「ソ連全体主義」の社会を再現、映画『DAU. ナターシャ』2月公開　特報到着

2020.12.17 Thu

映画『DAU. ナターシャ』が2月27日から東京・渋谷のシアター・イメージフォーラム、アップリンク吉祥寺ほか全国で公開される。

『第70回ベルリン国際映画祭』銀熊賞を受賞した同作は、「ソビエト連邦」の記憶を呼び起こすために「ソ連全体主義」の社会を再現するという、「史上最も狂った映画撮影」と呼ばれたプロジェクトの第1弾作品。ソ連の秘密研究所に併設されたカフェで働くナターシャは、研究所に滞在していたフランス人科学者と肉体関係を結び、互いに惹かれ合っていくが、やがてKGB職員にスパイ容疑をかけられ、厳しい追及を受けるというあらすじだ。原題は『DAU. Natasha』。

タイトルの『DAU』は1962年にノーベル物理学賞を受賞したロシアの物理学者のレフ・ランダウが由来。レフ・ランダウはアインシュタインやシュレーディンガーと並び称される学者であると同時に、スターリンが最高指導者を務めた時代に自由恋愛を信奉し、スターリニズムを批判した罪で逮捕された経歴を持つ。

主人公のナターシャ役に、同作でスカウトされた新人のナターリヤ・ベレジナヤがキャスティング。イリヤ・フルジャノフスキーが監督と脚本を務めた。

イリヤ・フルジャノフスキー監督は約15年の歳月をかけて同作を完成させた。オーディションには約40万人が参加し、約1万2000平米のセットに約400人の主要キャストと約1万人のエキストラが出演。衣装は4万着、撮影期間は40か月、35ミリフィルム撮影のフッテージは約700時間にものぼる。

キャストたちはソ連時代を模して再建された秘密研究都市のセット内で約2年間にわたって生活。ノーベル賞受賞者、元ネオナチリーダー、元KGB職員なども参加した。町の中ではソ連時代のルーブルが通貨として使用され、自身のキャラクターになりきって実際に愛し合い、憎しみ合ったという。

このプロジェクトは2019年1月にフランス・パリのポンピドゥーセンターで披露。既に劇場映画第2弾『DAU. Degeneration』も完成しているという。

今回の発表とあわせて特報映像とビジュアル、場面写真が公開。特報映像では、「国家に忠誠を誓うか？」という発言や、ナターシャ、ナターシャの同僚オーリャ、フランス人科学者リュックらの姿、「答えたら殺す？」という声、フルジャノフスキー監督の「忘れられた歴史は、何度も繰り返される。」という言葉などが確認できる。

ビジュアルにはナターシャとリュックの姿が映し出されている。