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サンティアゴ・バスケス×芳垣安洋が信じる、即興音楽の対話力

サンティアゴ・バスケス×芳垣安洋が信じる、即興音楽の対話力

『True Colors Festival』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
編集:石澤萌、川浦慧(CINRA.NET編集部)

日本には、様々な国からたくさんの人が移り住んできて、それぞれのコミュニティを形成したり、個人で生活をしたりしている。育った環境によっては日本語以外の言語も使われており、すべての人にとって「共通の言葉」というものは厳密には存在しない。これから『東京オリンピック / パラリンピック』に向けて、さらに多くの外国人が日本を訪れるのは必至であり、何か「言葉」以外にもコミュニケーション手段はないのか、知恵を絞りたいものだ。

そんな中、多様性社会の浸透を目指し、約1年をかけて様々な催しが行われる『True Colors Festival -超ダイバーシティ芸術祭-』(主催:日本財団)では、あるひとつの「試み」が行われる。アルゼンチンの首都ブエノスアイレス出身の音楽家、サンティアゴ・バスケスが考案した「ハンドサイン」を用いての即興演奏を、プロアマ問わず会場に集まった人たちと共に奏でるというものだ。「ハンドサイン」とは、身振りを使った演奏の指示。100種類以上ある「ハンドサイン」をマスターすれば、初めて会った人とも即興演奏の中で自由にアンサンブルを組み上げていけるという。

日本では2000年代前半、フアナ・モリーナやフェルナンド・カブサッキ、モノ・フォンタナらとともに「アルゼンチン音響派」のひとりとして紹介され、その後は何度も来日をしながら日本人ミュージシャンとも深い交流を重ねてきたサンティアゴ。彼は「ハンドサイン」を用いた即興音楽を奏でることで、社会にどう貢献しようと思っているのだろうか。彼の最大の理解者であり、ROVOや渋さ知らズ、大友良英ニュー・ジャズ・クインテットなどでも活動するドラマー、芳垣安洋と共に話を聞いた。

手の動きやバトンを用いた「コンダクション」があれば、世界中のミュージシャンと言葉を介さずに即興演奏ができるのではないかと思って。(サンティアゴ)

―芳垣さんがサンティアゴさんを知ったのは、どんなきっかけだったのですか?

芳垣:確かフアナ・モリーナの2ndアルバム『Segundo』(2000年)が出るちょっと前だったと思います。彼が所属していたバンド、Puente Celesteの1stアルバム『Santiago Vazquez & Puente Celeste』(1999年)を手に取ったのがきっかけでした。

当時はまだ、アルゼンチンの新しい音楽に関する情報が全然なかったのですが、例えばサックス奏者ガトー・バルビエリが1973年にリリースしたアルバム『Chapter One: Latin America』に、ディノ・サルーシ(アルゼンチンのバンドワゴン奏者)が参加していたりして、僕自身は以前からアルゼンチンの音楽に興味はあったんです。それでPuente Celesteを初めて聴いて、「こんな音楽がアルゼンチンにはあるんだ!」と思ってさらに魅了されるようになり、そこからサンティアゴの活動を追うようになっていきましたね。

芳垣安洋(よしがき やすひろ)<br>関西のジャズエリアでキャリアをスタートさせ、モダン・チョキチョキズ、ベツニ・ナンモ・クレズマー・オーケストラ、渋さ知らズなどに参加後上京。現在、ROVO、大友良英ニュー・ジャズ・オーケストラ、南博GO THERE、アルタード・ステイツや自己のバンドVincent Atmicus、Emergency!、Orquesta Nudge!Nudge!等のライブ活動の他、蜷川幸雄や文学座などの演劇や、映画の音楽制作も手掛ける。
芳垣安洋(よしがき やすひろ)
関西のジャズエリアでキャリアをスタートさせ、モダン・チョキチョキズ、ベツニ・ナンモ・クレズマー・オーケストラ、渋さ知らズなどに参加後上京。現在、ROVO、大友良英ニュー・ジャズ・オーケストラ、南博GO THERE、アルタード・ステイツや自己のバンドVincent Atmicus、Emergency!、Orquesta Nudge!Nudge!等のライブ活動の他、蜷川幸雄や文学座などの演劇や、映画の音楽制作も手掛ける。
Puente Celeste『Santiago Vazquez & Puente Celeste』を聴く(Apple Musicはこちら

―現在サンティアゴさんは、「ハンドサイン」による即興演奏を世界中で開催されていますが、もともとこの手法はどのようにして編み出されたのでしょうか。

サンティアゴ:Puente Celesteで5枚のアルバムをリリースし、ブエノスアイレスの音楽シーンでも注目されるようになった中で、バッチ・モリスという、即興演奏を「指揮」によってリアルタイムで生成・編集する「コンダクション」を編み出した音楽家に出会い、ものすごくインスピレーションを受けたんです。手の動きやバトンを用いた「コンダクション」があれば、自分も世界中のミュージシャンと言葉を介さずに即興演奏ができるのではないかと思って。それからは「ハンドサイン」を使った新しいシステム作りに夢中になっていきました。

―それで結成したのが「LA BOMBA DE TIEMPO」というパーカッショングループですね?

