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ラブリーサマーちゃん、真摯さを胸に語る ノイジーな世界に調和を

ラブリーサマーちゃん、真摯さを胸に語る ノイジーな世界に調和を

ラブリーサマーちゃん『THE THIRD SUMMER OF LOVE』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:中山京汰郎 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部) 撮影協力:DJ Bar EdgeEnd、TSUTAYA O-nest

どんなに嫌でも、めんどくさくても、音楽とともに生きていく心づもりができた日のこと

―“AH!”や“More Light”のような曲に今の時代や社会に対する目線を投影した一方で、ラブサマちゃん個人の経験や想いもちゃんと閉じ込められていることがこのアルバムに説得力を持たせているし、魅力的にしていると思います。特にラストの“ヒーローズをうたって”が印象的で、この曲はカラオケでアラン・マッギー(「Creation Records」の主宰者)と一緒にデヴィッド・ボウイの“Heroes”を歌ったことからできた曲だとか。それってどんなシチュエーションだったんですか?

ラブサマ:このアルバムは去年の5月に開催された『SOMEWHERE,』ってイベントからの影響がめちゃ濃くて、その通し券を買った人だけが行けるアラン・マッギーのDJイベントがあったんです。で、イベントに何回も通ってるうちに友達ができて、一緒にそのDJイベントに行って、アラン・マッギーからサインももらって。

ラブリーサマーちゃん

ラブサマ:めちゃくちゃいいイベントだったからそのまま真っ直ぐ帰るのがつらくて、みんなでカラオケ行こうってなったんですけど、その友達のうちの一人がアラン・マッギーとFacebookを交換してて……アラン・マッギーがカラオケに来たんですよ。酔っ払いすぎて詳細は覚えてないんですけど(笑)。

―自分にとってのヒーローの一人と同じ時間を共有して、どこか報われたような感じがあったんですかね?

ラブサマ:今まで音楽をやってきたことが報われたというよりも……「Creation Records」の音楽を聴きながら過ごしてきた今までのことが思い返されて、「こういう日があるんだ……よし、生きていこう」みたいな感じ。

音楽って、いろんな作用があるじゃないですか? 心に作用するし、肉体にも作用するし、自分をコミュニティに所属させるって作用もある。音楽が今まで私にしてくれたことってめちゃめちゃ大きくて、そうやって音楽と一緒に生きてきたし、これからも生きていくのかもしれないと思ったら、その多くを作ってくれたアラン・マッギーに大感謝したくなって……っていう曲です。

―このアルバムを作ったことは、今後も音楽を続けていくための動機にもなった?

ラブサマ:本当にそうですね。レコーディングはつらすぎて、Twitterでもワーワー言っちゃって、やりたくないって思っちゃったりもするんです。疲れるし、めんどくさいし、すごく嫌なんですけど……カルマなんですよね(笑)。だから、どんなに辛くてもやらざるを得ないんです。

ラブリーサマーちゃん

―でも、自分で作ったデモをバンドに落とし込んで、よりいいアレンジ、よりいい音色にブラッシュアップされたら、その喜びは大きいわけですよね?

ラブサマ:デモを作り終わったときが一番嬉しくて、そのあとはギュンギュン下がっていくんです。でも曲ができて、YouTubeとかにアップしてリスナーから反応が返ってきて、「この人はこういうふうに思ったんだ」ってことを知ると、また徐々に嬉しくなってきます。

たまにファンレターとかで「この曲を聴いて、こう思いました」みたいなのを教えてくれる人もいて、そういうときは世の中に出してよかったなってガチで思いますね。「人がいる」って思います。心で聴いてくれたんだなって、そういうときは嬉しいですね。

ラブリーサマーちゃん“サンタクロースにお願い”を聴く(Apple Musicはこちら

世界と私と音楽の関係性に考えを巡らせて。ラブリーサマーちゃんがあくまでもポップな音楽にこだわる理由

―『THE THIRD SUMMER OF LOVE』っていうタイトルはノリでつけたっていう話でしたけど、「セカンド・サマー・オブ・ラブ」が1980年代の商業主義的な音楽からの解放であったように、ブリットポップが不況で苦しむ人々の心を解放したように、このアルバムは経済やSNSといった現代の構造からいかに個人としての尊厳を取り戻し、解放するかがテーマになっているという意味で、リンクがあるように思いました。

