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わからない自分を疑い反芻する。étéが語る、詩が生まれる瞬間

わからない自分を疑い反芻する。étéが語る、詩が生まれる瞬間

été『episode』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:馬込将充 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

東京在住の3ピースバンド「été(エテ)」が、3rdミニアルバム『episode』をリリースした。確かなプレイヤビリティーと構築力にもとづく、激しく饒舌なバンドアンサンブル、そしてそこに乗る、圧倒的な量の言葉、言葉、言葉……。étéの音楽をなにより特別なものにしているのは、その異常なほどの量の言葉たち、そしてそれを紡いでいるのが、ギターボーカルのオキタユウキだ。不可思議/wonderboyやTHA BLUE HERBに影響を受けてきたという彼の紡ぐ研ぎ澄まされた言葉、その1語1語、一節一節が持つフラジャイルな輝きが曲の中で連鎖し合い、影響を与え合うことによって、この音楽に、他にはない内省の深さと豊かさを与えている。

新作『episode』は、「わからない、わからない、わからない……」と同じ場所を歩き続けているような「状態」そのものを閉じ込めることに成功した作品といえるだろう。人は「わかったこと」を書いたり歌ったりして発表するのではない。「わからない」から書いたり歌ったりするのだ。この音楽は、他人を自分と同じ気持ちに扇動してやろうなどとは思っていない。他者とのディスコミュニケーション、社会と個人の不和を前提として、その軋轢から生まれる「実感」と「問い」を、ただひたすらに刻み込んでいる。人を丸め込むための言葉は持っていないが、自分を知ろうとするための言葉は数多に持っている。こういう表現こそが世界に問えるものはあるのだと強く思う。

オキタユウキ単独インタビューにて、その言葉が、詩が生まれる源泉に迫った。

「伝える」ということに関しては、ほとんど諦めているといっていいと思います。

―étéの表現は、バンドサウンドとポエトリーリーディングの融合が大きな特徴になっていますが、このスタイルはどのようにして培われ、自分たちのものとなっていったのでしょうか?

オキタ:元々、僕はヒップホップが好きだったので、歌を歌うこととポエトリーリーディングをすることを、あまり区切って考えていなかったんですよ。自分が曲を作るとなったとき、昔から自然と、ポエトリーが入り込んできていたんですよね。

オキタユウキ(été)<br>1995年5月生まれ。東京都出身のオルタナティブロックバンド、étéのギターボーカル。2015年1月にバンドを結成。当初はギターロックを軸としていたが、次第にポストロックやハードコアの要素にポエトリーリーディングの手法を融合させたスタイルへと変化。2018年に『404 AUDITION』で「グランプリ」を獲得し、初の全国流通盤となるミニアルバム『Burden』を発表。2019年3月に1stフルアルバム『Apathy』を、3rdミニアルバム2020年1月に『episode』をリリースした。
オキタユウキ(été)
1995年5月生まれ。東京都出身のオルタナティブロックバンド、étéのギターボーカル。2015年1月にバンドを結成。当初はギターロックを軸としていたが、次第にポストロックやハードコアの要素にポエトリーリーディングの手法を融合させたスタイルへと変化。2018年に『404 AUDITION』で「グランプリ」を獲得し、初の全国流通盤となるミニアルバム『Burden』を発表。2019年3月に1stフルアルバム『Apathy』を、3rdミニアルバム2020年1月に『episode』をリリースした。

―ヒップホップでは、どんな人たちがお好きだったんですか?

オキタ:LOW HIGH WHO? PRODUCTIONの不可思議/wonderboyとか、THA BLUE HARBをよく聴いていました。不可思議/wonderboyって、いっていることがかっこよくはないんですよね。ただひたすら、自分の焦りのようなものをつらつらと喋っている感じなんだけど、そこから希望を見出そうとしているところに惹かれました。それに対して、THA BLUE HARBは真逆というか、ひたすらかっこいい。「自分対その他」っていう構図のうえで、「自分」をひたすら説いていく。そこに惹かれましたね。トラックもかっこいいし。

不可思議/wonderboy“Pellicule”を聴く(Spotifyを開く

THA BLUE HARB『TOTAL』を聴く(Spotifyを開く

―ラッパーになろうとは思わなかったんですか?

オキタ:音楽の入りはバンドだったんですよ。生まれて初めて買ったアルバムはBUMP OF CHICKENの『jupiter』(2002年)だったし、僕らが小学生くらいの頃からYouTubeが普及し始めたので、そこでthe band apartの映像を見たり、ネットでインディーズバンドを掘っていったりして。もう少し時間が経ったら、ハヌマーンのようなJ-ROCKを聴いていた時期もあったし。あと、僕はtoeが大好きなんですけど、彼らにどハマリしたきっかけもネットでした。そういった音楽と並行してメタルコアを聴いていたり、幅広く聴いていく中のひとつに、ヒップホップがあった感じだったんですよね。

BUMP OF CHICKEN『jupiter』を聴く(Spotifyを開く

―ネットとともに育った世代だからこその雑多な聴き方ができていたんですね。

オキタ:なので、バンドをやり始めた最初の頃は、ポエトリーをやることは考えていなかったんですよ。でも、バンドを続けていくうちに、最初の全国流通盤に入っている“眠れる街の中で”という曲ができたんです。この曲は、ポエトリーのリリックが先にできたことで生まれたんですけど、この“眠れる街の中で”ができた事によって、これだったら、バンドでポエトリーをやってもハマるなと思ったんです。

été"眠れる街の中で"MV

―そこから一貫して、ポエトリーがバンドの大きな軸になっていったのは、なにが大きかったのだと思いますか?

