特集 PR

BBHF尾崎雄貴の幸せだけど幸せじゃない今。それでも人生は続く

BBHF尾崎雄貴の幸せだけど幸せじゃない今。それでも人生は続く

BBHF『BBHF1 –南下する青年- 』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:木村篤史 編集:矢澤拓

「どんなに辛くても、生きていかねばならない」って書いてあったと思うんですけど、僕も同じ考えで作品を作っていたので、不思議な引力を感じましたね。

―モノクロームの作品で因藤さんの存在を知った上で、今回のアートワークに『麦ふみ』を使うことにしたのはなぜだったのでしょうか?

尾崎:『麦ふみ』を見て、苦しそうに、寂しそうに、背中にいろんなものを背負ってトボトボ歩いてるように見えて、後ろの真っ暗な背景も含めて、重みを背負ってる人なのかなって思ったんですよね。

―ちょっと前かがみのようにも見えますもんね。

尾崎:アートワークを『麦ふみ』に決める時点で、『南下する青年』っていうアルバムのテーマは決まっていて。それは自分がいるコミュニティとか関係値から離れる、距離を置こうとするっていうことで、「移動する」っていうイメージがぴったりだなって。

BBHF『僕らの生活』Music Video

―作品の背景については後々調べたんですよね?

尾崎:ついこの間、カタログの文章を読む機会があって、細かくはそのとき初めて知りました。僕ずっと黄色い三角が麦の種なのかなって思ってたんですけど、そんなことは書いてなくて、そこに希望があるんだって書いてあって。

―『麦ふみ』は因藤さんの父親が亡くなられた後に描かれた作品なんですよね。人間の弱さを認識するとともに、悲しみの中から希望を見出し、麦のように踏まれることによって強くなっていこうという人生観が表れていて、いま尾崎くんが言ってくれたように、黄色い三角形が唯一の光明を表しているっていう。

中央:作品『人・太陽』は今回JKに使用している『麦ふみ』と同時期に描かれた作品。『麦ふみ』と似たモチーフが描かれている
中央:作品『人・太陽』は今回JKに使用している『麦ふみ』と同時期に描かれた作品。『麦ふみ』と似たモチーフが描かれている

尾崎:今回のアルバムの一番大きなテーマが「継続」なので、その意味をちゃんと持ってる作品なんだっていうのは、すごくびっくりしました。カタログに「どんなに辛くても、生きていかねばならない」って書いてあったと思うんですけど、僕も同じ考えで作品を作っていたので、不思議な引力を感じましたね。今までのアートワークはアルバムに対して描いてもらってたけど、誰かの作品に惹かれて、使わせていただくっていうのは、こんなに特別なことなんだなって。だから、ここまで話しておいてなんですけど……僕はまだまだ因藤さんって方を神秘的に捉えていたいし、僕が因藤さんに惹かれた理由も含めて、自分の中の神秘性は守りたいと思っているので、今後も自分から深く掘り下げることはしないと思います。

―わかりました。ただ、今日だけは特別に、重みを背負っているように見えた『麦ふみ』になぜ惹かれたのか、もう少しだけ掘り下げさせてもらえますか?

尾崎:その「重み」っていうのは、社会的な柵とかじゃなくて、生きることそのものの重みというか。陰鬱としたものじゃなくて、ある意味スッキリした、ドシッとした重みを感じたんです。そこに自分の「継続」というテーマとのリンクがあったのは、因藤さんの作品に人に訴えかける力があるっていうことで、それによって、自分のテーマと共鳴してるように思えた。今回因藤さんの作品を使わせていただいたことの一番の喜びがそこにあって、因藤さんの作品に僕が動かされたんですよね。僕が因藤さんのパワーに引き寄せられて、勝手に動いてしまった。それはすごくピュアな体験だったなって思いますね。

左から『作品 61.7.8.C』『作品 61.9.3.D』
左から『作品 61.7.8.C』『作品 61.9.3.D』
『作品 61.9.3.D』近影。細かな模様が描かれている
『作品 61.9.3.D』近影。細かな模様が描かれている

