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村田沙耶香と松井周が観察する、傲慢で変な「人間」という生き物

村田沙耶香と松井周が観察する、傲慢で変な「人間」という生き物

inseparable『変半身(かわりみ)』
インタビュー・テキスト
宮田文久
撮影:前田立 編集:中田光貴(CINRA.NET編集部)

対談が進んでいる間、ずっと衝撃の連続。同席した編集者は最後に「人間って、いったいなんなんですかね……」とつぶやいた。いつもの風景がゲシュタルト崩壊したような、でも、心地よいめまい。

劇作家で演出家の松井周(サンプル)と小説家の村田沙耶香によるプロジェクト「inseparable」は、共同原案をもとに演劇と小説をそれぞれ発表するプロジェクト。舞台『変半身(かわりみ)』は11月29日から公演が始まり、同名の小説『変半身』も11月27日に刊行予定だ。

神話と伝統のもと、謎めいた祭祀が行われる近未来の架空の離島が共通設定となる、本プロジェクト。人間を好奇心のままに虫メガネで観察するようなふたりの対談は、冒頭から刺激的なトークとなった。グロい? 閲覧注意? いや、そうではない。なぜならこれは、すべて私たちの日常をめぐる人間賛歌だからだ。

独特の儀式のようなものを空想するとしたら、島がいいんじゃないかという感覚があったかもしれません。(松井)

―2016年の対談で意気投合したのがきっかけとなって「inseparable」が始まったということですが、なぜ「島」が舞台になったんでしょうか?

松井:対談のときに、お祭りや儀式って面白いですよね、という話になったんですね。自分たちで、偽のお祭りや儀式をつくってみるのはどうだろう、って。そこで「島に行ってみたら?」という話が出て、国内のある島に旅行に向かったんです。

村田さんは短編『生命式』で(2019年10月、同名の短編集として河出書房新社から刊行)、死んだ人間の肉をカシューナッツ炒めにして食べて、精力をつけてみんながまぐわうという新しい葬式を書いていて。自然とたわむれるというか、独特の儀式のようなものを空想するとしたら、島がいいんじゃないかという感覚があったかもしれません。

村田:突然、「とりあえず取材旅行を」と言われて(笑)。でも、夜の食事のときにはもう、「架空の島でいきましょうか」という話になっていましたよね。慌てて部屋にノートを取りに行った記憶があります。もしかしたら、島の中をいろいろと想像しつつ歩いていたのが大きかったのかもしれません。お土産を選ぶときに、名産品を見たり、ゆるキャラみたいなものを見かけたりしながら。

松井:キャラもそうですし、観光スポットのネーミングや地名もそうですけど、島全体にいろいろなラベリングがされた跡を一緒に見ていきながら、「こういうのって、どうやって決まっていくんだろうね?」って。

左から:松井周、村田沙耶香
左から:松井周、村田沙耶香

―2018年1月には城崎で滞在制作&リーディング上演、その後に国内外の島々をリサーチ。最近も各地でおふたりでトーク、松井さんはワークショップも行うなど、常に新たな刺激を入れながら作業されていますね。

村田:チームのLINEグループがあって、いろんなニュースを「これ、どう?」って投げ合ってもいるんです。先日、私が夜に投稿したのは、海外の、動物愛護主義であるはずの男性が、犬に性的暴行をして逮捕されたニュース。犬のことを考えると苦しくて。

松井:それを僕は朝、起き抜けで見るという……(笑)。

村田:ほかにも、作家の大先輩である新井素子さんが、ぬいぐるみを4000匹も家族として大事にしていらして、ご自身の死後にどうするのかをきちんと考えている、という感動的な記事ですとか。

私、今日は少し緊張しながら喋っているんですが、これって私のものじゃなくて、ある編集者さんの喋り方なんですよ。(村田)

―舞台版の『変半身』は、島で発掘される化石由来のDNA「レアゲノム」が、ヒトや動物の遺伝子組換えに必要なものとして注目されているという設定ですね。島の奇祭で亡くなったはずの弟が蘇り、とある世界観を島民に説くことで、混乱が広がっていきます。

松井:これから先、人間が人間ではないものと交わって共生するということが、あまりグロテスクだとは思っていないところがあるんです。科学には両面があって、倫理や道徳観などが壊されてしまう面と、人間中心に考えていたフレームが外されることで自由が生じる、という面がある。その両方がせめぎ合っている世界を描きたいので、科学と宗教というテーマが自分の特徴として出てくるんですよね。

