特集 PR

原田祐馬×服部滋樹のデザイン流儀 「公共性」と「工共性」

原田祐馬×服部滋樹のデザイン流儀 「公共性」と「工共性」

『UMA / design farm展 Tomorrow is Today: Farming the Possible Fields』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:片岡杏子 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

デザインしすぎないほうがよい、あるいはそもそもデザインしないほうがいい、ってことは往々にしてある。(服部)

―いまの話を聞くと、原田さんも服部さんのgrafも思想は近いところにありますよね。実際いまは仲もよいわけですし。なぜ悪口なんていってたんですか?

原田:ジェラシーです!(笑) その後、『Osaka Design Week』というイベントで、服部さんとはじめて会ったんですよ。

服部:そうそう。当時祐馬はもう1人とチームを組んで、クリエイターのオークションに参加してたんですよ。それで自転車のカゴをリサイクルしてつくったような椅子のモデルを出していて、それを僕が落札したんです。

原田がつくった、自転車のカゴをリサイクルした椅子のモデル
原田がつくった、自転車のカゴをリサイクルした椅子のモデル

原田:そうですね。というか、僕らのやってることって最初からヤンキーですね(笑)。金属バットでカゴをボコボコに叩いてつくる、DIY。

服部:でも概念模型としては本当によいかたちだった。「こういうやつがいるんだ!」と思って、すごい感動しました。この椅子を買ってなかったら仲良くなることはなかったかもしれないんですね。まさに健全な利害関係(笑)。

原田:物体をつくったのもこの椅子がはじめてだし、当時はグラフィックも自分たちの年賀状づくりくらいしかやったことなかったし……。なんで、いまこんな仕事ができているのか謎。

―自分たちがつくりたいと思うままに突き進んだ結果として開いていった、という印象を受けます。実際、アーティストの椿昇さんもそういう思想と思考の持ち主じゃないですか。

原田:それはすごく大きいです。瀬戸内海にある小豆島で一緒だったプロジェクト『小豆島 醤の郷+坂手港プロジェクト』も、まずは実際に島に行って「こういうところか」って知るところからスタートして、そこにやってくる『瀬戸内国際芸術祭』と住民の関係性を考えるところから始まって、その経験はいまの自分にも大きく影響しています。

服部:そのプロジェクトには僕らも参加していて、いまも尾を引いてる。リサーチベースでプロジェクト全体を進めて、プロセスを展示へと導いていくような経験。もっとも、椿さんの仕事の投げ渡し方がすごいんだけど、それもよかったというか。

これはデザインの思考にも通じるんだけど、デザインしすぎないほうがよい、あるいはそもそもデザインしないほうがいい、ってことは往々にしてあるんだよね。

原田:仕事の依頼って、だいたいが様式を整理しすぎた状態で頼まれますからね。でも「ちょっと待ってください。本当にその本ってつくる必要あるんですか?」ってところに立ち戻って考えることが大切で。

服部:そのプロセスを一緒に走れない人と仕事するのは難しい。でも、こういうことばかり訴えてきた20年だから、苦労も相当しました。「若造がなにいうとんねん!」ってことは周りからよくいわれて。同時に可能性を感じてくれた大人の人たちには、かなり救われましたよ。

UMA / design farmは、株式会社斎藤管工業のブランド構築を担当した(2014年~)Photo Kohei Shikama
UMA / design farmは、株式会社斎藤管工業のブランド構築を担当した(2014年~)Photo Kohei Shikama

―「大人」ってことでいうと、ぜひお聞きしたいんですが、お二人からするといまの学生や若者はどう見えていますか? 暮らしや政治に対するスタンスも個人で千差万別ですから、一概に世代で分けられるものではないにせよ。

原田:学生ってなると……「社会に接続したくない病」ってありませんか?

服部:最近はそうかもしれないですね。ちょっと前までは「ソーシャリティ」とか学生がめっちゃいってたけど、最近はやけに個人的。

原田:それを面白く思う気持ちも僕はあるんですよ。いろんなものに手を出していた僕らと違って、逆に専門性を突き詰める方向に進んでいる若い人たちも多い。専門的であることに意義を感じる価値観があって、それはよい傾向だと思うんですよ。だいたい直近の先輩世代と同じことなんて、若い頃にやるわけないじゃないですか。参照するのは僕らをひとつ飛び超えた上の世代だったりするし、それは自分たちもそうだったと思う。それに僕らにしても、目の前の若い人たちのために仕事をしてるんじゃなくて、さらにそれよりも若い人や遠い未来の社会のことを考えていると思いますから。

―古いものから新しいものへと、隔世遺伝的に影響が伝播していくイメージですね。

原田:そうですね。それに学生の多くは学校の外の社会で働いたり動いたりしてないでしょう。アルバイト先の居酒屋の世界くらいは知ってるかもしれないけれど「それが世界のすべてではないよ」っていってもわからないものだと思います。僕が学生のころはなんにもわかってなかったし(笑)。

