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BROTHER SUN SISTER MOON 孤児たちが信じた、不確かな希望

BROTHER SUN SISTER MOON 孤児たちが信じた、不確かな希望

BROTHER SUN SISTER MOON『Some Same Soul』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:馬込将充 編集:柏井万作(CINRA.NET編集長)

大阪を拠点に活動する3ピースバンド、BROTHER SUN SISTER MOON。彼らが7月にリリースした1st EP『Some Same Soul』は、既に海外、特にアジア圏のプレイリストにも多く取上げられるなど、日本国外のリスナーからも注目を集めている。しかし、それは決して驚くべきことではない。この音楽は、言語や国境という壁を一聴して突破しえる魅惑的なフォルムを持っているし、なにより、国や人種を超えた場所で、あらゆる人々の記憶に触れ、イメージを造り出すこと……それが、BROTHER SUNSISTER MOONの3人がその音楽において目指すことであり、彼らが自分たちの音楽を「ポップス」と呼ぶ由縁でもあるのだから。

BROTHER SUN SISTER MOONの音楽――まるで未来から現在を振り返るような、そのどこかSF的でサイケデリックな音楽を構築しているのは、孤児のような音や詩である。それは、記憶の孤児であり、感情の孤児であり、夢想の孤児である。それらはこの世に確かに産み落とされながら、家を持たず、しかし、眼差しを持っている。それらは寄る辺なさをもとに寄り添いながら、断片同士が接合され、美しい音楽を奏で始める。どこか寂しそうで、しかし、温かな音と言葉の連なりがある。今のうちに出会ってほしいバンドだ。この音楽はあなたに発見されることを望んでいるし、また、あなた自身のなかに、この音楽によって発見されるべきなにかが眠っている可能性だってあるのだから。実兄妹を含むメンバー3人に取材した。

自分がひとりで作っても、それは自分が知っている自分に出会うだけ。自分が想像できないところにいきたいんです。(翔兵)

―BROTHER SUN SISTER MOON(以下、BSSM)というバンド名は、恩田陸さんの同名小説から取られたそうですね。

翔兵(Gt&Vo):そうです。本屋さんで背表紙を見つけて、「バンド名これにしよう」と思って。本当にワードだけで決めたっていう感じですね。その頃は、前にやっていたバンドが解散したばかりで。メンバーも決まっていなくて、ひとりでやる可能性もあった頃でしたね。

BROTHER SUN SISTER MOON(ぶらざー さん しすたー むーん)<br>2017年8月、大阪にて結成。惠翔兵(Gt&Vo)、岡田優佑(Dr)、惠愛由(Ba&Vo)からなるインディペンデントポップバンド。独特のいびつさと普遍的なポップネスが同居する楽曲、毛色の異なるふたりのリードボーカル、自由度の高いサウンドに溶けこむ英詞など、多方面からリスナーの耳をくすぐる。2020年5月、新レーベルBigfish Soundsから『Paranoid』を皮切りにシングル曲の配信リリースを続け、2020年7月29日に1st EP『Some Same Soul』をリリース。
BROTHER SUN SISTER MOON(ぶらざー さん しすたー むーん)
2017年8月、大阪にて結成。惠翔兵(Gt&Vo)、岡田優佑(Dr)、惠愛由(Ba&Vo)からなるインディペンデントポップバンド。独特のいびつさと普遍的なポップネスが同居する楽曲、毛色の異なるふたりのリードボーカル、自由度の高いサウンドに溶けこむ英詞など、多方面からリスナーの耳をくすぐる。2020年5月、新レーベルBigfish Soundsから『Paranoid』を皮切りにシングル曲の配信リリースを続け、2020年7月29日に1st EP『Some Same Soul』をリリース。

―その時点で、作りたい音楽のイメージはありましたか?

翔兵:今もそうなんですけど、ポップネスをしっかり持ったうえで曲を作ろうと思っていました。前のバンドはTame Impalaみたいなサイケデリックな音像が好きだったので、サウンドから曲を作っていたんです。でも今は構造から曲を作るようになったし、自分のなかからナチュラルに浮かんでくるものをまずは大事にするようになりましたね。

惠翔兵(めぐみ しょうへい)
惠翔兵(めぐみ しょうへい)

―では、翔兵さんがいう「ポップネス」というのは、「自分のなかからナチュラルに浮かんでくるもの」と強く結びついている?

