
The Songbardsが尊ぶ、伝統と革新。往年のロックと新技術を結ぶ
The Songbards『CHOOSE LIFE』- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:池野詩織 編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
現実を認めた上で「一緒に戦っていこう」というメッセージが、今の人たちには必要なんじゃないかな。(松原)
―『CHOOSE LIFE』というタイトルは、どのように出てきたものなのでしょうか?
松原:僕は“悪魔のささやき”が好きで。この曲は(上野)皓平が書いたんですけど、特に<生まれたが最後>という歌詞が好きなんです。アルバムタイトルは曲を全部レコーディングしてから付けたんですけど、この一行の存在は大きかったと思っていて。
The Songbards“悪魔のささやき”を聴く(Apple Musicはこちら)
―というと?
松原:音楽を作るのも、生きていくのも、最初にスタートがあって、それが「生まれた」ということ。それって、「産んでくれてありがとう」みたいに、ポジティブに捉える人が多いと思うんです。
もちろん、僕らにもその気持ちはありますけど、生きていく中で感じる「苦しみ」というのも、生まれたことによって感じることじゃないですか? ただ、<生まれたが最後>って完全にネガティブなわけではなく、それを認めることで戦っていけるということだなと思って。
―なるほど。
松原:『CHOOSE LIFE』は直訳すると「人生を選べ」で、ちょっと強いイメージがあるかもしれないけどそうではなくて。「生まれた」という事実があって、それは最初から決まってるんだから、もっと気楽に考えようよ、というニュアンスなんです。
「きっと上手くいくよ」とか「大丈夫」じゃなくて、現実を認めた上で、「じゃあ、次どうするかを一緒に考えよう」とか「一緒に戦っていこう」というメッセージが、今の人たちには必要なんじゃないかなと思う。
―ちなみに、“Othello”はシェイクスピアの『オセロ』がモチーフですか?
上野:そうですね。僕はこれまで落ち込んだときにそこから這い上がれるようなメッセージや思想を曲に詰め込んで、何回も反芻できるようにしてきたし、それが曲を作る意味のひとつだったんです。
でも、そうしていると、自分が作りたいと思った音楽に合うメッセージがないと、なかなか書けなかったりして。それで今回、シェイクスピアの『オセロ』の主人公になりきって歌ってみようと思ったんですよね。
The Songbards“Othello”を聴く(Apple Musicはこちら)
―じゃあ、『CHOOSE LIFE』というタイトル自体、シェイクスピアの「人生は選択の連続である」という言葉からきてる?
上野:……僕その言葉知らなかったです(笑)。
松原:僕も(笑)。
―偶然なんだ(笑)。でも、さっきの松原くんの話を聞いてしっくりきたというか。シェイクスピアって悲劇作家として有名なわけだけど、「人間は生まれながらに悲劇的な側面を持ってるから、いかにそれを肯定していくか」を描いてると思うんですよね。それって<生まれたが最後>の話と同じことだなって。
松原:「生まれながらに悲劇的」というのは、僕ら四人の思想に近い気がします。レコーディングが終わって、『オセロ』を読んでみたんですけど、ただ悲劇で悲しいだけじゃなくて、人間としての魅力とか美しさを感じて、「人間ってこういうところあるけど、でも面白いな」と思って。
人間の本質って昔から変わってなくて、それが希望でもあると思うんです。四人ともがそういう考え方で、みんな「人生捨てたもんじゃない」って思ってるんじゃないかな。
第2部:プロデューサー・浅田信一と語る、「より多くの人に聴いてもらうため」のアレンジ

浅田信一(あさだ しんいち)
1995年、バンド「SMILE」のボーカリスト兼ソングライターとして、ソニーミュージックよりメジャーデビュー。現在は、ソロアーティスト活動や作品提供の他、音楽プロデューサーとしても、新人アーティストからベテランまで幅広く手掛けている。
―ここからはリズム隊の柴田くんと岩田くん、そして、リード曲“マジック”と“オデッセイ”をプロデュースした浅田さんにも加わっていただきます。まずは、浅田さんから見たThe Songbardsの魅力について話していただけますか?
浅田:今どきの若いバンドにしては珍しく、古い音楽をちゃんと理解しているなって、曲を聴いてすぐに思いました。世代の差はあるんですけど、根底にある好きな音楽に関しては共通項が多いんだろうなって。要するに、ブリティッシュロック的なサウンドと、J-POP的なよさが感じられたんです。
僕もずっとJ-POP畑でやってる人間だから、マニアックなだけじゃなく、ポピュラリティのあるものを目指す方がわかりやすいし、せっかく一緒にやらせてもらえるなら、そういう側面をちゃんと広げてあげられたらなって思っていました。
柴田(Dr,Cho):アレンジをしてくださる際も意図が見えやすくて、「なるほど」と思うことが多かったです。これまでの僕たちは「曲がよりよくなるにはどうしたらいいか」をずっと考えてきて、今もそれはマストですけど、それに加えて、「より多くの人に聴いてもらうためにはどうしたらいいか」を一緒に考えてくださって、吸収できる部分が多かったですね。
浅田:実際一緒にレコーディングしてみると、ベースの音作りでも、「なんとなくこんな感じ」とかではなくて、具体的な帯域の話とか、普通エンジニアさんじゃないとわからないような話をしてて、「本当は40歳くらいなんじゃないか?」みたいな瞬間が結構あって(笑)。なので、理論的な話をするよりも、「感覚的なこともやろうよ」って言うのが、僕の役目でしたね。
―普通は逆ですよね(笑)。
浅田:もちろん、「理論もいいけど、それだけじゃ伝わらない」っていうのは、彼らも十分わかってるとは思うんです。
浅田:ただ、ライブを観ていても思うんですけど……上野くんとかせっかくルックスいいんだし、女の子にモテそうだから、もっと色気が出たら、もっとすごいバンドになるんじゃないかなって思ったりして(笑)。
上野:もともと「出家したい」とか言ってたんで、色気は捨ててきちゃいましたね……もう一度拾って来れたらな(笑)。
リリース情報