村田:それに、あちこち旅をして思ったのが、並んでいるお土産も含めて、「それっぽい」ものが好きなんだなあ、っていうことなんです。さも「それっぽい」んだけど、本当は嘘だ、とか。ふたりとも、そういうものにすごく反応しちゃうんですよね。でも、決して馬鹿にしているわけではなくて、そういうことをする人間が愛おしいんです。

松井:わかります。僕もカメラのことを「相棒」っていう人がいると、ドキンとする(笑)。

村田:いつ自分にインストールされたのかわからない心理や行動もありますよね。

―村田さんは『コンビニ人間』(文藝春秋より刊行。同作で『第155回芥川龍之介賞』を受賞。)で、他人の口調が移った人物を描いていますよね。「こうして伝染し合いながら、私たちは人間であることを保ち続けている」と。

村田:はい。私、今日は少し緊張しながら喋っているんですが、これって私のものじゃなくて、ある編集者さんの喋り方なんですよ。

村田沙耶香(むらた さやか)<br>1979年、千葉県生れ。玉川大学文学部芸術文化学科卒。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)受賞。2009年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞、2016年『コンビニ人間』で芥川賞受賞。累計発行部数100万部を突破した。著書に『マウス』『タダイマトビラ』『地球星人』『殺人出産』『消滅世界』『生命式』などがある。2019年11月には『変半身』を筑摩書房より発表予定。
村田沙耶香(むらた さやか)
1979年、千葉県生れ。玉川大学文学部芸術文化学科卒。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)受賞。2009年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞、2016年『コンビニ人間』で芥川賞受賞。累計発行部数100万部を突破した。著書に『マウス』『タダイマトビラ』『地球星人』『殺人出産』『消滅世界』『生命式』などがある。2019年11月には『変半身』を筑摩書房より発表予定。
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イベント情報

『変半身(かわりみ)』
『変半身(かわりみ)』

原案:村田沙耶香 松井周
脚本・演出:松井周
出演:
金子岳憲
三村和敬
大鶴美仁音
日髙啓介
能島瑞穂
王宏元
安蘭けい

東京公演

2019年11月29日(金)~12月11日(水)全15公演
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シアターイースト
料金:
前売 一般4,200円 学生3,000円 高校生以下1,000円
当日 一般4,500円 学生3,000円 高校生以下1,000円

三重公演

2019年12月14日(土)、12月15日(日)全3公演
会場:三重県 津 三重県文化会館 小ホール
料金:一般3,000円 U-25券1,500円

京都公演

2019年12月18日(水)、12月19日(木)全3公演
会場:京都府 ロームシアター京都 ノースホール
料金:一般3,500円 25歳以下2,000円 18歳以下1,000円

兵庫公演

2019年12月21日(土)、12月22日(日)全2公演
会場:兵庫県 神戸文化ホール 中ホール舞台上
料金:一般3,500円 U-25券2,000円 U-18券1,000円

書籍情報

『変半身(かわりみ)』
村田沙耶香
『変半身』

2019年11月27日(水)発売
発行:筑摩書房
価格:1,485円(税込)

プロフィール

村田沙耶香(むらた さやか)

1979年、千葉県生れ。玉川大学文学部芸術文化学科卒。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)受賞。2009年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞、2016年『コンビニ人間』で芥川賞受賞。累計発行部数100万部を突破した。著書に『マウス』『タダイマトビラ』『地球星人』『殺人出産』『消滅世界』『生命式』などがある。2019年11月には『変半身』を筑摩書房より発表予定。

松井周(まつい しゅう)

1972年東京都出身。1996年劇団「青年団」に俳優として入団後、作家や演出家としても活動を開始する。2007年『カロリーの消費』より劇団「サンプル」を旗揚げ、青年団から独立。バラバラの自分だけの地図を持って徘徊する人間たちを描きながら現実と虚構、モノとヒト、男性と女性、俳優と観客、などあらゆる関係の境界線を疑い、踏み越え、混ぜ合わせることを試みている。2011年『自慢の息子』で第55回岸田國士戯曲賞を受賞。2016年『離陸』で2016Kuandu ArtsFestival(台湾)に、2018年『自慢の息子』でフェスティバル・ドートンヌ・パリ(仏)に参加した。

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