
角舘健悟の『未知との遭遇』野村訓市編(前編)
角舘健悟の『未知との遭遇』- テキスト・編集
- 金子厚武
- 撮影:小林光大 編集:川浦慧、今井大介(CINRA.NET編集部)
Yogee New Wavesの角舘健悟がいま会ってみたい人と自らコンタクトを取り、様々なロケーション / シチュエーションでの対話を試みる連載『未知との遭遇』。第3回目のお相手は、ライター / 編集者、インテリアデザイナー、俳優、DJなど、幅広い分野でマルチに活躍する野村訓市。
30年間渋谷の街で遊んできたという野村と道玄坂で集合し、2人にとって馴染みのご飯屋さんへ。再開発が進み、古くからの建物が壊されていく渋谷の中で、未曾有のコロナ禍によって、あらゆる価値観が揺さぶられる2020年において、2人の思う「変わること / 変わらないこと」とは? 飾らない会話のドキュメントを、前編と後編にわけてお届けする。
連載:角舘健悟の『未知との遭遇』
「Yogee New Waves」のボーカルとして活躍する角舘健悟が「未知との遭遇」をテーマに、様々な世界の未知なるアーティストと出会い、ものづくりや表現について対話し、「FUSION」することで、新しい創作物を生み出します。その過程をドキュメントし、カルチャーを愛する皆さんと一緒に応援し、楽しんでいく連載企画です。
この連載の取材では、2人に誰も関与しません。カメラマンが近づいて撮影をする場面はありますが、編集者も、マネージャーも、ライターも、基本的には別行動で、2人のやり取りはピンマイクでの録音にのみ収められます。通常のインタビューとも、対談取材とも異なる、クリエイター同士のおしゃべりを、そのままお楽しみください。
待ち合わせは渋谷・道玄坂。お昼ご飯を食べに、とりかつチキンへ
角舘:今日はよろしくお願いします。
野村:します。昨日久しぶりにライブを観に行ったよ。
角舘:あー、RADWINPS? どうでした?
野村:よかった、よかった。ああいう大きいとこで観るのはすごい久しぶりだったからさ。小っちゃいのは観てんだけど。
角舘:はいはい。
野村:なんか俺配信ライブって観る気がしなくて、一個も観てなくてさ。だから、ちゃんと観に行ったんだけど、今まで観てきたRADのなかで一番よかったなって、逆に。
角舘:いいっすねー。俺洋次郎さんのことそんなに知らないけど、いまだからこそやれるライブをしそうですよね。
野村:あんなに酒飲んでるのに、よく働いてるよな、みたいな。
角舘:ははは。そんなに酒飲むんですね。
野村:でもちゃんと毎日スタジオにいて、すごい多作っていうか。昔さ、村上春樹さんを取材したときに、あの人って朝4時とか5時に起きてレコードを聴いてから、書いて、走って、ご飯食べて、すっごいシステマチックなわけ。毎日ね。
角舘:なるほどなるほど。
野村:それで、お昼の3時くらいには全部終わるんだよ。長編も毎日決まったページ数を書いてて、今日は調子がいいからもっと書けるってときも絶対やらないんだって。で、その間にアメリカの小説とかの翻訳をやって、短編を書いて、みたいな。それをさ、30年とかやってるわけじゃん。
角舘:すごいなあ。
野村:すごいなって思ってたんだけど、洋次郎もそういうのができるんじゃねえかなって。週に1曲仕上げるとか、やりすぎないけど、溜めないで絶対やる、みたいな。
角舘:俺がまだ若いからなのかわからないけど、やりたいことが多すぎて、それにいろいろ手を出してしまったりとかして。なんだかんだでこれは時間をかければできるっしょ、みたいな感じで始めちゃったりするんですよね。
野村:でもそれ、始めるのがすごい大事だから、いいことだと思うんだけど。俺なんか遊びの誘惑が多すぎて、手をつけないっていうのがすごい多いからさ。明日でいいやって言い続けて。
角舘:でも明日でいいやっていうやつは意外とそんなに大事じゃない説があると俺は思うかな。
野村:いや、本当はさ、自分でこれやろうかな、あれやろうかなってあるんだけど、フリーランスって監督がいないじゃないですか。レーベルとかがついてると、アルバムを出さないといけないから出すけど、いつまでにって制約なく、いいアルバムを作ろうってなると、のんびりしてたら、10年くらい余裕で経っちゃう。
角舘:一生やると思います(笑)。
野村:そういうのあるじゃん? しかも、時間をかけていくうちに自分の好みが変わっちゃったりしてさ。
角舘:いやー、ホントそうなんすよ。
角舘:着きましたね。早速ですけど。この辺、変わりすぎてんなあ。なんかあれだな……ここだけは変わらねえんだな。
野村:変わらないね。
角舘:チキンのフォントは。
野村:俺こっちの看板とかさ、入るのが好きなんだよね。
角舘:空いてる。いいっすねー。おばちゃんがやってる店っていいですよね。
野村:間違いないね。
角舘:実はね、2週間前くらいにも来ました。
野村:あ、まじで? 俺も月に1回は食ってるかも。
店員のおばちゃん:お決まりでしたらどうぞ―。
野村:人気(定食)を。
角舘:僕は鯵と……どうしよっかなあ。鯵、鳥、コロッケで。

野村訓市(のむら くんいち)
1973年東京都生まれ。学習院高等科在籍中に米テキサスに留学。慶応義塾大学総合政策学部を卒業後、バックパックを背負って世界各国を旅する。1999年に辻堂海岸で海の家「sputnik」をプロデュース。2004年には、友人と店舗設計などを手がけるtripsterを設立した。現在は雑誌の原稿執筆から店舗などの設計、企業のブランディング、ラジオパーソナリティまで多彩な仕事を手がける。
野村:昨日さ、ライブはよかったんだけど、客は声を出したらいけないじゃない?