- The Songbards
『CHOOSE LIFE』初回限定盤(CD+DVD) -
2019年11月20日(水)発売
価格:3,630円(税込)
VIZL-1664
※3面紙ジャケット仕様[CD]
1. ストリートアレイ
2. 悪魔のささやき
3. マジック
4. オデッセイ
5. Inner Lights
6. Life is But a Dream
7. Othello
8. グッドラック・ドリー
9. 青の旅
10. 春の香りに包まれて
11. 風の吹くままに
12. この部屋で(ボーナストラック)[DVD]
最新ミュージックビデオ“マジック”を含む、結成以降の全MV6作品(“雨に唄えば”“太陽の憂鬱”“春の香りに包まれて”“Time or Money?”“Inner Lights”)や、メンバーインタビュー、レコーディングのメイキング映像を含むスペシャルプログラム『BARDS LIFE ~The Story of The Songbards Volume 1~』を収録

- The Songbards
『CHOOSE LIFE』通常盤(CD) -
2019年11月20日(水)発売
価格:2,970円(税抜)
VICL-652631. ストリートアレイ
2. 悪魔のささやき
3. マジック
4. オデッセイ
5. Inner Lights
6. Life is But a Dream
7. Othello
8. グッドラック・ドリー
9. 青の旅
10. 春の香りに包まれて
11. 風の吹くままに
イベント情報
- 『CHOOSE LIFE Release Tour』
-
2020年1月23日(木)
会場:兵庫県 神戸 VARIT.
出演:
The Songbards
KOTORI
おいしくるメロンパン2020年1月25日(土)
会場:広島県 Back Beat
出演:
The Songbards
2
空きっ腹に酒2020年1月26日(日)
会場:熊本県 熊本B9.V2
出演:
The Songbards
2
空きっ腹に酒2020年1月28日(火)
会場:香川県 高松 TOONICE
出演:
The Songbards
Brian the Sun
Slimcat2020年2月1日(土)
会場:宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
出演:
The Songbards
The Cheserasera
No Buses2020年2月2日(日)
会場:栃木県 HEAVEN'S ROCK 宇都宮2/3(VJ-4)
出演:
The Songbards
Helsinki Lambda Club
ズーカラデル2020年2月9日(日)
会場:京都府 GROWLY
出演:
The Songbards
DENIMS
Easycome2020年2月11日(火・祝)
会場:石川県 金沢 vanvanV4
出演:
The Songbards
DENIMS
MONO NO AWARE
- 『CHOOSE LIFE Release One Man Tour』
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2020年3月6日(金)
会場:岡山県 MO:GLA2020年3月7日(土)
会場:福岡県 DRUM SON2020年3月14日(土)
会場:東京都 渋谷 CLUB QUATTRO2020年3月20日(金・祝)
会場:愛知県 名古屋 APOLLO BASE2020年3月28日(土)
会場:大阪府 Shangri-La
プロフィール

- The Songbards(ざ そんぐばーず)
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2017年3月より地元・神戸を中心に活動を開始。上野皓平(Vo,Gt)、松原有志(Gt,Vo)、柴田淳史(Ba,Cho)、岩田栄秀(Dr,Cho)の4人組。バンド名は、「Songbird=さえずる鳥」と「bard(吟遊詩人)」のダブルミーニング。UKロックに影響を受けたツインギター&ボーカルと、息の合ったコーラスワークが魅力。結成後間もなく、『RO JACK 2017』『出れんのサマソニ』『COMIN'KOBE17』など大型フェスオーディションを総なめにした他、4時間ぶっ続けでカバー楽曲を演奏するバーイベントを約2年間続け、リバプールなどイギリスでのライブを12本経験するなど、精力的に活動している。
- 浅田信一(あさだ しんいち)
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1995年、バンド「SMILE」のボーカリスト兼ソングライターとして、ソニーミュージックよりメジャーデビュー。バンド解散後は、ソロアーティスト活動や作品提供の他、音楽プロデューサーとしても、新人アーティストからベテランまで幅広く手掛けている。2019年8月にはアルバムリリース、生誕50周年を記念して渋谷クラブクアトロにてライブを行うなど、2020年のデビュー25周年に向けて益々アーティスト活動に力が入る。
- 土田陽介(つちだ ようすけ)
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京都生まれ。DYGL、NOT WONKなどのジャケットデザイン~アートディレクションを中心にグラフィック、ウェブなど多数手がけている。また、ロックバンド「WOOMAN(ウーマン)」としても活動中。今年1月にフルアルバム『A NAME』をKiliKiliVillaよりリリースしている。