翔兵:そうですね、最初に抱いた純粋なイメージがあって、それを曲げたくないなっていう。もちろん、最終的にサウンドで肉付けはするけど、肉付けを取り除いたら、そこにすごく純粋なものがある……そういうのがいいなと思ったんです。

岡田(Dr):バンドで曲を作っていても、表面的な意味での音楽的なポップさというより、もっと根本的な部分での、「自分という人間のポップネスをどう表現するのか?」ということに時間を使っている気がしますね。あと、恵さん(翔兵)は曲ができた直後から「これはこういうPVにしよう」みたいな話をするんですけど、それが面白くて。おじさんが出てきたりするんですけど。直感的なものが映像として出てくるというか。

BROTHER SUN SISTER MOONのデビューシングル『Paranoid』<br>セルフライナー:バンドで初めて作った曲。3拍子のパートと8ビートのパートがあり、BPMは違うが拍ごとの感覚は同じなのがミソ / 目の前にいる誰かは、自分の想像とはまったく別の誰かかもしれない
BROTHER SUN SISTER MOONのデビューシングル『Paranoid』
セルフライナー:バンドで初めて作った曲。3拍子のパートと8ビートのパートがあり、BPMは違うが拍ごとの感覚は同じなのがミソ / 目の前にいる誰かは、自分の想像とはまったく別の誰かかもしれない
BROTHER SUN SISTER MOON『Paranoid』を聴く(Apple Musicはこちら

―曲を作るときは、映像が喚起される場合が多いですか?

翔兵:そうですね。作るだけじゃなくて、聴くときもそうなんですけど、音楽に触れると、自分の頭のなかに映像が同時にイメージされることが多いです。

―翔兵さんが自分のなかから生まれてくる純粋なイメージを捉えたいと思う、その原動力になっているものは、なんなのでしょうか。

翔兵:すべてが新鮮で、すごくピュアに音楽を聴いていた時の体験が大きいんだと思います。英語もわからない小学生の頃なんかは、いろんな想像を張り巡らしながら音楽を聴いていたんで、すごく悲しい曲を聴いても、ハッピーな想像をしながら聴いたりしていて。

惠翔兵

翔兵:いまだにそのイメージが残っているからか、当時の自分が聴いていた音楽の歌詞を改めて読んでみても、すごくトンチンカンな感じがしたりするんですよね。でも、それってすごく尊いことやと僕は思っていて。僕、音楽をしっかり聴き始めた頃はThe Beatlesばっかり聴いていたんですけど、その頃、The Beatlesを聴きながら予想外のところから生まれていたイメージは、未だに自分の地盤になっているような気がするんです。

―なるほど。

翔兵:「自分を築いているものって、どういうものなんやろう?」と思ったときに、子供の頃の自分が音楽を通して夢想していたもの、作者の意図とか関係ないところで自分のなかに浮かび上がってきたもの……それが自分にとってオリジナルなもので、大切なものやと思っていて。それって、後天的に変わっていくものではないと思うんですよね。そういうものが、自分の作った音楽からもいっぱい生まれたらいいなと思う。まぁ、自分の音楽を聴いた人がなにを感じるかは確認できないんで、希望でしかないんですけど。でも、いろんな人のなかで、いろんなイメージが沸いてくれることを望みながら、音楽をやりたいんですよね。

BROTHER SUN SISTER MOON

―自分の純粋なイメージを大切にしつつも、そこにあるのは、「ある特定のイメージやメッセージを伝えたい」という意志でもないですよね。

翔兵:「このメッセージを伝えたい」とかはないです。特定のところに刺さるように作るんじゃなくて、勝手に想像してほしい。老若男女が聴いて、勝手にハッピーになったり、勝手に悲しんだりしてくれればいい。そうやって作者の意図と全く違うところに進んでいくのが、僕のなかでの音楽の一番好きな形です。

自分の作ったもので、他の人がなにかを感じるっていうのが面白いし、こうやってバンドで音楽を作っているのも、自分ひとりの世界観だけで曲を作ってもつまらないからなんで。自分がひとりで作った曲を聴いて「悲しい気持ちや」と感じたとしても、それは自分が知っている自分に出会っているだけなので、面白くないんです。自分が想像できないところにいきたいんですよね。

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リリース情報

『Some Same Soul』
BROTHER SUN SISTER MOON
『Some Same Soul』

2020年7月29日(水)配信

1. Paranoid
2. All I Want
3. Numb
4. I Said

『Some Same Soul』(アナログ 10 inch)
BROTHER SUN SISTER MOON
『Some Same Soul』(アナログ 10inch)

2020年10月7日(水)発売
価格:2,200円(税込)
BIGF-0001
※ダウンロードコード封入

1. Paranoid
2. All I Want
3. Numb
4. I Said

イベント情報

『BROTHER SUN SISTER MOON Online Gig for 'Some Same Soul'』

2020年9月4日(金)20:00~
料金:無料(投げ銭有り)
※アーカイブは配信終了日から1週間配信

プロフィール

BROTHER SUN SISTER MOON(ぶらざー さん しすたー むーん)

2017年8月、大阪にて結成。惠翔兵(Gt&Vo)、岡田優佑(Dr)、惠愛由(Ba&Vo)からなるインディペンデントポップバンド。独特のいびつさと普遍的なポップネスが同居する楽曲、毛色の異なるふたりのリードボーカル、自由度の高いサウンドに溶けこむ英詞など、多方面からリスナーの耳をくすぐる。2020年5月、新レーベルBigfish Soundsから『Paranoid』を皮切りにシングル曲の配信リリースを続け、2020年7月29日に1st EP『Some Same Soul』をリリース。

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