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w.o.d.が叫ぶ、時代の閉塞感 BOY奥冨と90年代カルチャーを語る

w.o.d.が叫ぶ、時代の閉塞感 BOY奥冨と90年代カルチャーを語る

w.o.d.『1994』
インタビュー・テキスト
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:上保昂大 編集・リードテキスト:山元翔一(CINRA.NET編集部)

ときは1994年。「グランジ」や「オルタナティブ」と呼ばれる音楽の絶対的象徴・Nirvanaのフロントマン、カート・コバーンが自らの手でその生涯に幕を降ろした。27歳だった。その死から四半世紀以上経てもなお、彼の音楽性やファッションセンス、あるいはその思想や価値観が若者たちを虜にし続けているということは、ここであえて書くまでもないだろう。

本稿の主役、w.o.d.のサイトウタクヤは奇しくも1994年に生まれ、その思春期にNirvanaをはじめとする1990年代のオルタナティブロックの洗礼を受ける。そしてw.o.d.は、昨年『1994』というアルバムを作り上げた。音楽面に限らず、「オルタナティブ」という言葉に内包される価値観や精神性は、サイトウ自身に深い影響をもたらしたという。当時を知らない彼にとって、それらの音楽たちはなぜ特別たりえたのか? その理由を探るべく、同じく1990年代のカルチャーに憧れと葛藤を抱く奥冨直人(BOY)を迎えた対談を実施した。

「オルタナティブ」をひとつのキーワードに、話は音楽やファッションにはじまり、その震源地としての「ストリート」について、そして同調圧力と排他が蔓延する現代の空気へと展開。対話が進むごとに、ジャンルや世代といったラベルは剥がれていった。以下のテキストは単なる1990年代のカルチャー談義ではなく、現代を生きる若者たちのリアルの在り処と生き方の話だ。サイトウがギターに乗せて叫ぶ、痛みや満たされなさの奥にあるものについて、奥冨との対話から探っていった。

左から:サイトウタクヤ(w.o.d.)、奥冨直人(BOY)
左から:サイトウタクヤ(w.o.d.)、奥冨直人(BOY)

「w.o.d.の音楽は自分たちの好きなものがそのまま伝わってくるんですけど、それを1994年生まれがやってることが新鮮で」(奥冨)

―まずは、w.o.d.が昨年9月にリリースされた『1994』と、それ以降について伺えればと。サイトウさんとしては、どういう作品ができたと感じられていますか。

サイトウ:俺、1994って生まれ年で、いま25歳なんですけど、生まれてから25歳くらいまでって人生で一番青春といえる部分だと思うんです。生々しさとか初期衝動みたいな青い感じをまとめることができたなと。

サイトウ:それに、切り替わりのアルバムにもなったというか。『1994』でこれまでを美しい思い出にできたことで、よりいろいろなことに挑戦できるかなって気がしています。

―青春にケリをつけられた感じ?

サイトウ:そうですね。

サイトウタクヤ<br>神戸発3ピースバンド、w.o.d.(ダブリューオーディー)のボーカルギター。新世代グランジスターと称される爆音サウンドが各地ライブハウスで話題となり、『VIVA LA ROCK』『SATANIC CARNIVAL』『RUSH BALL』など大型フェスへも多数参加。シティーポップ以降メロウなサウンドが主流の邦楽バンドシーンのなか、ラウドなオルタナロックを鳴らせる稀有な存在としてミュージシャンやメディアからの注目度も高い。2019年9月、2ndアルバム『1994』をリリースした。
サイトウタクヤ
神戸発3ピースバンド、w.o.d.(ダブリューオーディー)のボーカルギター。新世代グランジスターと称される爆音サウンドが各地ライブハウスで話題となり、『VIVA LA ROCK』『SATANIC CARNIVAL』『RUSH BALL』など大型フェスへも多数参加。シティーポップ以降メロウなサウンドが主流の邦楽バンドシーンのなか、ラウドなオルタナロックを鳴らせる稀有な存在としてミュージシャンやメディアからの注目度も高い。2019年9月、2ndアルバム『1994』をリリースした。

―トミーさん(奥冨)は、『1994』に対してどういう印象を持ちましたか。

奥冨:1994年って、好きな海外のバンドがデビューしたり、リリースがあったりっていう自分にとって印象的な年で。その頃のストレートなロックは自分の原点で、ずっと好きなんです。自分自身がそこからしばらく離れていたこともあるんですが、ここまでストレートな印象を受ける日本のバンドとの出会いも多くなくて。

