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ハルカミライ、躍進の理由。ヒーローすら必要ない領域へ行きたい

ハルカミライ、躍進の理由。ヒーローすら必要ない領域へ行きたい

ハルカミライ『PEAK'D YELLOW』
インタビュー・テキスト
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:嶋本丈士 編集:中田光貴(CINRA.NET編集部)

このまんまだといつまでも「意味のないことがロックンロールなんだぜ」っていう自分に甘えてしまいそうな気がした。

―初めて取材した時にも、「自分にとってのロックバンドとは武士道なんです」「俺は赤レンジャーになりたいんです」と話してくれたのを覚えていて。実際、ぐちゃぐちゃになりながら美しいメロディを花火みたいに打ち上げていくライブは、圧倒的なヒーローとしての自分を示すためのものだったと思うし、ロックバンドの一番衝動的な部分を追求するものだったと思うんですね。だけど今言ってくれた話は、その異様な自己証明の裏には、人に見つけてほしい、人に認めてほしいっていう気持ちも強烈にあるということなんですか。

橋本:そうですね……赤レンジャーになりたくて歌うっていう考えに飽きたところもあるんですよ。その話をした『星屑の歌』(2017年)の頃の俺のエネルギーが、噛みすぎたガムみたいに味がしない状態になってて。これ、本当になんなんだろうなって自分でも思うんですけど。

『星屑の歌』収録曲

―この1年の駆け上がり方、ステージの規模の上がり方、認知度も含めて考えると、欲しいと思っていたヒーローの座が近づくにつれ、渇望をガソリンにすることが難しくなってきたということですかね。

橋本:ああー、それはあります! 欲しいものが手に入ってきた、認められてきたっていう実感があるが故に、闘うべき相手がなくなった感覚に陥ったというか。むしろ「俺にはなにもない」くらいに思っちゃう感じなんですよ。ちゃんと乗り超えて勝ち取ってきたはずなのに、それが「退化」みたいな感覚になっちゃってて。

―人間ってどうしても、仮想敵を作ったり、わかりやすい標的を作ったりすることをパワーにするところがある。でも、それをある程度達成してからが、本来的な自分の闘いになっていきますよね。

橋本:ああ……そうなんでしょうね。だから、このまんまだといつまでも「意味のないことがロックンロールなんだぜ」っていう自分に甘えてしまいそうな気がしたんですよ。もっと自分自身の伝えたいことがあるはずだって自覚的になってきたというか。で、それを探してもがいている途中のような気がするんです。

左から:須藤俊、小松謙太、橋本学、関大地
左から:須藤俊、小松謙太、橋本学、関大地

―足りない、認められない、っていうのはわかりやすくエネルギーになりますよね。ただ、それを原動力にするのにも限界があったりする。それで言うと、今もがきながら見つけようとしている新しいエネルギーはどういうポイントになると思います?

橋本:うーん……「弱さ」ですかね。今までは、自分の弱さを曲にしてこなかったし、音楽の中では暗い部分を出さないようにしてドーンとやってきたんですよ。で、それがハルカミライのイメージにもなってきたと思うんですね。それによって自分も強くなれたと思ってたんですけど……やっぱり元々持ってる弱さが出てるよって周囲に教えてもらったんですよね(笑)。

うちのレーベル(EMI Records)の担当の方にも「もっと学の足跡を曲にベタベタつけていったほうがいいよ」って言われて。それで、初めて「自分の弱さからもなにかを見出そう」と思って書いたのが今回の“これさえあればいい”っていう曲なんです。

―今のお話はとても意外で。たとえば“アストロビスタ”や“宇宙飛行士”、それに“星世界航行曲”も、宇宙に歌の視点を置いて「自分はここにいる」「自分を見つけてほしい」っていう歌だと思うんです。そういう寂しさや弱さがあるからこそ大きなシンガロングで打ち上げていこうとするのが、学くんの歌であり、ハルカミライだと思って聴いてきたんですけど。

橋本:それ、自分としてはショックですね(笑)。でも言われた通りだと思います。俺にとってはネガティブな気持ちがない歌のつもりが、メンバーに「それってお前の暗い部分が出てるよね」って言われることもあったり。……それが本質なんだろうな。でも自分では、暗くならないように書いてたつもりだったんですよ。

―暗い曲だって言いたいわけじゃないんですよ。自分の寂しさや弱さからも逃げないで、それを強さに変えていきたいって思うからこそ大声で歌うのがロックやパンクの根本でもあると思うし。だけど、自分を見つけてくれっていう切なさは、フォークソングとしても美しいメロディに宿っていると思うし。その両輪がハルカミライの音楽になってると思うんです。

橋本:そうですね……俺はここにいるんだよ、みたいな気持ちは結局ずっと拭えないし、そういう寂しさとか弱さをひっくり返せるのがロックバンドだとも思うんですよ。

関大地
関大地
須藤俊
須藤俊

元々持ってた切なさとかをようやく自覚して、新しい自分に出会って戸惑ってるのが今なのかな。

―そうですよね。その自分の弱さとか寂しさって、どういうところから生まれてきてるんですか。

橋本:やっぱり俺は、人のことを見て「あいつはすごいな、俺は全然ダメだな」って気にしちゃうところが昔からあるんですよ。だから「俺を見てくれ」っていう気持ちを歌にしてきたし、圧倒的なヒーローになりたいって思い続けてきた気もするし。

それが弱さだってどこかでは自覚できてたから曲には出てたのかもしれないけど、表に出すのを我慢してた気はするんです。でも、それが前より我慢弱くなってる気がしていて。

―見て見ぬふりしてきた自分が解き放たれちゃってるというか。

橋本:元々持ってた切なさとかをようやく自覚して、新しい自分に出会って戸惑ってるのが今なのかな。それこそ“これさえあればいい”で歌ってることなんですけど、元々は自分が大事だと思うもののハードルがめちゃくちゃ高い人間だと思うんですよ。この目で見てカッコいいと思うものしか信じてこなかった。でも新しい自分が出てきたことで、昔決めてた自分ルールが崩れてきてる瞬間があって。

1日の終わりに「これは言っちゃダメだったな、ダサかったかもな」みたいな反省をすることが増えてきてるんです。たとえばバンドを始めた頃って、なにがカッコいいとされているものなのかも全然わからなかったんですよ。だから逆に、カッコ悪いと思うものをそぎ落とす作業を最初の1年はずっとやってて。そういう初心にもう一度戻ろうとしてるっていう気もするんです。

小松謙太
小松謙太
橋本学
橋本学
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リリース情報

ハルカミライ『PEAK'D YELLOW』
ハルカミライ
『PEAK'D YELLOW』(CD)

2019年11月13日(水)発売
価格:1,100円(税込)

1. PEAK'D YELLOW
2. 君と僕にしか出来ない事がある
3. これさえあればいい

プロフィール

ハルカミライ
ハルカミライ(はるかみらい)

橋本学(Vo)、関大地(Gt,Cho)、須藤俊(Ba,Cho)、小松謙太(Dr,Cho)によって、2012年に結成。年間150本のライブ活動を行いながらデモ音源を制作し、2017年2月初の全国流通音源『センスオブワンダー』を発売。その後もリリースを重ね、2019年1月、1stフルアルバム『永遠の花』を発売。2月より全国ツアー『天国と地獄』をスタートし、全公演ソールドアウトさせる。12月8日には幕張メッセで360°センターステージ、8,888人動員と、彼らにとって史上最大規模となるワンマンライブの大舞台に立つ。

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