 新木場 STUDIO COAST (2019.04.13)
1 LIGHT
2 スキライズム
3 RAINY CHINA GIRL
4 人魚のはなし
5 他所のピラニア
6 逃避行
7 エンドレスメーデー
8 夜にロックを聴いてしまったら
・「FREDERHYTHM TOUR 2019-2020」SEASON1-SEASON2 Documentary

- フレデリック
『VISION』通常盤(CD) -
2019年10月9日(水)発売
価格:1,300円(税抜)
AZCS-1086[CD]
1.VISION
2.イマジネーション
3.終わらないMUSIC
4.シンセンス(FAB!!)Live at 新木場 STUDIO COAST 2019
5.かなしいうれしい(FAB!!)Live at 新木場 STUDIO COAST 2019
イベント情報
- 『FREDERHYTHM TOUR 2019~VISION編~』
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2019年11月16日(土)
会場:北海道 Zepp Sapporo2019年11月29日(金)
会場:愛知県 Zepp Nagoya2019年12月7日(土)
会場:福岡県 Zepp Fukuoka2019年12月14日(土)
会場:大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 『FREDERHYTHM ARENA 2020~終わらないMUSIC~』
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2020年2月24日(月・祝)
会場:神奈川県 横浜アリーナ
プロフィール

- フレデリック
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神戸にて結成された三原健司(Vo,Gt)、三原康司(Ba)の双子の兄弟と、赤頭隆児(Gt)、高橋武(Dr)で編成される4人組バンド。初年度MASH A&Rオーディションにて特別賞を受賞。独特なユーモア性、そして幅広い音楽的背景から生みだされる繰り返されるリズムと歌詞は中毒性が高く、「忘れさせてくれない」と話題になり、一筋縄ではいかないスタンスを持ったバンドとしてシーンを席巻。印象的なミュージックビデオやアートワーク等楽曲以外のクリエイティブも関心を集めている。また、ライブならではの楽曲アレンジや多彩な演出でライブバンドとしても定評があり、2018年4月には初のアリーナ単独公演を開催。2019年2月にはメジャー2ndフルアルバム『フレデリズム2』をリリースし、2作連続でオリコンアルバムTOP10入りを果たす。同年4月より全国ツアーを開催中、来年2020年2月には横浜アリーナでの単独公演が決定している。