サンティアゴ:そうです。ブエノスアイレスに在住する、私が知りうる限りのベストパーカッショニストを全員集め、「ハンドサイン」を用いた即興演奏を行なう大編成のバンドを2006年にスタートさせました。最初は毎週月曜に私の自宅に集まって練習をしていたのですが、ほどなくして友人の所有するオープンスペースを借りて、そこで公開リハーサルをするようになりました。8か月後には、すでに毎週1000人のオーディエンスが集まるようになっていましたね。

芳垣:日本じゃ考えられないよね(笑)。

サンティアゴ・バスケス<br>1972年生まれ、ブエノスアイレス出身。アルゼンチンを代表する打楽器ほか多様な楽器の演奏者、作曲家、指揮者、文化イベントの仕掛け人。ハンドサインにより複数の演奏者による即興演奏を可能とする「Rhythm with Signs」のメソッドを開発。本年4月にブエノスアイレス市から文化功労者と認定された。
サンティアゴ・バスケス
1972年生まれ、ブエノスアイレス出身。アルゼンチンを代表する打楽器ほか多様な楽器の演奏者、作曲家、指揮者、文化イベントの仕掛け人。ハンドサインにより複数の演奏者による即興演奏を可能とする「Rhythm with Signs」のメソッドを開発。本年4月にブエノスアイレス市から文化功労者と認定された。

サンティアゴ:LA BOMBA DE TIEMPOはアルゼンチン中に知られる存在となり、現在も毎週月曜に1500人くらい集まっています。そのうち、「ハンドサイン」を習いたいというミュージシャンが増えてきたので「CERPS」という学校を設立しました。その生徒たちが、今度は自分のグループを立ち上げ演奏するようになって。そのうちの数人が今は「ハンドサイン」を教える立場になっています。アルゼンチン以外の国にもどんどん広がっていき、現在、およそ25か国で「ハンドサイン」を使った音楽活動が行われています。

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イベント情報

『True Colors BEATS ~Uncountable Beats Festival~』

2019年10月22日(火・祝)
会場:東京都 代々木公園野外ステージ・イベント広場
料金:無料
出演:
サンティアゴ・バスケス
ermhoi
xiangyu
岩崎なおみ
大友良英
角銅真実
勝井祐二
コムアイ(水曜日のカンパネラ)
フアナ・モリーナ
ミロ・モージャ
YAKUSHIMA TREASURE(水曜日のカンパネラ×オオルタイチ)
Monaural mini plug
岸野雄一

『True Colors Festival』

「超ダイバーシティ芸術祭」。障害・性・世代・言語・国籍などのあらゆる多様性があふれ、皆が支え合う社会を目指し、ともに力を合わせてつくる芸術祭。1年間を通して多彩なパフォーミングアーツの演目を展開します。アートを通して色々な個性が出会う場に、参加することでより多くの気づきが生まれます。「True Colors Festival」はダイバーシティ&インクルージョンの実現に向けて、新しい価値観が生まれる機会を創出します。

プロフィール

サンティアゴ・バスケス

1972年生まれ、ブエノスアイレス出身。アルゼンチンを代表する打楽器ほか多様な楽器の演奏者、作曲家、指揮者、文化イベントの仕掛け人。ハンド・サインにより複数の演奏者による即興演奏を可能とする「Rhythm with Signs」のメソッドを開発。本年4月にブエノスアイレス市から文化功労者と認定された。

芳垣安洋(よしがき やすひろ)

関西のジャズエリアでキャリアをスタートさせ、モダン・チョキチョキズ、ベツニ・ナンモ・クレズマー・オーケストラ、渋さ知らズなどに参加後上京。渋谷毅、山下洋輔、坂田明、板橋文夫、梅津和時、片山広明、巻上公一、ホッピー神山、大島保克、菊地成孔、オオヤユウスケ、高田漣、ヤドランカ、酒井俊、長谷川きよし、カルメン・マキ、おおたか静流、小島真由実、浜田真理子、カヒミ・カリィ、UA、原田郁子、John Zorn、Bill Laswellなど様々なミュージシャンと共演。現在、ROVO、大友良英ニュー・ジャズ・オーケストラ、南博GO THERE、アルタード・ステイツや自己のバンドVincent Atmicus、Emergency!、Orquesta Nudge!Nudge!等のライブ活動の他、蜷川幸雄や文学座などの演劇や、映画の音楽制作も手掛ける。
メールスジャズフェスを始めとする欧米のジャズや現代音楽のフェスティバルへの出演や、来日するミュージシャンとの共演も多く、海外ではインプロヴァイザーとしての評価も高い。レーベル「Glamorous」を主宰する。

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