オキタ:そもそも僕は、言葉を選ぶタイプなんですよ。誤解を与えたくないというか、自分の気持ちを伝えるために一番適切な言葉を使いたいっていう気持ちが常にあるし、そのために、歌よりもポエトリーリーディングというスタイルが合っていた、という部分はあると思います。

―「言葉を選ぶ」というのは、「伝わってほしい」という欲求からですか?

オキタ:伝わらないとイヤ、というわけではないんです。むしろ、話す、書く……そういうことをやっていても、自分の思っていることが100パーセント伝わることはないんだと僕は思っていて。基本的に人間関係って上手くいかないものだと思っているし、他者とはわかり合えないと思っている。そのくらい、「伝える」ということに関しては、ほとんど諦めているといっていいと思います。

ただ、自分の思ったことを、自分の思った通りに言葉にできていないとイヤなんです。人前で歌うっていうことは、言葉に身体性を伴うんですよね。言葉が、自分自身に肉薄していくっていう感覚がすごくある。だからこそ、自分が読んだときに、自分が納得できる言葉を書いていたいという気持ちが強くて。

オキタユウキ

オキタ:なので、僕にとって「書く」という行為は、自分を納得させたい、自分が頷けるかどうか、そこのみに執着しながらやっている感じなんですよね。

―今、ステージに立って言葉を紡いでいるのは、どういう感覚を持つものなのでしょうか。自分を納得させるための言葉を紡ぎながら、でも目の前にはそれを聴いている他者がいるわけですよね。

オキタ:明確な立場に立つというより、常に示唆的でありたいんです。自分の考えや思っていることが伝わるとは思っていないけど、ただ、聴いている人が僕の本音に触れて、今まで考えていなかったことを考えるようになってくれたら面白いのにな、と思っています。

なので、僕は今、歌詞に自分の内面を描きながら、他者への違和感や、社会に対してなんとなく感じていることを書いていますけど、聴いている人に対して「こう思ってくれ」と思っているわけではないんですよね。ただ、「みんな、もっと疑ってもいいんじゃない?」と思いながら言葉を発している感じというか。

été『I am』を聴く(Spotifyを開く

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リリース情報

『episode』(CD)
été
『episode』(CD)

2020年1月15日(水)発売
価格:1,650円(税込)
CMI-0075

1. Bipolar
2. skepticism
3. High Hopes
4. Over
5. 何者でもない

イベント情報

été
『été TOUR 2020 “Over”』

2020年3月14日(土)
会場:東京都 下北沢 MOSAiC

2020年3月21日(土)
会場:長野県 松本 ALECX

2020年3月22日(日)
会場:新潟県 CLUB RIVERST

2020年3月28日(土)
会場:福井県 CHOP

2020年4月4日(土)
会場:北海道 札幌 COLONY

2020年4月11日(土)
会場:愛知県 名古屋 GROW

2020年4月12日(日)
会場:京都府 GROWLY

2020年4月19日(日)
会場:千葉県 LOOK

2020年4月20日(月)
会場:静岡県 UMBER

2020年4月26日(日)
会場:神奈川県 YOKOHAMA B.B.STREET

2020年4月28日(火)
会場:香川県 高松 DIME

2020年4月29日(水・祝)
会場:兵庫県 神戸 ART HOUSE

2020年5月1日(金)
会場:山口県 LIVE rise SHUNAN

2020年5月2日(土)
会場:岡山県 CRAZYMAMA 2ndRoom

2020年5月5日(火・祝)
会場:宮城県 仙台 enn3rd

2020年5月6日(水・祝)
会場:青森県 Quarter

2020年5月9日(土)
会場:埼玉県 HEAVEN’S ROCK 熊谷 VJ-1

2020年5月10日(日)
会場:大阪府 北堀江 club Vijon

2020年5月11日(月)
会場:広島県 CAVE-BE

2020年5月16日(土)
会場:福岡県 Queblick

2020年5月22日(金)
会場:茨城県 club SONIC mito

2020年5月23日(土)
会場:群馬県 前橋 DYVER

2020年6月14日(日)
会場:東京都 Shibuya Milky way

料金:各公演 前売2,500円 当日3,000円(共にドリンク別)

プロフィール

オキタユウキ

東京都出身のオルタナティブロックバンド、étéのギター、ボーカル。2015年1月にバンドを結成。当初はギターロックを軸としていたが、次第にポストロックやハードコアの要素にポエトリーリーディングの手法を融合させたスタイルへと変化。2018年に『404 AUDITION』で「グランプリ」を獲得し、初の全国流通盤となるミニアルバム『Burden』を発表。2019年3月に1stフルアルバム『Apathy』を、2020年1月に『episode』をリリースした。

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