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あっこゴリラとアナザーエナジー展 戦ってきた人の作品はわかる

あっこゴリラとアナザーエナジー展 戦ってきた人の作品はわかる

HILLS LIFE DAILY
インタビュー
野村由芽
撮影:山本佳代子 テキスト・編集:井戸沼紀美(CINRA.NET編集部)

数年前、フェミニズムに救われた経験から「ラッパー / フェミニスト」と名乗り、活動を続けてきたあっこゴリラ。自身がフェミニストであることに変わりはないものの、最近ではあえて「フェミニスト」と説明することをやめているのだという。

他方、参加する16作家全員が女性の『アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人』は、白人男性中心主義の色が強かった美術界でキャリアを築いてきた作家たちの作品を紹介しているが、その宣伝や展示において「フェミニズム」という言葉を積極的に使用していない。

両者は決して「フェミニズムと向き合わなくていい」と発信したり、「フェミニズムを前面に打ち出さないほうがいい」と断定しているわけではない。あっこゴリラや作家たちが抱えてきたそれぞれの課題意識の複雑さや作品の持つエネルギーに、鑑賞者が想像力をもって対峙してくれるよう問いかけているのだ。

『アナザーエナジー展』の会場で、あっこゴリラと森美術館アソシエイト・キュレーターの德山拓一に話を訊くとともに、「一人であること」と連帯の関係についても思いを巡らせた。

聞き手は「自分らしく生きる女性を祝福するライフ&カルチャーコミュニティ」She isで編集長を務め、現在はme and you, inc.の取締役を務める編集者の野村由芽。あっこゴリラが書いたリリック<I’m あっこゴリちゃん / さんづけとか無理>を尊重し、「あっこちゃん」呼びで実施された取材の様子をお届けする。

都市生活を楽しむためのアイデアを提案するメディア・HILLS LIFE DAILYによるポッドキャストでも、あっこゴリラと野村由芽、德山拓一による対話を配信中。よりディープな対話を楽しみたい方は、ぜひ音声版もあわせてチェックしてほしい(Spotifyで聴く

あっこゴリラ<br>ドラマーとしてメジャーデビューを果たし、バンド解散後ラッパーとしてゼロから下積みを重ねる。2018年12月、1stフルアルバム『GRRRLISM』をリリース。2019年よりJ-WAVE『SONAR MUSIC』でメインナビゲーターを務め、また大学でのジェンダー講義や、アフリカ大陸マラウイで村人を巻き込んだストリートライブなど、性別・国籍・年齢・業界の壁を超えた唯一無二の表現活動を行う。2020年より独立し、mixtape『NINGEN GOKAKU』を発表。ちなみにゴリラの由来はノリ。
あっこゴリラ
ドラマーとしてメジャーデビューを果たし、バンド解散後ラッパーとしてゼロから下積みを重ねる。2018年12月、1stフルアルバム『GRRRLISM』をリリース。2019年よりJ-WAVE『SONAR MUSIC』でメインナビゲーターを務め、また大学でのジェンダー講義や、アフリカ大陸マラウイで村人を巻き込んだストリートライブなど、性別・国籍・年齢・業界の壁を超えた唯一無二の表現活動を行う。2020年より独立し、mixtape『NINGEN GOKAKU』を発表。ちなみにゴリラの由来はノリ。

ラッパー以上でも以下でもない。あっこゴリラがフェミニストを名乗らなくなったわけ

―あっこちゃんが自分のことを「ラッパー / フェミニスト」と名乗り始めたのは、どんな理由からだったのでしょうか?

