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NITRODAY・小室ぺいの半生を辿る。孤独の殻を破って見えた景色

NITRODAY・小室ぺいの半生を辿る。孤独の殻を破って見えた景色

NITRODAY
インタビュー・テキスト・編集:
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:Kay N(IIZUMI OFFICE)

“ヘッドセット・キッズ”を歌う気持ちとしては「頑張れ!」っていう感じです。それは間違いなく思ってます。

―人に対して開き始めた自分の歌を、どんな人に聴いてもらいたいと思ったんですか。

小室:それは、僕みたいな人ですね(笑)。器用ではなくて、上手く自分を表現できなくて……そんな人。今だって、全部を投げ出したい時も、全部を終わらせてしまいたい時もあるんですよ。だけどそんな時に「俺もそうだよ」って言ってくれる人がいるだけで救われると思ったんです。僕の曲がそういう存在になってくれたらいいなって思うし、聴いてくれる人と僕とで「いろいろ大変だけど、お互い頑張ってるじゃん」っていう存在確認をする感覚で歌うようになってきた気がします。

小室ぺい

―“ヘッドセット・キッズ”って、ヘッドセットをつけて音楽に没入してドキドキしていた青春の原風景に戻っていく歌でもあり、ヘッドセットを通して人の背中を押していくメッセージソングでもありますよね。ヘッドセットをつけて自分だけの世界で音楽を聴くのって、閉じ込もる意味合いだけじゃなくて、自分が生きていくための興奮剤を製造する行為でもあると思うんですよ。

小室:確かに。イメージとしては、神聖かまってちゃんの“ロックンロールは鳴り止まないっ”みたいな感じですよね。ガツンと刺さる音楽ってドキドキするし、それがエネルギーになると思うから。THE BLUE HEARTSみたいに、真っ直ぐ「頑張れ!」って歌えたらいいなと思うんですけど……でも自分の書き方としては違うものになってくる。それでも、“ヘッドセット・キッズ”を歌う気持ちとしては「頑張れ!」っていう感じです。それは間違いなく思ってます。

たとえばART-SCHOOLを聴いてる時は、「頑張れ」って言われてる気がしてたんですよ。syrup16gに出会った時も、どん底で前を見つめている感じに救われたんです。順風満帆じゃなかった青春を抱えている自分だからこそ、陰の中から希望を見出していく歌に惹かれたのかな。でもどうであれ、どんな曲でも、どんな歌でも、最終的には奮い立たされるのがロックバンドだと思ってるので。だから……今度は自分の番だなっていう気持ちが出てきた気がしますね。それがこれからのテーマだなって思います。

SpotifyでNITRODAY『少年たちの予感』(2019)を聴く(Spotifyを開く

小室ぺい

―この3年でのぺいさんの変化、表現者としての変遷を振り返ってきましたが、それがあった上で、俳優としての表現にトライした今回の機会は自分にとってどうでしたか。

小室:初めての体験だらけでしたね(笑)。僕が意識してこなかったこと……人からどう見られているのか、どう映っているのかっていう部分がむき出しになる機会だったので。「あれ、自分ってどう歩いてたっけ?」みたいなことも思いましたし。

たとえば監督の作品のピースのひとつとして自分がそこにいるってことも、初めての体験だったんです。それは普段やっていることの真逆に近い感覚があって。メンバーの気持ちがわかった気もしたし(笑)。

―はははは。NITRODAYは4人が友達として始まったバンドであると同時に、音楽としてはぺいさんが「監督」ですもんね。ただ、表現が自分の鏡になるっていう意味で跳ね返ってくるものもあったんじゃないかと思いますが。

小室:確かに。いつもとは真逆のことだと言いつつ、いざやってみたら没入できて。一瞬ではあるけど、僕とは違う人生を歩けたんです。普段とは別なんだけど、そこには確かに自分も存在していて……ずっと、友達の家に遊びに行った時の感覚が続いてた感じ。人が生活しているところを覗いて、「ああ、こういう人生もあるんだ」って知っていく感覚があった。登場人物を見て羨ましいと思うこともあれば、自分にないものを尊敬する気持ちも純粋に持てたんですよ。

映画『君が世界のはじまり』イメージクリップ

『君が世界のはじまり』より
『君が世界のはじまり』より

―今日のお話を振り返ってみても、ゆっくりと自分の殻を破りながら「こういう感情もあるのか」「こういう自分もいるのか」っていう発見が音楽になってきた方のような気がするんです。そういう意味で言うと、演じることで人の人生を覗くことも、自分の感情の探索に近かったのかもしれないですよね。表現を通して世界と自分を知っていく、その過程と物語が、ぺいさんの表現に通底している部分だと感じます。

小室:ああー、なるほど。……確かに、壁とか殻を破りながら、まだまだ知らないことがたくさんあるんだなって気づくばっかりですね(笑)。だからこそ、今はNITRODAYでは早く新しいアルバムを出したいなって思うんです。また自分を発見できるだろうし、実際にいい曲もできてますし。これを出すまでは死ねないですね(笑)。

―ぶっ壊すためじゃなく、生きていくために歌うようになった人としての言葉が聞けました。ぺいさんが心惹かれてきたオルタナティブロックの歴史を見ても、何かをぶっ壊すためじゃなく、メインストリーム以外の選択肢を自分自身で作るために鳴らされてきたものですよね。

小室:本当に信じられるものを見つけるのは難しいことだし、それがないと不安になってしまうのは仕方がないことだと思うんです。だけどそういう時にどうするかって言ったら、自分は自分でしかないということを見つめ直すしかないんですよね。

そうやってしんどい夜を超えて、気づいたら朝になってるっていうのを繰り返して……なんとか生きてるじゃんって思えるように。今、僕はそういう気持ちでやっているので。共鳴してくれる人がいると信じて曲を作り続けるしかないですね。僕は未だに、自分の曲を作る時が一番興奮できているから。

小室ぺい
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作品情報

『君が世界のはじまり』
『君が世界のはじまり』

2020年7月31日(土)
テアトル新宿ほか全国で公開

原作・監督:ふくだももこ
脚本:向井康介
音楽:池永正二
出演:
松本穂香
中田青渚
片山友希
金子大地
甲斐翔真
小室ぺい
板橋駿谷
山中崇
正木佐和
森下能幸
江口のりこ
古舘寛治
配給:バンダイナムコアーツ

リリース情報

『少年たちの予感』
NITRODAY
『少年たちの予感』(CD)

2019年10月23日(水)発売
価格:1,500円(税抜)
PECF-3244

1. ヘッドセット・キッズ
2. ダイヤモンド・キッス
3. ブラックホール feat.ninoheron
4. アンカー
5. ジェット(Live)
6. ボクサー(Live)
7. レモンド(Live)
8. ユース(Live)

プロフィール

NITRODAY(にとろでい)

小室ぺい(Vo,Gt)、岩方ロクロー(Dr)、やぎひろみ(Gt)、松島早紀(Ba)によるロックバンド。2016年3月に結成し、 2017年 7月に『青年ナイフEP』 でデビュー。2018年に『レモンドEP』、1stフルアルバム『マシン・ザ・ヤング』をリリースし、2019年10月に『少年たちの予感』を発売。さらに、2020年7月公開の映画『君が世界のはじまり』にて、小室ぺいが俳優デビューすることが発表された。

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