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範宙遊泳の新演劇プロジェクト『むこう側の演劇』始動 初回はリモート制作

『むこう側の演劇「バナナの花」#1』ビジュアル
『むこう側の演劇「バナナの花」#1』ビジュアル

範宙遊泳のオンラインプロジェクト『むこう側の演劇』が始動。第1弾『「バナナの花」#1』が6月5日20:00から公開される。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で様々な公演が中止、延期となった範宙遊泳。『むこう側の演劇』は「オンライン上をも上演の『場』として捉える」プロジェクトで、「生であるかどうかは重要ではない。言い換えれば“生でなくとも”演劇を追求しなければならない」などの条件がある。

『バナナの花』は完全リモートによる作品。作・演出を山本卓卓が担当し、出演者には埜本幸良と福原冠が名を連ねる。編集とウクレレを埜本幸良、イラストをたかくらかずきが担当。視聴は無料で、Doneruやnoteで支援を受け付ける。今後続編の制作も予定しているとのこと。

なお範宙遊泳の公式YouTubeチャンネルでは、現在11本の過去公演記録映像を無料公開中。

山本卓卓のコメント

「むこう側の演劇宣言」
劇場を剥奪された演劇に、演劇は可能か。という問いに私は直面している。あるいは現代演劇は、劇場という創造的かつ想像的な空間に共依存しすぎていたのではないか。そんな風にさえ思える。2019年までは東京オリンピック後の日本をどう生きるか、が議論され考え巡らされてきたはずの演劇界隈は、いま、その議論の記録さえ忘れ去られ、未来の演劇の理想像を大きく軌道修正しなければならなくなっている。劇場経営者にとっては、どのように劇場での演劇を再開すればよいか、そのガイドラインの作成が未来を左右している。私のような劇団を率いる者にとっては、いかに俳優やスタッフへのリスクを減らしながらクリエイティビティを保ち続けることができるか、つまりこのような状況においてさえも演劇をつくるという姿勢を示せるか。劇作家にとってはむしろ、いま、この現代社会こそ見つめるべきことの多さに気付き、筆を走らせているかもしれない。
例えばレコードやラジオの登場によって、それまで生演奏こそが音楽と思われていた音楽界に革命が起こった。映画館での上映こそが映画だと思われていた映画界にはストリーミング配信が革命を起こした。小説も電子書籍の登場によって物量から解放された。では演劇は?といえば演劇の定義を覆すかのような技術革新がこれまでに起こったわけではなかった。演劇は"場”に強く依存してきた。劇場公演であろうと野外公演であろうと、観客がその場へ赴き観賞するものが演劇である。その制約から演劇が解放されることはなかった。そしてそれはこれからもないだろう。場の共有こそが演劇の根源的なアイデンティティなのだ。
であれば、オンライン上のアバターだけが存在するような空間つまりは”場”でさえも、演劇は可能であるとはいえないか。いま台頭しつつあるZOOM演劇なるものも、ZOOMが”場”であるからこそ、観客が集い演劇が成立しているのではないか。観客が赴く場所は、劇場であろうと野外であろうとオンラインであろうと、場であることに変わらないのだ。劇場を剥奪された我々は、新たな場をみつけ、その場所を劇場とすることができる。かつて河原にシートを敷いて「さあこれから面白いことやりますよ」と大声出してパフォーマンスし物を乞う、誰が決めたのかわからない”演劇”はそのようにしてできあがってきた。寺山修司はかつて街を劇場にした。つまり、いかなる状況下においても、我々はそこにシートを敷きさえすれば演劇を行うことができる。
たしかに、新しい形式の台頭に訝しがり嫌悪し時に揶揄しさえするのが人である。上述のレコードの登場、ストリーミングの登場、電子書籍の登場の裏には、もともとのスタイルを愛すればこそ新しい形式の登場を歓迎しない人々がいたことを、なにもマーティンスコセッシがNetflixに対して疑問を示した一件を参照せずとも想像に難くないと思う。私自身、脊髄反射的にオンライン演劇を行うということはできなかった。抵抗があったからである。この抵抗が解けるまでに熟考が必要であった。そして熟考の結論は、新たな演劇の形式を追求することに迷わないということであった。
これから、範宙遊泳はオンラインをも”場"と考え、演劇を行う。なにもこれは、範宙遊泳はYouTuberになりますという宣言ではない。それは断じてない。その場しのぎの、劇場公演が再開されるまでの”繋ぎ”としての活動でもない。それも断じてない。私たち範宙遊泳は劇場を剥奪されたとしてさえ、演劇を続けるという宣言である。また、劇場が再開されたとしても、オンライン上に劇場をつくりだすことをやめるつもりはない。という宣言である。
なんだかいささかかしこまった文章になってしまいましたが。この試みを「むこう側の演劇」と題して活動してゆこうと思います。むこう側の演劇、よろしくお願いします。いつもの演劇、が戻ってくることを望んでいることに変わりはありません。演劇は一度死んだのです。でもこれから蘇ります。
2020年5月某日 山本卓卓

山本卓卓 撮影:雨宮透貴
山本卓卓 撮影:雨宮透貴
埜本幸良 撮影:雨宮透貴
埜本幸良 撮影:雨宮透貴
福原冠 撮影:加藤和也
福原冠 撮影:加藤和也
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