こういうデカい音で、それぞれの3人のパートがバーンとくる感じは久しぶりでした。w.o.d.の音楽は自分たちの好きなものがそのまま伝わってくるんですけど、それを1994年生まれがやってることが新鮮で。僕よりちょっと上くらいの人が影響を受けた音像って感じ。それをw.o.d.は、時代が変わってアップデートされた形で鳴らしているんだなって感じましたね。

w.o.d.『1994』を聴く(Apple Musicはこちら

―実際に1990年代のポストパンクやグランジの影響がw.o.d.の音楽には色濃いと思うし、1990年代の音楽・ファッションカルチャーへのシンパシーが今日の対談のキーワードになると思っているんですけど。サイトウさんご自身は、トミーさんと対談したいと思ったのはどうしてだったんですか。

サイトウ:俺らの音楽はよく「グランジ」って言われるんですね。実際、ファッションも含め1990年代のカルチャーは好きなんですけど、やっぱり「グランジ」って音楽だけの話ではないじゃないですか。

もちろん音楽ありきで大好きなカルチャーなんですけど、その精神性にも惹かれてるんです。カート・コバーン(Nirvana)が憧れとしてずっと存在していて、俺もすごく服が好きだし、そこも含めて精神性が表れるものだと思っているんですよ。だから自分でもダメージジーンズにパッチワークみたいなのを貼ってたりして、服に意味を持たせていく。

左から:奥冨直人、サイトウタクヤ

サイトウ:そういう意味で、「BOY」をはじめとしてトミーさんが発信されているファッションとか、精神性の話ができたらいいなと思いました。俺らが憧れた音楽や時代、ファッションを、トミーさんはどういうふうに捉えてるのかなって。

―トミーさんにとって、1990年代ってどういう時代ですか?

奥冨:1990年代は小学校高学年の頃に終わったから、僕にとって永遠に憧れで。記憶はハッキリしてないんですけど、1994~96年くらいからかなりテレビを見てて、ポップチャートをチェックして、曜日毎にあった音楽番組を見ていました。当時から、ロックバンドもJ-POPも聴いてましたね。

ファッションも、やっぱり裏原以降で随分いろんなことが変わったし。もうダントツで影響を受けた時代です。でもかといって、同じことがしたいわけではないんですよね。10代の頃は特に、1990年代に対する憧れと葛藤が強くありました。

奥冨直人(おくとみ なおと)<br>平成元年・埼玉県生まれ。渋谷にあるFASHION & MUSICをコンセプトにしたショップ「BOY」のオーナー。DJ活動も地域・ジャンル問わず精力的に行う。インディーシーンに詳しいことで知られ、TOMMYの愛称で親しまれている。
奥冨直人(おくとみ なおと)
平成元年・埼玉県生まれ。渋谷にあるFASHION & MUSICをコンセプトにしたショップ「BOY」のオーナー。DJ活動も地域・ジャンル問わず精力的に行う。インディーシーンに詳しいことで知られ、TOMMYの愛称で親しまれている。

―1990年代という時代のどういうところに憧れを感じるんですかね?

奥冨:なんですかねぇ? 何が起きてもおかしくない一触即発感っていうか……なんかもう、目ぇ醒める感じがありますよね。その時いた人の言葉でも行動でも。それに近いものは、w.o.d.にも感じますよ。これ、なんなのか言葉では上手く言えないんですけどね。

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リリース情報

w.o.d.『1994』
w.o.d.
『1994』(CD)

2019年9月11日(水)発売
価格:2,200円(税込)
MMNR-006

1. 0
2. QUADROPHENIA
3. Mayday
4. ハロウ
5. サニー
6. THE CHAIR
7. HOAX
8. セプテンバーシンガーズ
9. 1994

イベント情報

『w.o.d. presents “バック・トゥー・ザ・フューチャーII”』

2020年2月1日(土)
会場:東京都 代官山UNIT

プロフィール

w.o.d.
w.o.d.(だぶりゅー おー でぃー)

サイトウタクヤ(Vo,Gt)、Ken Mackay(Ba)、中島元良(Dr)からなる神戸発3ピースバンド、w.o.d.(ダブリューオーディー)。新世代グランジスターと称される爆音サウンドが各地ライブハウスで話題となり、「VIVA LA ROCK」「SATANIC CARNIVAL」「RUSH BALL」など大型フェスへも多数参加。シティポップ以降メロウなサウンドが主流の邦楽バンドシーンの中、ラウドなオルタナロックを鳴らせる稀有な存在としてミュージシャンやメディアからの注目度も高い。2019年9月、2ndアルバム『1994』をリリースした。

奥冨直人(おくとみ なおと)

平成元年・埼玉県生まれ。渋谷にあるFASHION&MUSICをテーマにしたカルチャーショップ『BOY』のオーナー。DJ活動も地域・ジャンル問わず精力的に行う。インディーシーンに詳しいことで知られ、TOMMYの愛称で親しまれている。

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