
downy、音楽家たちに愛された20年 ミトら同志7人の手紙から辿る
downy『第七作品集「無題」』- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:木村篤史 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)
日本のオルタナティブシーンを代表するバンド、downyが結成から20年の節目を迎えた。変拍子を駆使したハードコアサウンドとサイケデリックなVJを組み合わせた独自のスタイルで、NUMBER GIRLや54-71らとともに、異質な存在感を放っていた2000年代。活動休止期間(2004年12月~2013年10月)を挟んで、トラックメイクの色合いを強め、生のバンドサウンドとビートミュージックを組み合わせたような、現代的でありながら、やはり他の誰とも似ていない作品を生み落した2010年代。downyは常に革新的なバンドであり続けてきた。
2018年にオリジナルメンバーである青木裕が逝去し、サポートを務めていたトラックメーカーのSUNNOVAが正式メンバーとして加入するという、バンドにとって最大の変化を経て、通算7枚目となるアルバムが完成。タイトルはもちろん、「無題」である。
今回は、小林祐介(THE NOVEMBERS)、波多野裕文(People In The Box)、金子ノブアキ、アフロ(MOROHA)、薫(DIR EN GREY)、中尾憲太郎(NUMBER GIRL)、ミト(クラムボン)といった、downyと縁の深いミュージシャンからの手紙を青木ロビンに読んでもらいながら、20年の歴史を振り返るとともに、新作について語ってもらった。「アート」「オリジナリティー」「怒り」といったキーワードから、青木ロビンの表現の根本を紐解く。

青木ロビン(あおき ろびん)
2000年結成当時よりメンバーに映像担当が在籍するロックバンド、downyのフロントマン、ソングライター。zezecoとしての活動に加え、映画、アーティストへの楽曲提供、アレンジ、プロデュースも手がける。MONO、envyとともにフェス『After Hours』を立ち上げ、国内外での開催で成功を収めている。音楽以外にも、空間デザインや、アパレルデザイナー等、多岐にわたって活躍。
downyは、ロックバンドという総合芸術。THE NOVEMBERS・小林も感化された、創作におけるマインド
―今回はdownyの20年の歴史のなかで関わりの深いミュージシャンからの手紙を読んでいただきつつ、バンドのこれまでをお伺いしたいと思います。まずは、THE NOVEMBERSの小林さん。
「いまわからないものを、わからないままに」体験し、味わい、楽しむ。なるべく無心に。
例えば、目の前にある知らない花を見て美しいと感じた次の瞬間には、この花の名前はなんだとか、文化の中での根付き方だとか、市場価値は、とかいろんな言葉が頭を駆け巡ってしまうことがある。
いま目の前にあるものを、ただ味わうのは実はとても難しい。わかろうとしてしまうからだ。「わかること」は味わうことの一つのスタイルにすぎない。見慣れない図形に補助線が引かれることで、それが実は三角形と四角形から成る図形だったと「わかる」。その補助線は、知識や、訓練、修練、または一種の閃きによって引かれる。自分が、過去の体験をもとにすぐ「わかろうとする」重力圏内にいることを、downyは教えてくれた。音楽に限らず、目の前にあるあらゆるものを、まず見る、ただ見る、ありのままに味わうことの難しさを知ったことで、初めて「ものをわかる」ことの豊かさを学ぶことができた。そして、それが不可逆だということも。わからなかった頃、あの頃にはもう戻れない、だからこそいまの自分にしかできない「わからない」を思いきり楽しみたい。
『第七作品集「無題」』の完成、そしてdowny結成20周年、心よりおめでとうございます。
あなた達は僕の世界に補助線を引いてくれた偉大な芸術の一つです。
小林祐介
―downyの復活作である5作目と、ロビンさんがプロデュースをしたTHE NOVEMBERSの『zeitgeist』はどちらも2013年の11月にリリースされていますが、どういった経緯で近いタイミングでのリリースとなったのでしょうか?
青木:もともとはdownyが活動を再開する2年くらい前に、小林くんから「プロデューサーをやってもらえませんか?」っていう連絡をもらっていたんです。僕もいずれは音楽活動を再開させたかったから、いいきっかけになるかなと思ったんですけど、そこで震災(東日本大震災)が起きて。音楽だけにフォーカスすることができなくなったので、そのときは「また次回」って話をしたんです。だから、そのときはまだ会ってもいなくて、電話とかメールだけ。
downy『第五作品集「無題」』(2013年)を聴く(Apple Musicはこちら)THE NOVEMBERS『zeitgeist』(2013年)を聴く(Apple Musicはこちら)
―そのあとに仕切り直して、それがdownyの活動再開のタイミングと重なったと。
青木:そう。もう一度声をかけてもらったときは、downyの活動再開が決まっていて音楽モードだったから、「やれるかも」と思いました。最初に声をかけてもらって、シンプルに嬉しかったですね。自分自身、当時はもう「ミュージシャン」って感覚はなくて、ただの「音楽好きの人」でしたし、そんな自分に声をかけてもらえたのは過去にやったことが実った感覚もあって。蒔いてきた種が少しでも芽吹いてくれたのなら、ありがたいことだなって思いましたね。
―小林さんの文章のなかには「芸術」という言葉が出てきますが、ロビンさんがdownyとして音楽に向き合う感覚についてお聞きしたいです。
青木:自分にしか作れない総合芸術をやっているというか、シンプルに言えば、アートですよね。だからこそ、僕たちには映像があって、いつも一枚絵を描いているみたいなイメージで音楽を作ってます。自分の生活で得たインスピレーションを、どうやって立体的に表現するか。自分たちにしか作れないアートを作る気持ちでいつもやっています。
downy『第五作品集「無題」』収録曲
リリース情報

- downy
『第七作品集「無題」』(CD) -
2020年3月18日(水)発売
価格:3,080円(税込)
RHEN-00011. コントラポスト
2. 視界不良
3. 36.2°
4. good news
5. 角砂糖
6. ゼラニウム
7. 砂上、燃ユ。残像
8. pianoid
9. 鮮やぐ視点
10. adaptation
11. stand alone
イベント情報
- downy
『雨曝しの月』 -
2020年6月6日(土)
会場:大阪府 梅田 Shangri-La2020年6月7日(日)
会場:愛知県 名古屋 CLUB UPSET2020年6月13日(土)
会場:東京都 渋谷 WWW X料金:各公演 前売4,000円(ドリンク別)
※高校生以下は写真付学生証とチケット半券の提示で1,500円キャッシュバック
プロフィール

- downy(だうにー)
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2000年4月結成。メンバーに映像担当が在籍する、特異な形態をとる5人編成のロック・バンド。音楽と映像をセッションにより同期、融合させたライブスタイルの先駆け的存在とされ、独創的、革新的な音響空間を創り上げ、視聴覚に訴えかけるライブを演出。2004年に活動休止し、2013年に再始動。2018年にギタリストの青木裕が逝去。2020年2月、SUNNOVA(Samlper,Synth)が正式メンバーとして加入。2020年3月18日、『第七作品集「無題」』をリリースした。