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蟲ふるう夜に、バンドをやめて「プロジェクト化」する理由を語る

蟲ふるう夜に
テキスト
武田俊
蟲ふるう夜に、バンドをやめて「プロジェクト化」する理由を語る

活動終了直前のアーティストは、ファンを目の前に何を語る?

8年のキャリアを持ちながら、バンドとしての活動終了と、「mushifuru project」への移行を、昨年11月に発表した蟲ふるう夜に。2016年2月6日に恵比寿ザ・ガーデンルームでラストライブ『pupation』を控えた彼らが、1月16日に開催したトークイベントで見せたのは、意外にも希望に満ちた表情だった。

土曜午後の渋谷・センター街。友人や恋人と楽しげに歩く若者たちが行き交う中で、少し気の重さを感じながら足を進める。活動終了を決めたアーティストの言葉というのは、一体どのようなものなのか。そして彼らはなぜ、ラストライブ前にこのような機会を持つことにしたのだろうか。様々な考えを頭の中で巡らせながら、バーガーキングのちょうど向いに位置するVANDALISM SHIBUYAへ向かう。

入り口につくと開場してからいくらか時間も経つというのに、まだファンが行列を成していた。自分の番を待ちながら眺めていると、ほぼ全員が蟻(Vo)の歌詞がプリントされたTシャツを、時には何枚も手にしていることに気がつく。今日のイベントはそんなコアなファンのためにこそあるということを、開始以前の段階で気づかされた。

蟻(Vo)の歌詞がプリントされたTシャツ

座席はすぐに埋まってしまったため、バーカウンター前のスツールになんとか身を収めると、BGMとともにMCを担当する『ROCKIN'ON JAPAN』編集長の小柳大輔が登場。個性的なメンバーたちとは3年ほど前から知り合いで、時には厳しい指摘もしてしまった、と少し目尻を下げながら馴れ初めを語り、主役である蟲ふるう夜にのメンバーを呼び込んだ。

左から:春輝、郁己、慎乃介、蟻、小柳
左から:春輝、郁己、慎乃介、蟻、小柳

普段のライブとは異なり、音ではなく言葉で伝える必要があるためどこかぎこちないメンバーたち。それを解きほぐすかのように、話題は年末年始の過ごし方から始まった。誕生日にメンバーからランニングシューズをプレゼントされたという春輝(Ba)の「誰もいない元旦の東京の町を走ったら、すごく気持ちよくて。これハマるなあと思ったんだけど、実はそれ以来走ってません(笑)」の言葉に、会場から笑いがこぼれたあたりで、小柳から本題についての質問が投げかけられた。

活動終了の真意と、最後の幸せな時間

「これは最初に聞かないといけないと思ったんだけど……」から始まる、活動終了への疑問。それにゆっくりと応えるように、慎乃介(Gt)、蟻、郁己(Dr)と語り手を変えながら彼らは少しずつ話しはじめた。はじめは昨年7月31日に開催した渋谷クラブクアトロでのワンマンライブの直後。公演自体は成功に終わったが、「あと1年やって食えないなら、バンドをやめようと思った」という慎乃介が、これまで以上に音楽とバンドについて真摯に考えはじめたのがきっかけだったという。シリアスに考えこむ慎乃介から立ち上るムードは、次第に他のメンバーにも伝わっていく。

「はじめに慎ちゃん(慎乃介)から伝えられた時には、ガビーンってなりましたよ。それまで一度もバンドの進退についてネガティブに話したことがなかったので、私が追い詰めてしまったのかなって。そんな時、いっくん(郁己)が話しはじめたんです」と、明るく話そうと努める蟻の目は、早くも涙でいっぱいになっていた。「ツアー中(『PELICAN FANCLUB TOUR2015「MANIA」』『T/ssue White TOUR』。昨年9~11月に開催)に、今までになく四人の音がひとつの音楽になってる、って感じられたんですよ。だからこそ、ただ漫然と続けてはいけないんじゃないかって。そう思いつめちゃって、みんなとも話せなかった……」。郁己の言葉からシリアスな空気が会場を包む中、口を開いたのは春輝だった。「それでもぼくは、ツアーを楽しめていたんです。三人がじゃれあって、蟻ちゃんが心の底から笑っているのを側から見ているだけで、もうめちゃくちゃうれしくって!」

そこから空気は一転。それぞれがツアー先での思い出を語り出す。会場にいたであろうファンもちらほら頷いており、大きな転機となったこのツアーが、結果的にはメンバー間でしっかりと議論のできる充実した時間だったことが感じ取れた。

蟲ふるう夜にトークイベントの様子

ラストシングルが描くのは、新たな始まりの90秒

話題は、バンドとしてのラストシングル“私たちは今、命の上を歩いている”へ。メンバーから活動への疑問を告げられ「今までにないくらいのストレスを感じて、その原因を考えていたんです」と言う蟻。その根幹を成していたのが「音楽を続けられなくなるかもしれない」という危機感だと気づいたことから、「歌い続ける決心」をした彼女が主導して作った曲は、なんと1分半という短い尺のものだった。