角舘:そうですね。(コップに水を注ぐ)どうぞ。
野村:ありがとう。だから、みんな拍手なわけ。途中で永積タカシくんがゲストで1曲やってさ。
角舘:ハナレグミの。
野村:うん。すげえよくて、うおー! って言いたいんだけど、言えないのってすごいストレスだった。
角舘:笛とか口にくわえて、音出したいでしょ。
野村:でも笛もだめでしょ?
角舘:飛沫は飛ぶからね(笑)。俺らも12月9日にZepp Tokyoで有観客ライブをするんですよ。
野村:どうやって客が密にならないようにするの?
角舘:椅子を置いて、着席だけど立ってもいいよみたいな感じにして、ソーシャルディスタンスをキープしてもらう感じですかね。でも俺ら、結構コールアンドレスポンスが多いからなあ。
野村:それができないんだよ、全くね。
角舘:拍手だけっていうのは、昭和のテレビ番組みたいになりそう。
野村:でもなんとなく、そのうち拍手にも感情があるというか、いままでの拍手と違う意味合いになってくるわけよ。いままでってさ、予定調和だったじゃん。曲が終わったら拍手とか。でもこれからは、より多く叩きたくなるとかさ。わかる?
角舘:うんうん。プロレスは盛り上がったときにみんな地団駄踏むじゃないですか。あれとか、いいんじゃないかなって思うけどな。

角舘健悟(かくだて けんご)
1991年生、東京出身。2013年にバンド、Yogee New Wavesを結成、ボーカルを担当。2014年4月にデビューe.p.『CLIMAX NIGHT e.p.』でデビュー。昨年、3rdアルバム『BLUEHARLEM』、12月に『to the MOON e.p,』をリリース。最新作は今年7月にシングル『White Lily Light』を発表。全国各地の野外フェスの出演やアジアを中心に海外公演を重ねる。バンド活動の傍ら、テレビ番組・TVCMのナレーションなど活動の場を拡げる。音楽、ファッションの両面で厚く支持されている。
野村:声だけ出しちゃだめだから、「みんな踊ってくれ」とかって言うと、無言で跳んでるわけ。
角舘:ははは。
野村:それを見てると、無言のジャンプにもいろんな意味合いが出てくるっていうか(笑)。それでしか意思表示ができないから、面白くて。でもそれは、配信だとわかんないと思うんだよね、意思表示感が。
角舘:そうっすねえ。
野村:目の前で観るのとネットは全然違うなって、昨日すごい思ったな。
プロジェクト情報
- 連載:角舘健悟の『未知との遭遇』
-
「Yogee New Waves」のボーカルとして活躍する角舘健悟が「未知との遭遇」をテーマに、様々な世界の未知なるアーティストと出会い、ものづくりや表現について対話し、「FUSION」することで、新しい創作物を生み出します。その過程をドキュメントし、カルチャーを愛する皆さんと一緒に応援し、楽しんでいく連載企画です。
プロフィール
- 野村訓市(のむら くんいち)
-
1973年東京都生まれ。学習院高等科在籍中に米テキサスに留学。慶応義塾大学総合政策学部を卒業後、バックパックを背負って世界各国を旅する。1999年に辻堂海岸で海の家「sputnik」をプロデュース。2004年には、友人と店舗設計などを手がけるtripsterを設立した。現在は雑誌の原稿執筆から店舗などの設計、企業のブランディング、ラジオパーソナリティまで多彩な仕事を手がける。
- 角舘健悟(かくだて けんご)
-
1991年生、東京出身。2013年にバンド、Yogee New Wavesを結成、ボーカルを担当。2014年4月にデビューe.p.『CLIMAX NIGHT e.p.』でデビュー。昨年、3rdアルバム『BLUEHARLEM』、12月に『to the MOON e.p,』をリリース。最新作は今年7月にシングル『White Lily Light』を発表。全国各地の野外フェスの出演やアジアを中心に海外公演を重ねる。バンド活動の傍ら、テレビ番組・TVCMのナレーションなど活動の場を拡げる。音楽、ファッションの両面で厚く支持されている。