ラブサマ:それはすごく納得できます。私、これまで自分の思ったことを自分の好きな音楽で歌うっていうことだけを目的にやってきたので、作品で訴えたいテーマとか意義って全然考えてなかったんです。でも私、「ラブリーサマーちゃん」として奨学金をもらって。「クマ財団」っていうところがやっている奨学金なんですけど、その財団は「クリエイティブの力で、世界を変えていく」っていうスローガンで奨学金事業をやってるんです。

面接で「あなたは社会に対してどんなことがやりたいんですか? あなたの制作の意義は?」って聞かれたんですよね。そのとき、周りには志の高い人が多くて、みんな本当に立派な意義を持って素晴らしい作品を作っていたけど、私は何も答えられなくてビビりました。たとえばテクノロジーを専攻してる人だと世の中に対してより実用的に貢献できるけど、それってアートが世の中で持ちうる意義とは質が違うじゃないですか?

―たしかに。

ラブサマ:でもやっぱり奨学金に受かりたいから、自分の作品の他者への意義を一生懸命探すんですよ。いろいろ考えたんですけど……「私の制作って自慰みたいなものだし、意義とか見つけられないな」って思いました。でもじゃあ、私はいろんな音楽が好きなのに、何でメロディーとか音像をポップにして、誰かを跳ね除けるレベルの固有名詞は排除して、みんなが聴きやすいポップスにしてるのかなって考えたときに、「人に聴かれる歌モノのフォーマットで音楽やってる時点で、聴いてくれる他者を意識しているのでは!?」と思いました。私は最終的には優しい世界になってほしいんだと思います。愛が何なのかは全然わからないけど、それが人に興味を持つことからはじまるっていうのはわかるんです。

だから私は、私の個人的なことに人がどれくらい興味を持つのか気になってるんだと思います。私が個人的な日記のような曲を書いて、そこら辺に置いておいたら、人は興味を持つのか、どういう関係性が生まれて、届いたり届かなかったりするのかが気になる。だから、聴いてもらいやすいポップミュージックに落とし込んでるのかなって思います。

ラブリーサマーちゃん“LSC2000”を聴く(Apple Musicはこちら

―途中のブリットポップの話でも出たように、どんなに大きなムーブメントでも、結局それを構成しているのはそれぞれ違った一人ひとりで。言ってみれば、その一人ひとりが興味を持ち合うことによって、結果的に、大きなムーブメントになるってことなのかなと思います。

ラブサマ:一人ひとり違うはずなのに、同じものを見て、同じ音楽を聴いて、一緒に体を動かすってマジでヤバくないですか? 今それができなくなってるから、特にそう思うのかもしれないですけど……私、卑屈だったから、みんなと踊るのとか拒否してたんですよ。「私の好きなものは誰かと共有したくない」みたいな感じで。

私にとってのロックって陰鬱めだったから、一人で聴くもので、「みんなと」って意味がわからなくて。でも、『SOMEWHERE,』に行って、友達ができて、馴染みの面々が毎週踊ってると「楽しい!」って思っちゃったんですよね。誰かと共有するのは嫌だと思ってたけど、結構いいかもって思ったし、同じものを見て、聴いて、一緒に踊るって、すごいなって思えるようになったことは私のなかですごく大きな変化ですね。

ラブリーサマーちゃん
ラブリーサマーちゃん『THE THIRD SUMMER OF LOVE』初回限定盤ジャケット
ラブリーサマーちゃん『THE THIRD SUMMER OF LOVE』初回限定盤ジャケット(Amazonで見る
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リリース情報

ラブリーサマーちゃん
『THE THIRD SUMMER OF LOVE』初回限定盤(CD)

2020年9月16日(水)発売
価格:3,630円(税込)
COCP-41239
※三方背ケース、初回盤限定ブックレット付

1. AH!
2. More Light
3. 心ない人
4. I Told You A Lie
5. 豆台風
6. LSC2000
7. ミレニアム
8. アトレーユ
9. サンタクロースにお願い
10. どうしたいの?
11. ヒーローズをうたって

プロフィール

ラブリーサマーちゃん

1995年生まれ、東京都在住の25歳女子。2013年夏より自宅での音楽制作を開始し、インターネット上に音源を公開。SoundCloudやTwitterなどで話題を呼んだ。2015年に1stアルバム『#ラブリーミュージック』、2016年11月にはメジャーデビューアルバム『LSC』をリリースし好評を博す。2020年9月には待望の3rdアルバム『THE THIRD SUMMER OF LOVE』を発売。可愛くてかっこいいピチピチロックギャル。

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