
川谷絵音の制作現場に密着。閃きと意思決定の速さが生んだBGM
LINE RECORDS- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:前田立 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)
昨年12月にLINE LIVEで先行配信され、大きな反響を呼んだドキュメンタリー番組『川谷絵音 LINE「トークBGM」を作る』(現在はLINE MUSICアプリでアーカイブ視聴が可能。また、YouTubeでダイジェスト版が公開中)。これは昨年スタートしたLINEの新機能「トークBGM」のキャンペーンの一環として制作されたもので、もはや生活に欠かせなくなったLINEとの連携により、「LINE MUSICをアーティストの表現の場所として使ってほしい」という想いが込められたものだった。
そこで、今回は「トークBGM」のプロデュースを手掛けた川谷絵音と、この企画の発案者であり、レコーディング現場に同席したLINE RECORDS事業プロデューサー・田中大輔の対談を実施。一晩で0から7曲が生まれた驚きのレコーディングを振り返ってもらうとともにストリーミング時代における楽曲制作と新人開発 / 育成のあり方について、それぞれの立場から話し合ってもらった。
LINEのトークBGMを、川谷絵音がプロデュース
―まずは、今回の「トークBGM」の企画がどのように生まれたのかをお伺いしたいです。
田中:LINE MUSICは、いま若年層を中心に課金ユーザーが200万人以上いまして、日本の音楽ストリーミングサービスとしては、国内2位のポジションにいます。その理由のひとつとしては、やはりLINEとの連携機能が大きくて、中でも一番人気の「プロフィールBGM」は、現在800万人~1000万人のユーザーに使われています。そして、昨年「プロフィールBGM」に次ぐ新機能としてスタートしたのが、「トークBGM」だったんです。
―どんな機能か、改めて説明していただけますか?
田中:LINEのトーク画面に好きな楽曲を設定できる機能で、LINE MUSICで配信している6000万曲の中から好きな楽曲を設定できます。この新機能を多くの方々に知っていただくために、著名なアーティストの方がプロデュースする「トークBGM」をリリースするという案が出まして、お名前が挙がったのが川谷絵音さんでした。
―なぜ川谷さんの名前が挙がったのでしょうか?
田中:川谷さんは本当にたくさんのプロジェクトを同時進行されていて、僕が言うまでもなく、才能が溢れ出ている天才アーティストだと思うのでぜひお願いしたくて。あと個人的な話なんですけど、2年くらい前に『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)で「作曲ってどうやる? アーティストの頭の中を検証」っていう回があって、そのとき川谷さんが“福火幸い”という曲を即興で作られたのを見て、すごく感動して。実際に0から曲が生まれる瞬間を、この目で見てみたいと思ったんです。

田中大輔(たなか だいすけ)
LINE RECORDS 事業プロデューサー。1976年神奈川県生まれ。大学卒業後、CD・レコードショップのバイヤーを経て、2002年ユニバーサルミュージック合同会社に入社。数々のアーティストのマーケティング・メディアプランナーを担当し、2015年LINE株式会社に入社。音楽ストリーミングサービス「LINE MUSIC」に従事、2017年3月に「LINE RECORDS」を発足。
―確かに、あの回はすごく印象的でした。
田中:なおかつ、川谷さんが「生活音を作りたい」ということを話していたと人づてに噂を聞きつけまして、「それであれば、ぜひ」と思い、オファーをさせていただきました。
「音楽家はつまるところ、生活音だよという話になって」(川谷)
―「生活音を作りたい」というのは?
川谷:以前、サカナクションの一郎さんと話をしたときに、「音楽家はつまるところ、生活音だよ」という話になって。そのとき一郎さんが言っていたのは車のエンジン音の話で、僕は車を運転しないからあんまりわからないんですけど、車のエンジンにもいろいろな音があって、ちゃんと設計されているらしくて。バックするときの「ピー」って音も、誰かが作っているわけじゃないですか? そういう生活音を作ってみたいって思っていたんです。

川谷絵音
1988年12月3日生まれ、長崎県出身のミュージシャン / 作詞家 / 作曲家 / プロデューサー。indigo la End、ゲスの極み乙女。を結成し、2014年に同時メジャー・デビュー。DADARAYのプロデューサー、ジェニーハイのプロデューサー&ギターとして活動する他、他アーティストへの楽曲提供も行なう。ichikoroでは“Think”名義でギターを担当。2018年には俳優デビューを果たす。また“独特な人”や“美的計画”といったソロ・プロジェクトを展開するなど、活動は多岐にわたる。
―「Windows 95」の起動音をブライアン・イーノが作っていたり、「生活の中にあるあの音、実は有名なあの人が作ってる」みたいなことってありますよね。今回の「トークBGM」は音そのものではないにしろ、LINEもすでに多くの人にとって日常生活に欠かせないものになっているわけで、「生活の中のBGM」になるというか。
田中:LINEとLINE MUSICが連携しているので、例えば、LINE通話の着信音や呼出音もLINE MUSICで配信している6000万曲の中から設定できるんです。こういう機能を利用して、アーティストの方には新しい音楽表現の場として使っていただいて、楽しんでいただけるようなことができればと思っていて。
―LINE RECORDSの設立時には、Kan SanoさんがLINEの呼出音をリミックスして、楽曲にしていましたよね。
田中:こういう音楽の表現方法っていうのは、他のレーベルとも、他のストリーミングサービスとも違う、LINEだからこそできることだと思っています。
サービス情報
- LINE MUSIC
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邦楽・洋楽問わず6,000万曲以上の幅広いジャンルの楽曲を利用シーンや気分に応じて、いつでもどこでも音楽を聴くことができる音楽ストリーミングサービス。
リリース情報

- indigo la End
『濡れゆく私小説』通常盤(CD) -
2019年10月9日(水)発売
価格:3,300円(税込)
WPCL-131031. 花傘
2. 心の実
3. はにかんでしまった夏
4. 小粋なバイバイ
5. 通り恋
6. ほころびごっこ
7. ラッパーの涙
8. 砂に紛れて
9. 秋雨の降り方がいじらしい
10. Midnight indigo love story
11. 結び様
プロフィール
- 川谷絵音(かわたに えのん)
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1988年12月3日生まれ、長崎県出身のミュージシャン / 作詞家 / 作曲家 / プロデューサー。高校時代からバンドを始め、東京農工大学では軽音楽部にて活動。その後、indigo la End、ゲスの極み乙女。を結成し、2014年に同時メジャー・デビュー。他アーティストへの楽曲提供も行なう。ichikoroでは“Think”名義でギターを担当。2018年には俳優デビューを果たす。また“独特な人”や“美的計画”といったソロ・プロジェクトを展開するなど、活動は多岐にわたる。
- 田中大輔(たなか だいすけ)
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LINE RECORDS事業プロデューサー。1976年神奈川県生まれ。大学卒業後、CD・レコードショップのバイヤーを経て、2002年ユニバーサルミュージック合同会社に入社。数々のアーティストのマーケティング・メディアプランナーを担当し、2015年LINE株式会社に入社。音楽ストリーミングサービス「LINE MUSIC」に従事、2017年3月に「LINE RECORDS」を発足。