他のメンバー三人が口を揃えて「蟻の決意を感じた」「集大成だと自信を持って言える」と答えたこの曲からは、ラストとは思えないポジティブな印象を受ける。音楽のルーツでもある詩と母親との記憶をテーマに、きれいなエンディングではなく、新たな始まりの予感を感じられる曲にしようと思った、と語る蟻の表情からは、このバンドの中心を担ってきた彼女の「母性」が感じられた。

蛹化に向けた準備は、十分に整っている

イベント終盤には、質疑応答も。ファンが手を挙げるのを控えてしまっている中、まずは今回のプロジェクト化を決定したプロデューサーの津倉悠槙から、この変化への率直な気持ちを尋ねられると、メンバーは「プレイヤーとして自立すべきだと感じていた」「楽しみでもある」と肯定的な言葉で表現した。蟻の「小さい頃からリスクがあっても、ワクワクする方を選ぶって決めてきた人生だから」の一言で、ムードが解け、ファンからの発言も出はじめる。最初のライブでは客が三人だったこと。蟻が気を張りすぎて喉を痛め、最後まで歌いきれなかったこと。無理やり客に歌わせたこと。ファンの口から語られる、ごくごく個人的な蟲ふるう夜にの思い出。その一つひとつが結実して、このバンドを8年もの間前に進ませていたという、当たり前のような奇跡に思いを馳せてしまう。

「少しだけ」という蟻の言葉で始まったミニライブは、ドラムをカホンに置き換えたアコースティック編成だった。曲間に少しずつファンとの会話をはさみながら演奏された“スターシーカー”“わたしが愛すべきわたしへ”“ホウセキミライ”の3曲は、どうせ悲しくなってしまうだろうラストライブ『pupation』を、楽しみに変えてくれるのに十分な演奏とセットリストだった。

「今日は言葉だけでうまく伝えられなかったけど、最後は音でしっかり届けるね!」と語って会場を後にした彼ら。「蟲」たちのpupation(=蛹化)に向けた最後の準備は、こうして整った。

蟲ふるう夜に

イベント情報

『蟲ふるう夜に ラストワンマンLIVE「pupation」』

2016年2月6日(土)OPEN 15:30 / START 16:00
会場:東京都 恵比寿 ザ・ガーデンルーム
料金:プレミアムチケット6,400円 一般3,500円(ドリンク別)

[セットリスト]
1. 僕たちは今、命の上を歩いている
2. 焼き付くその眼深く
3. 赤褐色の海
4. 青の中の一つ
5. クロイトモダチ
6. 犬
7. アヲイトリ
8. 明星
9. 蟲の声メドレー(白の出会い~ふたつの旅立ち~幻水の都)
10. 一緒に逃げよう
11. 守るべきもの
12. ホウセキミライ
13. わたしが愛すべきわたしへ
14. 君という光、僕の走る道
15. それでも鳴らす
16. フェスティバル
17. スターシーカー
18. 私たちは今、命の上を歩いている

演奏予定楽曲のmp3音源を1週間限定無料配信(2016年1月29日~2月5日9:00頃まで)

リリース情報

蟲ふるう夜に『私たちは今、命の上を歩いている』
蟲ふるう夜に
『私たちは今、命の上を歩いている』

2015年12月16日(水)から配信リリース

プロフィール

蟲ふるう夜に
蟲ふるう夜に(むしふるうよるに)

2007年、蟻(当時はBa,Vo / 現在はVo)、慎乃介(Gt)、郁己(Dr)で結成。2012年に春輝(Ba)が加入。2012年、「ご主人が動かない もう5日になります」という歌い出しで、飼い主に先立たれた犬の気持ちを歌った“犬”が話題に。2013年にはBiSや中川翔子で知られる松隈ケンタをサウンドプロデューサーに迎えたアルバム『蟲の声』をレンタル&配信限定でリリース。2014年6月4日、蟲の日にミニアルバム『わたしが愛すべきわたしへ』をリリース。同年年末に慎乃介が難病・フィッシャー症候群に罹患し一時休養。困難の中、活動を止めないことで希望を見いだし、2015年4月1日に最新ミニアルバム『スターシーカー』をリリース。結成8周年目を迎える2015年11月28日、「蟲ふるう夜に」としての活動を終了し、「mushifuru project」へと活動形態を移行することを発表。ラストシングル“私たちは今、命の上を歩いている”では歌を届け続ける蟻の決意が綴られた。2016年2月6日に恵比寿 ザ・ガーデンルームにて、蟲ふるう夜にラストLIVE『pupation』を開催する。

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