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NITRODAY・小室ぺいの半生を辿る。孤独の殻を破って見えた景色

NITRODAY・小室ぺいの半生を辿る。孤独の殻を破って見えた景色

NITRODAY
インタビュー・テキスト・編集:
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:Kay N(IIZUMI OFFICE)

短歌を知ってから、文字としての伝わり方まで考えて歌詞にしようと思うようになったんです。

―「ドカンといけるのがバンドの最高さだ」っていう話で言うと、NUMBER GIRLやNirvanaに燃え上がったのは、やっぱりギターがデカかったんですか。

小室:ギターでしたね。明らかに、それまで耳に入っていたポピュラー音楽とは違う音が鳴ってたので。当時のイライラ――うまくできない人間関係とか、クラスの授業が嫌な気持ちを、歪んだギターがバコーンとやってくれたんです。いわゆるカタルシスを覚えたっていうことだと思うんですけど、尖ったギターで胸がザワついたんですよ。その衝撃から全部が始まった気がします。

このドキドキは自分だけのものだって思えたことが嬉しかったし、自分は自分だけのものが欲しかったんだなって、その時に気づけた気がして。まあ、実際に自分以外の人はNirvanaやNUMBER GIRLを聴いてなかったんですけど。

 

―(笑)。たとえばNirvanaなら、ジェネレーションXと呼ばれた世代の心象風景が背景にあったし、マッチョではない人間にとってのパンクがあそこにあったわけですけど、今挙げてくれたバンドたちには、ぺいさんの精神的な部分に響くものもあったんですか。

小室:その時の最新の曲って、僕の中では「クラスのみんな」とイコールみたいな印象があったんです。だから、敢えて避けて通ってた。いわゆるポピュラーな音楽は、「みんな」っていうのが見えちゃって、「みんな」に入れていない当時の自分には全然響かなかったんです。とにかくポピュラーなものを避けて、だけどそのたびに自分のモヤモヤが溜まっていくから、そのモヤモヤを音楽に壊してもらう、みたいな。

―別の道を選ぶための音楽というか。ただ「何かを避ける」っていうのは、無作為に見えて一番作為的だったりするから、モヤモヤがさらに募ってどうしたらいいかわからなくなりますよね。

小室:いやあ、そうなんですよねえ(苦笑)。そう気づけたのは最近のことだと思うんですけど……それでも当時は壁を作るしかなかったし、「自分だけの曲を作れた」っていう事実が、どんな音楽を聴くより、どんな本を読むより、嬉しかったんですよ。で、爆音の中でモヤモヤを吐き出すしかなかったのが、『青年ナイフEP』の時の自分だった気がします。

SpotifyでNITRODAY『青年ナイフEP』を聴く(Spotifyを開く

―本とおっしゃいましたが、歌詞を見ていても、文学的な表現や言葉自体への異様な執着を感じるんです。どれだけ叫んでいても、とても詩的に目の前の景色を描写されるところがぺいさんの歌の美しさだと思っていて。このあたりは、何か自覚的なものってありますか。

小室:そうですね……言葉は大事にしていますね。曲の要素を細かくしていった時の、一番小さな単位が言葉だと思うんです。だから、一語一句大事にしたくて。これは高校時代の話になるんですけど、軽音楽部でバンドをやっていたのとは他に、知り合いの繋がりで文芸部にも入ってたんです。そこで短歌を初めて知って好きになったんですね。短歌は、31文字っていう少ない文字数で表現しなくちゃいけないからこそ、言葉や文字の奥にあるものを感じられるのがよかったんですよ。

―言葉にならない気持ちを抱えていた方として、言葉の行間への執着が生まれてくるということ?

