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新生envyが体現する、国も人種も超えて自由に生きるためのヒント

新生envyが体現する、国も人種も超えて自由に生きるためのヒント

envy『The Fallen Crimson』
インタビュー・テキスト・編集
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:浜野カズシ
2020/03/06

25年前の中国でライブをしているバンドなんて、日本どころか世界を見渡してもenvyしかいなかった。(yOshi)

―テツさんは、絶叫でありながら詩的に言葉を刺していくご自身のボーカルスタイルはどう生まれてきたと思いますか。

深川:俺の場合は言葉や歌詞を書いて、そのハマり方とかを考えるのが好きなんです。普段から国語辞典を読むのが好きで、こういう言葉ならこういう意味で届くかな、とか考えてる。そうなると言葉のリズムや強弱も考えるようになっていくから、ノブさんのメロディやサウンドとの相性がいいんだと思う。

―テツさんは歌の中でも、「言葉」そのものの存在や意味を問うところが昔からありますよね。国語辞典を読みふけるほど言葉に執着があるのは、どうしてなんだと思います?

深川:……自分を表現したり、世界を表したりできるのは、言葉だけだと思っているから、何かと関与して生きていくためには言葉が要る。だけど、僕個人は人と直接会って話すのが得意じゃなかったんです。だから歌詞を書いたり、バンドのサウンドの中で叫んだりしていると思うんですよね。一つひとつの言葉の意味を感じとりながら、それが音楽によって大きな意味になっていくというか。それを繋いでくれるのがノブさんが作る楽曲、メンバーそれぞれが弾くメロディだと思うんですよ。

河合:たとえば今回の作品にもワルツがあるけど、ワルツで絶叫っていうのも改めてすごいよね(笑)。ハードコアから始まったバンドでこんなに3拍子と5拍子が多いバンドは珍しいって自分で思うし、リズムと一体になる3音、5音の言葉を絶叫で刺していくテツのボーカルは他にはないって改めて思うね。

Spotifyでenvy“Memories and the limit”(『The Fallen Crimson』収録)を聴く(Apple Musicはこちら

左から:滝善充、中川学、河合信賢
左から:滝善充、中川学、河合信賢

―その「ユニークさ」への探求はどう始まったものなんですか。

河合:特にパンクやハードコアのシーンではシンプルさで貫く潔さが大事とされてたけど、俺の場合「こういうものだ」っていう法則を知れば知るほど、それは絶対に使いたくなかったんだよね。きっとそれぞれのバンドに、何かしら反抗したいものはあるでしょ? とはいえ、俺らの場合はかなり過敏だったと思うんです。そういう反発から始まって、絶叫の裏にいいメロディがあって、轟音だけど優しい音を組み合わせる……みたいな対比を大事にするスタイルになっていったんだと思う。

自主レーベルを主宰してきたことも、インターネットもない時代に誰が書いたかもわからない一通のエアメールを信じて「海外に行こう」って言い出したのも、やっぱり自分たちにしかできないものへの探究心だけだったと思うのね。そもそも空港に迎えにきてくれるのか? ってところからだったもん(笑)。

中川:25年前の中国はまだ天安門事件が起きてからそんなに月日が経ってなくて、なかなか他の国の文化も入ってきていない状況で、その中で日本から飛び込んで行ったのは今考えてもすごいよね(笑)。公安の目が光る中、こっそり爆音鳴らして帰るっていう。

河合:で、当時の北京でyOshiと運命的な出会いを果たしてるっていうのもすごい話だよね。運命的だとすら思う。

―え、北京で出会った?

yOshi:高校時代、北京に留学してたんです。僕自身もパンクやハードコアの世界に入り込んだのも北京が最初で、中国でもReflectorやAnarchy Jerksとか、パンクバンドが少しずつ出てきた頃でした。envyが来中した時は、中国国内でもロックバンドがまだ少ない時だったので、凄いことするバンドがいるんだなと思いましたね。今思うと、あれだけ公安が動いていて発展途上だった中国でライブをしているバンドって、日本どころか世界を見渡してもいなかったんですよね。

左から:渡部宏生、yOshi、深川哲也
左から:渡部宏生、yOshi、深川哲也

―ジャンルのラベリングじゃなく精神性の話として、ハードコアシーンにはユニティの意識が強く根付いているじゃないですか。人種も国も関係なく、個々が生きていくための武器として鳴らされた音楽であるっていう背景が、人に対する寛容さとサポート精神になっている。その上で実際に海外へ飛び出したenvyは、ライブやツアーによって活動を展開するというバンド活動の選択肢そのものを広げたと思うんです。実際にenvyの世代以降で20周年を超えるバンドが一気に増えたことも、国内外問わず着実にネットワークを繋げていくことの重要性を証明していると思う。

河合:ああ。envyを始めた時を振り返ってみると、自分の好きな音楽が正当な評価を受けていなかったシーンを見て「音楽もバンドのあり方も、もっと選択肢があっていいでしょ」っていう意識があったのね。定型に収まるんじゃなくて、自分たちがカッコいいと思う生き方を選択してもいいでしょって。今の時代もそうだけど、情報がいくらあっても生活や未来に対して選択肢を持てないことはとても苦しいよね。

だったらおとなしくしている場合じゃなくて、居場所がないなら自分たちの場所は自分たちで作るしかないんだよ。その当たり前を貫いた結果が、言ってくれたことに繋がってるんだと思う。数の大小やオーバーグラウンド / アンダーグラウンドの区分けに負けるのが嫌だったし、俺たちは個々で違うし各々がユニークであるということを、マジョリティとかマイノリティみたいな言葉で計られてたまるかよって。

Spotifyでenvy“GO MAD AND MARK”(『a dead sinking story』収録)を聴く(Apple Musicはこちら

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リリース情報

envy『The Fallen Crimson』
envy
『The Fallen Crimson』(CD)

2019年2月5日(水)発売
価格:2,750円(税込)
SZ-008

1. Statement of freedom
2. Swaying leaves and scattering breath
3. A faint new world
4. Rhythm
5. Marginalized thread
6. HIKARI
7. Eternal memories and reincarnation
8. Fingerprint mark
9. Dawn and gaze
10. Memories and the limit
11. A step in the morning glow

プロフィール

envy(えんゔぃー)

前進のBLIND JUSTICEを経て、1995年に結成。日本ではSONZAI RECORDSを主宰し、世界各国のレーベルからも作品をリリース。北米、欧州、アジア問わずツアーを実施している。ハードコアバンドとして始動しながらも、ポストロックやシューゲイザーまでを消化した深い音響と轟音を特徴とした音楽性を持つ。2018年にyOshi(killie)、滝善充(9mm Parabellum Bullet)、渡部宏生(heaven in her arms)をサポートメンバーとして迎え、2016年に脱退していた深川哲也も復帰。6人編成でリスタートを果たし、現体制で初のアルバム『The Fallen Crimson』を2月5日にリリースした。

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