因藤さんともし話せたとして、お互い話すことがちゃんとあるというか、普遍的な人間の苦しみ、悩み、喜びを持った人なんじゃないかと思うんです。

―尾崎くんが因藤さんの作品に引きつけられたのは、因藤さんが「人間」を描いてるからなんじゃないかなって。作風的に、シュールレアリスムとか前衛的と言われたりもするけど、『麦ふみ』もそうだし、その後のモノクロの作品にしても、因藤さんが描いているのは「人間」で、その背景には戦争体験があるそうで。だからこそ、そこには普遍性があって、今回のBBHFのアルバムとも響き合うものがあったんじゃないかなって。

尾崎:そうかもしれないですね。僕自身も、世の中で起こってるイベント……これはゲーム的な言い方で、例えば、コロナっていうのもイベントで……楽しいイベントではないですけど、とにかく僕はそれに対して音楽を書いたりはしてなくて。やっぱり僕は自分の身近にいる人に対して曲を書き続けていて、社会の現象に対して曲を書いたことはないんです。例えば、因藤さんに戦争についての作品があったとしたら、それは戦争自体を描いてるんじゃなくて、自分が目の前で見た戦争の最中の人々のことを描くんじゃないかなって……勝手に思ってるだけなんですけど。

『作品 64.3.1.A』
『作品 64.3.1.A』
『作品 64.8.10.A』。全面黒だが、いく層にも紫色が塗り重ねられ、近くで見るとそれぞれの作品には異なる模様となってその痕跡が現れている
『作品 64.8.10.A』。全面黒だが、いく層にも紫色が塗り重ねられ、近くで見るとそれぞれの作品には異なる模様となってその痕跡が現れている

―『麦ふみ』も父親とのパーソナルな関係性を作品にすることによって、生きる希望という普遍的なテーマを描いているわけですよね。The 1975の新作にしても、お父さんの曲があったり、バンドメンバーの曲があったり、マシューのパーソナルから出発して、それを普遍的なテーマに繋げてる。それは今回のBBHFの作品にしてもそうで、因藤さんの引力に引きつけられた人の共通点はそこなんじゃないかなって。

尾崎:今回のアルバムは僕自身が経験してきたことと同じ目線の物事で作られていて、マシューもきっとそうっていうか、僕らが知らない彼の家族や友達……メンバーだって友達だろうし、彼の物言いや考え方の根本にあるのはそこで、だからこそ、彼がそこにいるのがわかるというか、「マシューは今日も生きてるんだな」ってことが伝わってくるんです。文化とか人種関係なく、同じ空の下に生きてるって感じさせてくれる。「マシューは今日も便座に座ってスマホいじってるんだろうな」とか(笑)、それをあの音楽性でやってるっていうのが好きですね。

The 1975『Notes On A Conditional Form』の収録曲“Don’t Worry”はマシューの父親が書いた曲(Apple Musicはこちら

―マシューの便座に座ってスマホいじってる感、わかる気がします(笑)。

尾崎:因藤さんの作品もそれに近いところがあって、「この人何考えてるんだろう?」じゃなくて、きっと因藤さんが日々感じてた感情だったり、日々考えてたこと自体は、きっとすごく普遍的なことだったんだろうなって思えて、だから作品の背景を調べなくても、アートワークに使わせてもらおうと思えたんだろうなって。因藤さんともし話せたとして、お互い話すことがちゃんとあるというか、普遍的な人間の苦しみ、悩み、喜びを持った人なんじゃないかと思うんです。芸術的で、ぶっ飛んでて、天才で、誰も彼の考えてることがわからない、みたいな人じゃなくて……勝手な印象ですけど、奥さんに優しかったんじゃないかな、とか(笑)。

―あはは(笑)。

尾崎:気が狂えない人っているじゃないですか? 僕もそうで、理性が勝っちゃうから、狂える人のことを羨ましいと思うこともあるけど、因藤さんも理性が勝つ人というか、狂えない人な気がして。だからこそ、理解できる気がするし、僕にはそこが魅力的なんです。

Page 2
前へ 次へ

リリース情報

『BBHF1 –南下する青年- 』
BBHF
『BBHF1 –南下する青年- 』初回限定盤(2CD+DVD)

2020年9月2日(水)発売
価格:4,400円(税込)
BNCD-0006

[CD]
<上>
1. 流氷
2. 月の靴
3. Siva
4. N30E17
5. クレヨンミサイル
6. リテイク
7. とけない魔法
8. 1988
9. 南下する青年
<下>
10. 鳥と熊と野兎と魚
11. 夕日
12. 僕らの生活
13. 疲れてく
14. 君はさせてくれる
15. フリントストーン
16. YoHoHiHo
17. 太陽