小室:そうですね。それまでは何も考えず歌詞を書き殴るだけだったんですけど、短歌を知ってからは、1文字1文字、文字としての伝わり方まで考えて歌詞にしようと思うようになりました。だから、さっき「言葉への執着」と言われたようなところが出てくるのかもしれないです。

―たとえば『レモンドEP』では、夏の情景の中でも、死んだ心や鬱屈、不安がたくさん描かれていると思ったんです。<ぬるいままの炭酸 / 喉の奥流し込んで><不甲斐ないな 不甲斐ないな><って泣きながら>というラインからは特に、夏のキラキラの外に弾き出された切なさと、当て所なさが聴こえてきて。

2020年1月12日に開催された自主企画『ヤングマシン4号』より“レモンド”

小室:ああ……まさに『レモンドEP』のタイミングが、さっき話した短歌に出会った頃だったんです。元々本を読んだりするのは好きだったんですけど、短歌に出会うまでは言葉自体を深く考えたことはなかったんです。だから、短歌によって、文学から言葉への興味に変わった感じはあったかもしれない。それはきっと、歌にも影響したと思うんですけど。この歌い方と言葉は合ってるか、とか。

「穏やかであるためにどうしたらいいのか?」っていう部分に思い悩んで、それを歌にしているのかもしれない。

―『レモンドEP』で急激に変化したポイントとして、メロディの輪郭がくっきりとしたことがあって。今おっしゃった意識の変化が音楽的な変化に繋がったとも言えますか。

小室:言葉の使い方や、それこそ行間……音楽や歌でも、本を読んでいても、風景がバーッと浮かぶようなものが好きなんですよ。それを自分もやりたいと思うようになっていきましたね。

小室ぺい
SpotifyでNITRODAY『レモンドEP』を聴く(Spotifyを開く

―風景が浮かぶものが好きなのは、どうしてですか。

小室:その本や歌の中に自分がいるように錯覚できるのが好きというか……「どこかに行きたい」みたいな感覚でもないんですけど、でもやっぱり、自分だけが見ている景色っていうのが好きなんです。たとえば僕は散歩が好きなんですよ。多い日は、1日4時間くらい家の周りをぐるぐる歩いてて。

―何を散策するとかじゃなく、ひたすら歩くだけ?

小室:そうです(笑)。ただ適当に歩くだけ。気の向く方向に行くのが楽しいんですよ。気持ちがまとまらない時でも、歩き続けると、帰ってくる頃にはスッキリしていて。静かになって落ち着くんですよね。

―NITRODAYが歌われていることや今日の話も含めて考えると、ぺいさんが叫んだり爆音を鳴らしたりするのは、自分だけの静かな時間、自分だけの穏やかさを守りたいっていう気持ちがあるからなんですか。その心の聖域みたいな部分に「自分だけのもの」を感じるというか。

小室:ああ……なるほど。「穏やかであるためにどうしたらいいのか?」っていう部分に思い悩んで、それを歌っている感覚があるかもしれないですね。言われて思いましたけど、やっぱり僕はなるべく穏やかでいたいんですよ。

でも、その気持ちが強すぎると、周囲に敏感になりすぎて、刹那的になったり不安定になったりするところもある。だからまた穏やかでいるために曲を作って、歌って、落ち着かせてる。その都度表現の方法は変わってきたと思うんですけど、自分が穏やかにいるために歌ってるのは変わらないのかもしれない。

『マシン・ザ・ヤング』(2018)収録

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作品情報

『君が世界のはじまり』
『君が世界のはじまり』

2020年7月31日(土)
テアトル新宿ほか全国で公開

原作・監督:ふくだももこ
脚本:向井康介
音楽:池永正二
出演:
松本穂香
中田青渚
片山友希
金子大地
甲斐翔真
小室ぺい
板橋駿谷
山中崇
正木佐和
森下能幸
江口のりこ
古舘寛治
配給:バンダイナムコアーツ

リリース情報

『少年たちの予感』
NITRODAY
『少年たちの予感』(CD)

2019年10月23日(水)発売
価格:1,500円(税抜)
PECF-3244

1. ヘッドセット・キッズ
2. ダイヤモンド・キッス
3. ブラックホール feat.ninoheron
4. アンカー
5. ジェット(Live)
6. ボクサー(Live)
7. レモンド(Live)
8. ユース(Live)

プロフィール

NITRODAY(にとろでい)

小室ぺい(Vo,Gt)、岩方ロクロー(Dr)、やぎひろみ(Gt)、松島早紀(Ba)によるロックバンド。2016年3月に結成し、 2017年 7月に『青年ナイフEP』 でデビュー。2018年に『レモンドEP』、1stフルアルバム『マシン・ザ・ヤング』をリリースし、2019年10月に『少年たちの予感』を発売。さらに、2020年7月公開の映画『君が世界のはじまり』にて、小室ぺいが俳優デビューすることが発表された。

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