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ルミネ広告から小説が誕生。尾形真理子がすくい取る「世の気分」

ルミネ広告から小説が誕生。尾形真理子がすくい取る「世の気分」

ルミネ『One piece of a woman』
インタビュー・テキスト
松井友里
編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

ルミネの広告は一瞬の強さというよりも、滞空時間の長さを意識しています。

―接触するメディアやコンテンツの数が増えていて、可処分時間が奪い合いになるなかで、広告に限らずさまざまな場面で扇情的だったり、瞬発的に強さを持つ言葉を見かけることが多いなと思うのですが、そうしたなかで「止まない」という言葉に込めた希望のように、行間を感じ取ってもらうような表現を見てもらうことに難しさを感じることはないですか。

尾形:広告って、基本的には気づいてもらえなかったら0点です。無風が一番悪い。だからクリエイティブの力を使って見てもらえるものにするのが広告だと思うのですが、世の中において発せられるメッセージが、アジテートしたり、言葉尻の強さで戦う方向にあるなかで、ルミネは一瞬の強さというよりも、滞空時間の長さを意識しています。

―滞空時間ですか?

尾形:「止まないエールを、自分にも。」っていうメッセージを見たときに、もしかしたら「え、どういうこと?」って思うかもしれないけれど、「どんな時も自分にエールを送ろう」っていう読後感は残る気がしていて。だからといって直接的に「ルミネでお買い物をしよう」とはならないと思うんだけど、メッセージをきっかけに、ルミネとお客さまの人生の一部分が繋がっていくことが大切なんです。それを、滞空時間の長さと呼んでいます。遠いところから吹き矢を飛ばすみたいな感覚ですね。だけど刺さると中毒性はあるよ、と(笑)。

―滞空時間の長い言葉を生み出すために、尾形さんが大切にされていることってなんですか。

尾形:発見と普遍が共存していることです。すでに知っている物事でも、「この角度から見たら実はこういう風に見えるよね」っていうことが私も好きだし、みんな好きですよね。発見って、可能性なんです。『M-1グランプリ2019』でファイナルに残ったぺこぱさんの「つっこまないツッコミ」がすごく話題になっていましたけど、そこにも一つの発見がありますよね。「相手を受け入れる」という誰もがいいなと思う時代性と、「ツッコミ」っていう伝統的な芸が合わさって、新しい可能性を生んでいる。

広告においても、全部慣用句みたいなことが書いてあったら「そうですね」って一瞬で終わってしまうし、体感として共感できる部分がないと「なに言ってるんだか」となってしまう。その両方が入っていることが大切だと思っています。

ルミネ2018年春シーズン広告「わたしの上にある空は、何度でも晴れる。」
ルミネ2018年春シーズン広告「わたしの上にある空は、何度でも晴れる。」

いつの時代も若者が正しいというスタンスでいようと思っているんです。

―長くルミネの広告を制作されるなかで、ルミネがターゲットとしている女性というもののあり方も含め、さまざまな価値観が大きくアップデートされていると思います。そうした変化について尾形さんはどのようにとらえていますか。

尾形:これはルミネに限らずですが、一つ決めていることがあって。20代からルミネの広告の仕事を始めて、今は40代になったので、ターゲットの年齢を自分が超えてきたわけですけど、とりあえず、いつの時代も若者が正しいというスタンスでいようと思っているんです。

私には理解できないことであっても、若者の感覚をそのまま正しいと思おうと。言葉を仕事にしていると、若者言葉みたいなものに嘆く人たちもたくさんいます。たとえばね、最近「ラブラブ」とか「アツアツ」みたいな意味で「アチュラチュ」って言うと知って(笑)。

―知らなかったです……。

尾形:今の私からしたら「えー!」と思うような言葉を、楽しんでいる子たちがいるわけですよね。だけど、自分の若い頃を思い返してみても、自分たちの世代だけの言葉を持つことって、お金や権力に自由がない世代にとって、すごく大事なことだと思うんです。多くの学生さんは、好きな服をどんどん買えたりしないなかで、言葉という身近にあるものも、ちゃんと楽しんでいる。そうやって生み出されているものに対して、「私たちはそんな言葉使わなかった」とか「わけのわからないことを言って」みたいな目で見ないで、知ろうとしていたいんです。

ただし、使ってみたいなと思っても自分では上手に使えないですけどね(笑)。自分の感覚にないものだから、使うとすごく寒くなる。でも、そういう言葉を使うときの楽しさの気分みたいなものはつねに垣間見ていたいし、時代の変化は楽しんで、受け入れていきたいなと思っています。

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サイト情報

『One piece of a woman』
『One piece of a woman』

LUMINEの1枚のポスターから生まれたショートストーリー。
あたらしい時代がはじまる変化の空気を感じながら、自分のペースを整えるそんな小さな物語です。

プロフィール

尾形真理子(おがた まりこ)

コピーライター / クリエイティブディレクター。1978年東京都生まれ。2001年(株)博報堂に入社し、2018年(株)Tangを設立。LUMINEをはじめ、資生堂、Tiffany&Co.、キリンビール、Netflix、FUJITSUなど多くの企業広告を手がける。朝日広告賞グランプリ、ACC賞ゴールド、TCC賞など受賞多数。『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』(幻冬舎)で小説家デビュー。その他、歌詞の提供やコラムの執筆など活躍の場を広げる。

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