[DVD]
“FAM!FAM!FAM!” 恵比寿LIQUIDROOMライブ映像
1. Mirror Mirror(Instrumental)
2. リビドー
3. だいすき
4. 友達へ
5. バック
6. Torch
7. Mirror Mirror
8. なにもしらない
9. あこがれ
10. シンプル
11. 涙の階段

BBHF
『BBHF1 –南下する青年- 』通常盤(2CD)

2020年9月2日(水)発売
価格:3,520円(税込)
BNCD-0007

<上>
1. 流氷
2. 月の靴
3. Siva
4. N30E17
5. クレヨンミサイル
6. リテイク
7. とけない魔法
8. 1988
9. 南下する青年
<下>
10. 鳥と熊と野兎と魚
11. 夕日
12. 僕らの生活
13. 疲れてく
14. 君はさせてくれる
15. フリントストーン
16. YoHoHiHo
17. 太陽

ギャラリー情報

gallery a-cube
gallery a-cube

住所:東京都渋谷区松濤1-28-6 麻生ビル1F

gallery a-cube (appointment gallery)

住所:東京都渋谷区松濤2-7-4 B1

プロフィール

BBHF
BBHF(びーびーえいちえふ)

Galileo Galileiとして活動していた尾崎雄貴(Vo,Gt)、佐孝仁司(Ba)、尾崎和樹(Dr)の3人に、彼らのサポートギタリストを務めていたDAIKI(Gt)を加えて、2018年に「Bird Bear Hare and Fish」名義で活動をスタート。2019年7月1日にBBHFに改名し、配信限定EP『Mirror Mirror』をリリース。9月2日に2枚組全17曲のセカンドフルアルバム『BBHF1 -南下する青年- 』をリリースする。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

BIM“Wink”

BIMの新作『NOT BUSY』より“Wink”の映像が公開。ゆるめに結んだネクタイは軽妙洒脱でも、背伸びはしない。どこか冴えない繰り返しのなかで<だって俺らの本番はきっとこれから>と、吹っ切れなさもそのままラップして次へ。BIMの現在進行形のかっこよさと人懐っこさがトレースされたようなGIFアニメが最高にチャーミング。(山元)

  1. 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 時代を先取りした画期的作品 1

    『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 時代を先取りした画期的作品

  2. 坂口恭平の権力への抵抗。音楽は記憶を思い出させ人を治療する 2

    坂口恭平の権力への抵抗。音楽は記憶を思い出させ人を治療する

  3. 能町みね子が『ヨコトリ』で考えた、わからない物事との対峙 3

    能町みね子が『ヨコトリ』で考えた、わからない物事との対峙

  4. 『鬼滅の刃』劇場版公開記念集英社連合企画、20誌それぞれにオリジナル付録 4

    『鬼滅の刃』劇場版公開記念集英社連合企画、20誌それぞれにオリジナル付録

  5. ラブリーサマーちゃん、真摯さを胸に語る ノイジーな世界に調和を 5

    ラブリーサマーちゃん、真摯さを胸に語る ノイジーな世界に調和を

  6. King Gnuが日本初の「レッドブル・アーティスト」に 「Go Louder」始動 6

    King Gnuが日本初の「レッドブル・アーティスト」に 「Go Louder」始動

  7. 柳楽優弥、三浦春馬、有村架純が戦時下の若者役 映画『太陽の子』来年公開 7

    柳楽優弥、三浦春馬、有村架純が戦時下の若者役 映画『太陽の子』来年公開

  8. 勝井祐二と山本精一が語る 踊るという文化とROVOが瀕する転換点 8

    勝井祐二と山本精一が語る 踊るという文化とROVOが瀕する転換点

  9. 暮らしと仕事と遊びとアート。すべてを越えて繋がる東東京の生活 9

    暮らしと仕事と遊びとアート。すべてを越えて繋がる東東京の生活

  10. 小栗旬×星野源、野木亜紀子脚本の映画『罪の声』場面写真一挙公開 10

    小栗旬×星野源、野木亜紀子脚本の映画『罪の声』場面写真一挙公開