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Kvi Babaが語る、生きる覚悟。愛はもらうものではなく手渡すもの

Kvi Babaが語る、生きる覚悟。愛はもらうものではなく手渡すもの

Kvi Baba『Happy Birthday to Me』
インタビュー・テキスト・編集
矢島大地(CINRA.NET編集部)
2020/06/01

「明日死んでもおかしくないな」っていう感覚になったことで、本当の意味で毎回ラストソングだと思えるようになったんです。

―これは傍から見た言い方になりますけど、Kvi Babaさんが辿ってきた道のりは、日本の音楽の中になかった位置付けを担うものだったと思うんですね。現行のemoとしてのクラウドラップとリアルタイムに共振する音楽性は、日本でもロックとラップミュージックの溝を埋めるものだったと思うし、人の孤独を掬うものとしてもリアリティを持っているもので。いろんな橋を渡せる存在としての可能性を音楽的にも精神性としても放ってきたのがKvi Babaさんの音楽だと思うんですよ。

Kvi Baba:はい。

―なんでこういう話をしたかというと、自分の音楽に対する反響と盛り上がりは聞こえてきてただろうし、そこで満たされるものはなかったのかなと思ったからで。

Kvi Baba:でも、それはあんまり実感してないかも。業界の人とか、早いもの好きの人とかが「すげえぞ」って言ってくれるのはわかってたんですけど、僕自身としては、早いものがよく見えるだけでしょって思っちゃうところもあって。僕の音楽に対して「世界にいけるよ!」とか調子のいいことを言う人を信用し過ぎたが故に、体にガタがきちゃったところもあるんですよ。ジュース・ワールド(Juice WRLD)やポスト・マローン(Post Malone)がいるから僕を評価するような人じゃなくて、僕自身の本質を見てくれているか。言うまでもなく、そこが何よりも大事なんですよね。

Kvi Baba

―これは安易な比較論じゃなく、声と歌とメロディの強さ、リリックの素晴らしさがあった上で時代性を纏っている音楽であるという意味で言ったんですけど、その歌の部分のアップデートが今作はかなり飛躍的だと思うんです。そのあたりは自覚的なものがありますか。

Kvi Baba:ありますね。今回もBACHLOGICと作ってるんですけど、そもそも彼が選んでくるサウンドが変わったと思うんですよ。温かい音が多くなったり、手触りが近いものになったり。で、それに対してリリックも変わったのは必然で。僕はトラックを聴いてからリリックを書くので、歌詞や歌が変わったのはトラックが変わったからとも言えるし、そのトラックを選んでリリックを書くことには自分のメンタリティが表れるし。

―逆に言うと、BACHLOGICさんのトラックが以前と変わったものとして出てきたのはどうしてなんでしょうか。

Kvi Baba:やっぱり周囲の人も僕自身の変化を受け取っていたんでしょうね。BACHLOGICも、次はもっとポジティブなフィーリングのものを作らないと僕が死んじゃうと思ったのかもしれない。僕が「こっちに行きたい」と思うと、彼のトラックも、周囲のクリエイターの作風も、不思議とそっちになってくるんですよ。

―やっぱり曲以上に人間がグルーヴを持ってる?

Kvi Baba:そう思います。感覚的なところで通じ合うものもあるし、スタジオで会って最近のことを話すだけで、バイブスはわかってると思うんですよ。だから、それに合わせて同じマインドで曲を作ってくれてるんでしょうね。だから、ただ音が綺麗とか、大事なのはそういうところじゃないんですよ。音に対する指示もしたくないし、その音の中に人と人の空気感がちゃんと宿っているかどうかでしかなくて。

Kvi Baba

<心のどこかじゃ死にたいかも>っていうことも踏まえた上で、<心の大半生きたいんだろ>っていう大きな部分を示せた。

―前作までのサウンドは極端に泣いていたと思うし、極端にグシャッとした音色のギターがKvi Babaさんの歌の中の心象風景そのままだった。それに比べて今回は、とにかくメロディが跳ねてると感じるし、音も歌ってますよね。このあたりに関しては、ご自身でどういう感触を持っていますか。

Kvi Baba:前はトラックの底で呻いてたし、這いつくばって登ろうとしてたと思うんですよ。だけど今は、同じ崖を登るのは変わらなくてもハイキングできてる感じ。跳ねながら向かっていけてるんですよ。「明日死んでもおかしくないな」っていう感覚になったことで、本当の意味で毎回ラストソングだと思えるようになったんです。そうなると、ポジティブとは言っても綺麗なだけじゃないものも素直に出てくるようになって。

―音に関しても「綺麗なだけの音は求めない」とおっしゃいましたけど、しんどかった過去も、死んでしまいたいと思った日も、忘れたんじゃなくて全部持っていくんだよっていう歌になってますよね。ただの綺麗事じゃない。

Kvi Baba:別にストイックでもなんでもないけど、だけど自分の弱い部分を甘やかしたり「それもOK」って思ったりするのが嫌だったんです。綺麗なことだけを歌ったり、前向きなことだけを歌ったりするのは逃げだと思ってた。だけど、大前提として<心のどこかじゃ死にたいかも>っていうことも踏まえた上で、<心の大半生きたいんだろ>っていう大きな部分を示すっていう……それが今回の大きな変化かな。「生きたいでしょ?」って言われたら「そんなことない」って言いたくなる時もある。逆に、「死にたい」って言う人に「嘘つけ、本気で言ってないくせに」って返すのも嫌いなんですよ。生きてたら、死にたいと思うこともきっとあるじゃないですか。

―わかります。倒錯した感情は誰しも持ってますよね。それを表現にできるのが音楽っていうものだったりする。

Kvi Baba:そうなんですよね、僕もそう思う。

―<閉じた心の部屋は届かないかもしれない><だけどそれでもいいんだ そっと残しておくね>っていうラインに、今おっしゃったことが表れている気がします。閉じようとする自分と取っ組み合っていたのが以前なら、閉じてしまう自分に対して「そこにいてもいいよ」って言える大らかさと素直さが歌にも出ていて。

Kvi Baba:うん、話していても思いましたけど、ブレてないですね。全部変わらないまま、前に向かっていく感じを手に入れられた感じですね。これまでは、下のモゴモゴした声で歌っている曲が多かったんですよ。

―そうですね。呻きが歌になって、歌が呻きになってた。

Kvi Baba:で、それが僕の内面の奥深くを表現してたと思うんですけど、今回は目線を上げて歌うようにして。そしたらそのまま歌もキーも上がって。上向いて歌うっていうのはたとえ話ですけど、でもやっぱりリアルに出てくるんですよね、心の向きって。

“Fight Song”のRemixにはVIGORMANとNORIKIYOが参加

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リリース情報

Kvi Baba『Happy Birthday to Me』
Kvi Baba
『Happy Birthday to Me』

2020年5月29日(金)配信
価格:1,222円(税込)

1. Fight Song
2. No Clouds
3. By Your Side
4. Talk to Myself
5. Fight Song (Remix) feat. VIGORMAN&NORIKIYO
6. Decide feat. RYKEY

プロフィール

Kvi Baba(くゔぃ ばば)

1999年生まれ。大阪府・茨木出身。2017年よりSoundCloud上で立て続けに楽曲を発表し音楽活動をスタート。トラップ、オルタナティブロックを飲み込んだ音楽性を持つ。2019年2月に1st EP『Natural Born Pain』を、同年3月に2nd EP『19』を立て続けにドロップ。2019年9月25日に1stアルバム『KVI BABA』を発表し、2020年5月29日に『Happy Birthday to Me』をリリースした。

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