特集 PR

パスピエ・大胡田なつきが見る『レオナルド×ミケランジェロ展』

三菱一号館美術館『レオナルド×ミケランジェロ展』
テキスト
三宅正一
撮影:豊島望 編集:宮原朋之
パスピエ・大胡田なつきが見る『レオナルド×ミケランジェロ展』

6月17日から9月24日まで三菱一号館美術館にて『レオナルド×ミケランジェロ展』が開催されている。15世紀イタリアで生まれたルネサンスの二大天才芸術家であり、宿命のライバルとされるレオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ。前者は画家としてのみならず建築や科学、解剖学の分野にまで関心を広げて「万能人」と呼ばれ、後者は10代から頭角を現しその才能を「神のごとき」と称された。本展覧会はそんな二人の比類なき芸術性を対比する日本初企画である。

8月某日、パスピエのボーカリスト、大胡田なつきが『レオナルド×ミケランジェロ展』を訪れた。結成以来「印象派」をキーワードに掲げ、独創性に富んだオルタナティブなポップミュージックを追求しているパスピエにおいて、大胡田は作詞とアートワークを担当している。幼いころから絵を描くことをたしなんでいた大胡田はダ・ヴィンチとミケランジェロの作品や関係性にどんなことを感じたのか? 三菱一号館美術館の学芸員であり本展覧会を企画した岩瀬慧と話してもらった。

変わった人が好きなので(笑)、ダ・ヴィンチは以前から気になる存在でした。(大胡田)

―『レオナルド×ミケランジェロ展』をご覧になった大胡田さんの率直な感想から聞かせてください。

大胡田:普段から絵の上手い人がサッと描く線が好きで。言葉の表現もそうだけど、絵も飾ろうと思えばいくらでもできますよね。素描は画家の芯が見えるから好きなのかもしれないです。その画家の技術のすごみをリアルに感じられる気がします。

大胡田なつき(Vo / パスピエ)
大胡田なつき(Vo / パスピエ)

―展覧会のなかで気になった作品はありましたか?

大胡田:レオナルドとミケランジェロの馬の描写の違いがおもしろかったです。馬に対して特別な関心を寄せていることがわかるレオナルドに対して、ミケランジェロはあまり興味がないんだなということがよくわかって(笑)。

馬の描写の違いに思わず笑みを漏らす大胡田なつき
馬の描写の違いに思わず笑みを漏らす大胡田なつき

左:ミケランジェロ・ブオナローティ『馬の習作』1542-1545年 黒チョーク、赤チョークの跡 / 紙 カーサ・ブオナローティ ©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti 右:レオナルド・ダ・ヴィンチ『馬の後脚の習作(トリヴルツィオ騎馬像)』 1508年頃 赤チョーク、黒チョークの跡 / 紙 トリノ王立図書館 ©Torino, Biblioteca Reale
左:ミケランジェロ・ブオナローティ『馬の習作』1542-1545年 黒チョーク、赤チョークの跡 / 紙 カーサ・ブオナローティ ©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti 右:レオナルド・ダ・ヴィンチ『馬の後脚の習作(トリヴルツィオ騎馬像)』 1508年頃 赤チョーク、黒チョークの跡 / 紙 トリノ王立図書館 ©Torino, Biblioteca Reale

大胡田:あと、レオナルドの『レダと白鳥』はCGかと思うくらい色の境目が全然わからなくてすごいなと思いました。

レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく『レダと白鳥』1505-10年頃 油彩 / 板 ウフィツィ美術館 ©Firenze, Gallerie degli Uffizi, Gabinetto fotografico delle Gallerie degli Uffizi
レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく『レダと白鳥』1505-10年頃 油彩 / 板 ウフィツィ美術館 ©Firenze, Gallerie degli Uffizi, Gabinetto fotografico delle Gallerie degli Uffizi

―そもそもレオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロに対する興味はどれくらいありましたか?

大胡田:ミケランジェロに関しては本当に全然知らなくて。彫刻家としてのイメージが強くあったんです。中学の美術の授業で教わったのでレオナルドとミケランジェロが同じ時代にいた万能人であったことはなんとなく知っていたんですけど。レオナルドには変わった人、というイメージをずっと持ってました。鏡文字とか、人体も含めていろんな生物を解剖したり。筋肉の描写にしても、そこまでしたから表現できるんだなと思いましたね。

大胡田なつき

―岩瀬さん、やはり当時においても人体の解剖までする芸術家というのは珍しかったんですか?