あっこゴリラ:もともと自分は「フェミニズム」とか「フェミニスト」という言葉に対して、あまり良くない印象を抱いていたんです。それはたぶん、フェミニストやフェミニズムを腫れ物のように扱うメディアや作品を見て育ってきたことが原因で。

でも楽曲をつくる過程で生きていくなかでの違和感に向き合ったとき、フェミニズムをしっかり勉強したら、救われている自分がいて。「肌は白くないと」とか「女は子どもを産まないと」とか、社会が決めた「こうであるべき」という価値観に苦しめられていたけれど、問題は私自身ではなく社会構造にあったんだと気づかせてくれたのがフェミニズムだったんです。

あっこゴリラ

あっこゴリラ:そこからは、フェミニストやフェミニズムに対して勝手にネガティブなイメージを抱いていた自分自身を変えていきたくて「フェミニスト」を名乗るようになりました。呪いを解きたかったというか。

―そんなふうにして「フェミニスト」を名乗り始めたあっこちゃんですが、最近は「フェミニスト」をあえて名乗らなくなったとおっしゃっていました。それはなぜですか?

あっこゴリラ:ラッパーよりも先に、フェミニストとして扱われることが増えたんですよね。人から「フェミニズムをラップで表現している人ですよね」と言われたりして。「違う違う」って(笑)。

―ヒップホップが、フェミニズムを表現するための手段のように捉えられてしまった。

あっこゴリラ:そうそう。私の肩書きは何だろうと考えると、自分はラッパー以上でも以下でもないんです。個人としてフェミニストであることに変わりはないけれど、もはやそれは言わなくてもいいなと感じて。

あっこゴリラ“神器dig it”ミュージックビデオ

―周囲の人があっこちゃんの「フェミニストである」という部分を先行して捉えていたのは、なぜだと思いますか?

あっこゴリラ:「フェミニズム」とか「フェミニスト」とラベリングすると、わかりやすいんだと思います。私はそのわかりやすさをあえて利用するというのも一つの手だと思っているのですが、それによって周囲の思考停止を促してしまうんじゃないかと考える瞬間もあって。

―思考停止というのはどういう状態か、もう少し詳しくうかがえますか?

あっこゴリラ:たとえば「間違っているものは間違っている」とか、思考が頑なになってしまうことが思考停止だなと思います。「明らかにこの人は間違ったことを言っているな」と思っても、よく背景や文脈を知ると、その判断が変化することってあるじゃないですか。

―ありますね。

『アナザーエナジー展』でミリアム・カーンの作品を鑑賞するあっこゴリラ
『アナザーエナジー展』でミリアム・カーンの作品を鑑賞するあっこゴリラ

あっこゴリラ:もっと人と話し合いたいし、失敗を許容し合えるようなつながりを増やしたい。だから進んで失敗しながら、自分の音楽がそれを促す装置になるよう試行錯誤しています。「私たちは本来もっと複雑なはずだ」ということに、つねに葛藤しているんですよね。

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イベント情報

『アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人』

2021年4月22日(木)~9月26日(日)
会場:東京都 六本木 森美術館
時間:10:00~20:00(※当面、時間を短縮して営業。火曜は17:00まで)

作品情報

あっこゴリラ
『NINGEN GOKAKU』

2021年6月23日(水)配信

1. TOKYO BANANA 2021
2. TRACK GRRRL
3. SAKIDASU
4. SayHello
5. 神器 dig it
6. 謝謝 feat.CaTEye(猫眼似太)
7. SURVIVOR
8. DON’T PUSH ME feat.Moment Joon
9. I’m here

ウェブサイト情報

HILLS LIFE DAILY

HILLS LIFE DAILYは、いつも新しい「何か」が起こる街 ヒルズを舞台に、 都市生活を楽しむためのアイデアを提案してゆくメディアです。

プロフィール

あっこゴリラ

ドラマーとしてメジャーデビューを果たし、バンド解散後ラッパーとしてゼロから下積みを重ねる。2017年には、日本初のフィメール(女性)のみのMCバトル『CINDERELLA MCBATTLE』で優勝。2018年12月、1stフルアルバム『GRRRLISM』をリリース。2019年よりJ-WAVE『SONAR MUSIC』でメインナビゲーターを務め、また大学でのジェンダー講義や、アフリカ大陸マラウイで村人を巻き込んだストリートライヴなど、性別・国籍・年齢・業界の壁を超えた唯一無二の表現活動を行う。2020年より独立し、mixtape『NINGEN GOKAKU』を発表。ちなみにゴリラの由来はノリ。

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