服部:喜びの数値が違うんだよね。たぶん僕も、彫刻をやっていた学生のときはそうやったと思います。個人的な創造性を突き詰める自己表現の世界で得られる達成感と、たくさんの人たちと協働して達成する喜びは性質が違う。

原田:矛盾したことをいっちゃいますけど、むしろいまの学校ではプロジェクト型のカリキュラムが多すぎて、自分1人でやっていくための思考や技術が育ちにくいという弱点もある。だから、服部さんがやってきた彫刻の経験や、若い人の中に専門性に意義を見出す人が増えているのもよいことだと僕は思うんですよ。

大阪、鳥飼野々二丁目団地をリデザインした「UR都市機構の色彩計画」(2017年~)Photo Yoshiro Masuda
大阪、鳥飼野々二丁目団地をリデザインした「UR都市機構の色彩計画」(2017年~)Photo Yoshiro Masuda
Page 3
前へ 次へ

リリース情報

『UMA / design farm展 Tomorrow is Today: Farming the Possible Fields』
『UMA / design farm展 Tomorrow is Today: Farming the Possible Fields』

日程:2020年2月25日(火)~3月28日(土)日曜・祝日休館
会場:東京都 銀座 クリエイションギャラリーG8
料金:無料

プロフィール

原田祐馬(はらだ ゆうま)

1979年大阪生まれ。UMA / design farm代表。大阪を拠点に文化や福祉、地域に関わるプロジェクトを中心に、グラフィック、空間、展覧会や企画開発などを通して、理念を可視化し新しい体験をつくりだすことを目指している。「ともに考え、ともにつくる」を大切に、対話と実験を繰り返すデザインを実践。主なプロジェクトに、香川県・小豆島町のアートプロジェクト「醤の郷+坂手港プロジェクト ー観光から関係へ」、奈良県・奈良市のたんぽぽの家と障害のある人たちの仕事づくりを実践する「Good Job! project」、福岡県・福智町での町立図書館と歴史資料館建設プロジェクト「ふくちのち」、福井県・福井市での未来につなぐ ふくい魅える化プロジェクト「make.fukui」などがある。グッドデザイン賞審査委員、京都造形芸術大学空間演出デザイン学科客員教授。

服部滋樹(はっとり しげき)

1970年生まれ、大阪府出身。graf 代表、クリエイティブディレクター、デザイナー。美大で彫刻を学んだ後、インテリアショップ、デザイン会社勤務を経て、1998年にインテリアショップで出会った友人たちとgraf を立ち上げる。建築、インテリアなどに関わるデザインや、ブランディングディレクションなどを手掛け、近年では地域再生などの社会活動にもその能力を発揮している。京都造形芸術大学芸術学部情報デザイン学科教授。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. 星野源、ドラマ『着飾る恋には理由があって』主題歌“不思議”ジャケ公開 1

    星野源、ドラマ『着飾る恋には理由があって』主題歌“不思議”ジャケ公開

  2. くるり・岸田繁と君島大空の共鳴するところ 歌と言葉とギターの話 2

    くるり・岸田繁と君島大空の共鳴するところ 歌と言葉とギターの話

  3. Honda新型VEZELのCMに井浦新、玉城ティナ、Licaxxxら 楽曲は藤井 風が担当 3

    Honda新型VEZELのCMに井浦新、玉城ティナ、Licaxxxら 楽曲は藤井 風が担当

  4. Puzzle Projectとは?YOASOBIの仕掛け人と3人の10代が語る 4

    Puzzle Projectとは?YOASOBIの仕掛け人と3人の10代が語る

  5. 君島大空が照らす、生の暗がり 明日を繋ぐよう裸の音で語りかける 5

    君島大空が照らす、生の暗がり 明日を繋ぐよう裸の音で語りかける

  6. 今泉力哉と根本宗子が決めたこと ちゃんと「面倒くさい人」になる 6

    今泉力哉と根本宗子が決めたこと ちゃんと「面倒くさい人」になる

  7. パソコン音楽クラブが語る「生活」の音 非日常下で見つめた自然 7

    パソコン音楽クラブが語る「生活」の音 非日常下で見つめた自然

  8. サブスク以降のバンド活動 97年生まれ、Subway Daydreamの場合 8

    サブスク以降のバンド活動 97年生まれ、Subway Daydreamの場合

  9. Huluの映像クリエイター発掘&育成企画『HU35』発足の理由とは? Pが語る 9

    Huluの映像クリエイター発掘&育成企画『HU35』発足の理由とは? Pが語る

  10. 「日本が滅びても残る芸術を作りたい」平田オリザ×金森穣対談 10

    「日本が滅びても残る芸術を作りたい」平田オリザ×金森穣対談