岩瀬:芸術家の嗜みとして多少は触れることはあっても、レオナルドのように解剖学の研究に専念し、一冊の本まで出そうという人は珍しかったと思います。異常なまでの好奇心を抱くというのは彼の性格ですね。当時は教会が絶対的な権力を持っていた時代なので、死体解剖する医療の現場に頻繁に出入りできたか分かりません。人間の体を通して真理を探求したいというレオナルドの強い気持ちがあったからこそですよね。

左から大胡田なつき、三菱一号館美術館 学芸員の岩瀬慧
左から大胡田なつき、三菱一号館美術館 学芸員の岩瀬慧

大胡田:私も変わった人が好きなので(笑)、レオナルド・ダ・ヴィンチは以前から気になる存在ではありました。

岩瀬:レオナルドは、街で気に入った顔の人を見つけると、一日中その人を尾行したりしていたらしいんです。変わってますよね(笑)。ただ、そういう過剰なまでの人間観察や自然観察が彼の作品においてとても重要なポイントなんです。誰かに言われたことや誰かが信じたことではなく、あくまで自分自身が経験したことに重きを置いているんですね。

途中経過を人に見せたくないというミケランジェロの気持ちはわかります。パスピエもそういうバンドで。(大胡田)

―大胡田さんの歌詞の作風とは真逆とも言えますよね?

大胡田:そうですね。私は頭のなかで勝手にストーリーを作り上げるので。写実と真逆にある作風だと思います。

―写実的な表現に興味を覚えたことはあまりないですか?

大胡田:興味がないわけではないんですけど、やっぱり印象派が好きですね。

―印象派はパスピエというバンドのキーワードでもありますよね。

大胡田:そうですね。私が印象派を好きな理由は、一瞬一瞬の光を捉えてキャンバスに描くところで。私自身もそういう音楽表現をしたいなとずっと思っています。ルネサンス期には本当に疎いんですけど、今日展示を観て感じたのは、写実といっても女性の体の丸みだったり、理想的に整えられている部分もあるんだろうなということで。

大胡田なつき

岩瀬:例えば印象派のモネやキュビスムのピカソは写実的な描写がすごく上手いんです。画家としての先鋭的な表現を支えているのは、モチーフを忠実にデッサンできるスキルがあるからだと思いますね。

大胡田:なるほど。納得がいきますね。

―レオナルド・ダ・ヴィンチもミケランジェロもお弟子さんに対して素描の重要性を説いてますよね。

岩瀬:そうなんです。二人とも弟子に「ちゃんと練習しないとダメ!」ということを言っています(笑)。特にレオナルドは教育的な人で理論も語るし、さまざまな研究に関しても多く書き残している。

願いは叶わなかったけれど、それを本にして出版し次世代の人たちに伝えようとしていたんですよね。だから、素描も積極的に公開していた。後世に伝わらないと意味がないという考え方ですね。一方で、ミケランジェロは対照的に、公開するのが恥ずかしいからか、晩年に自分の素描を半分燃やしてしまったりしていて(笑)。

岩瀬慧

展示壁面にはミケランジェロとレオナルド・ダ・ヴィンチの弟子への教えも掲げられている
展示壁面にはミケランジェロとレオナルド・ダ・ヴィンチの弟子への教えも掲げられている

―ミュージシャンでいえばデモテープを燃やしてしまうような感じですよね(笑)。

大胡田:確かに(笑)。でも、ミケランジェロの途中経過を人に見せたくないという気持ちもわかります。たぶんパスピエもそういうバンドで。「いま、こういう曲を作ってます」って公言しないんですよ。

Page 1
次へ

イベント情報

『レオナルド×ミケランジェロ展』

2017年6月17日(土)~9月24日(日)
会場:東京都 丸の内 三菱一号館美術館
時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は20:00まで、入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(ただし祝日は開館)
料金:一般1,700円 高校・大学生1,000円 小・中学生500円

リリース情報

パスピエ『TOUR 2017 “DANDANANDDNA” Live at NHK HALL』
パスピエ『TOUR 2017 “DANDANANDDNA” Live at NHK HALL』(DVD)

2017年8月23日(水)発売
価格:4,860円(税込)
WPBL-90445/6

プロフィール

パスピエ
パスピエ

Vocal:大胡田なつき / Keyboard:成田ハネダ / Guitar:三澤勝洸 / Bass:露崎義邦。2009年に成田ハネダ(key)を中心に結成。バンド名はフランスの音楽家ドビュッシーの楽曲が由来。卓越した音楽理論とテクニック、70s~00sまであらゆる時代の音楽を同時に咀嚼するポップセンス、ボーカルの大胡田なつきによるMusic Clipやアートワークが話題に。2011年にミニアルバム「わたし開花したわ」でデビュー。15年末には単独日本武道館公演を行い成功を収める。2016年末にCDデビュー5周年を記念して初のホールツアーを東名阪で開催。2017年1月に4thフルアルバム『&DNA(アンドディーエヌエー)』を発表。春に過去最大規模の全国ツアー、パスピエ TOUR 2017 “DANDANANDDNA”を開催。5月にドラムのやおたくやが脱退し4人編成となる。8月23日にLIVE DVD「TOUR 2017 “DANDANANDDNA” – Live at NHK HALL -」、10月18日にはミニアルバム「OTONARIさん」の発売が決定している。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

シャムキャッツ“Four O'clock Flower”

ただシャムキャッツの四人がフラットに存在して、音楽を鳴らしている。過剰な演出を排し、平熱の映像で、淡々とバンドの姿を切り取ったPVにとにかく痺れる。撮影は写真家の伊丹豪。友情や愛情のような「時が経っても色褪せない想い」を歌ったこの曲に、この映像というのはなんともニクい。(山元)