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ジョン・マエダや福岡伸一が登壇『NSK Future Forum 3』レポート

NSK VISION 2026 Project:SENSE OF MOTION-Future Forum 3
テキスト
内田伸一
撮影:杉能信介 編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部)
ジョン・マエダや福岡伸一が登壇『NSK Future Forum 3』レポート

デザインとテクノロジーの交差点から、新たな「動き」が生まれる

デザインとテクノロジーの融合における第一人者のジョン・マエダ。「生命とは何か」の探求をわかりやすく説く生物学者の福岡伸一。そして荒牧悠、市原えつこ、和田永という気鋭のアーティストたち。この異色ともいえる組み合わせが、11月10日、東京・表参道のスパイラルホールに集まった。

その目的は、3回目を迎えるフォーラムイベント『NSK VISION 2026 Project:SENSE OF MOTION-Future Forum 3』。高性能ベアリング(機械の回転部で摩擦を軽減する機構)で知られる日本精工株式会社(NSK)が、2016年の創立100周年にスタートさせたプログラムだ。

『NSK VISION 2026 Project:SENSE OF MOTION-Future Forum 3』の様子
『NSK VISION 2026 Project:SENSE OF MOTION-Future Forum 3』の様子

新たな発想で未来を革新する人々を応援し、つなげていく場をめざす同フォーラム。今回のテーマは「不確かなものが生む、あたらしい動き。決め切らない発想から生まれるクリエイティビティ」だ。正確さが命の精密機器メーカーとしては大胆な主題。しかし、コンビニのコピー機からはるか宇宙の人工衛星まで、暮らしのあらゆる「動き」を支える同社は、領域を超えて未来を拓く「動き」とも交わっていくことを望んでいる。そのフォーラムの様子をレポートする。

『NSK VISION 2026 Project:SENSE OF MOTION-Future Forum 3 不確かなものが生む、あたらしい動き。決め切らない発想から生まれるクリエイティビティ』ビジュアル
『NSK VISION 2026 Project:SENSE OF MOTION-Future Forum 3 不確かなものが生む、あたらしい動き。決め切らない発想から生まれるクリエイティビティ』ビジュアル(サイトを見る

フォーラムは、ジョン・マエダの基調講演でスタート。スクリーンに映し出されたのは、カリフォルニアにあるFacebook本社の看板だ。親指を立てた「いいね!」のマークが映えるこの看板、じつは裏側に回ると、かつてここで栄華を誇ったIT機器大手Sun Microsystems社の看板を反転して作られたことがわかる。マエダはこの有名なエピソードから話をはじめた。

マエダ:すべては変化していくもの。Facebook社はこの教訓を忘れないために、あの看板を残したのでしょう。今日は、この不確かな時代に「確かなこと」についてのお話ができたらと思います。

ジョン・マエダ
ジョン・マエダ

ジョン・マエダが語った「失敗」から学ぶことの大切さ

マエダはデザインとテクノロジーを融合させた表現で注目され、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボやRhode Island School of Designでの研究・教育活動でも知られる。日系アメリカ人である彼の実家はシアトルの豆腐屋さんだったが、当時普及しはじめたAppleのパソコンとの出会いと、「大学に進みなさい」という父の教えでMITに入学したことが、彼の人生を方向付ける。そんなマエダにとって、新しい「SENSE OF MOTION=動きの感覚」は、つねに異領域の融合からはじまる。

マエダ:たとえば、問題解決を目指すデザインと、大切な問いを放つアートが重なる領域。NSKさんの仕事でいえば、エンジニアリングとサイエンスの交わる世界もそう。そこには興味深いインターセクション(交差点)が生まれ、そこから革新的なものが生まれることもあります。

ジョン・マエダ

彼自身は、グラフィックデザインとコンピューターの融合からそのキャリアを切り拓いた。いまや当たり前といえるこの組み合わせも、当初はまだ黎明期。そのごく早い時期に表現の可能性を押し広げたのが、マエダその人だった。会場では、古典的名作ともいえる『The 10 Morisawa Posters』(1996年)などが紹介された。

マエダはこの異ジャンルの融合を、生物学用語「エッジ効果」で説明することも試みた。これは、もう1人の基調講演スピーカーである生物学者の福岡伸一を意識したものだったかもしれない。

マエダ:異なる空気や異なる水が交わるとき、豊かで新しいものが生まれ得る。以前、チェリストのヨーヨー・マとそんな話しをしました。そして、「確かさ」を安全性に、「不確かさ」を創造性に対応させることもできます。ある群れの誰かが安全圏から出て冒険しようとすれば、皆に止められる。でもなかには出て行く者がいる。当然、危ない目にあうこともあるでしょう。でも、不確かさのなかには、オドロキとの出会いがあるのも事実です。

ジョン・マエダ

さらにマエダは「3つのデザイン」について説明する。従来の工業製品などにあたる「クラシカルデザイン」、人々の共感を呼ぶ革新的な仕組みづくりも含めた「デザインシンキング」、そしてリアルタイムに多くの人々を対象とする「コンピュテーショナルデザイン」。彼は、順を追ってよりスケールが大きくなる、この3領域をとらえる大切さを強調した。加えて、「失敗」から学ぶことの大切さも。

マエダ:どんなことでも、未来永劫続く安全というのはありません。だからこそ間違いからフィードバックを得て、学ぶことも大切です。あのネルソン・マンデラも、「成功や失敗しないことを誇るのではなく、失敗しても諦めずに立ち上がることを誇ろう」という言葉を残していますね。

デザインメソッドの秘技開陳というより、「不確かなものが生む、あたらしい動き」というフォーラムのテーマを受け、自身の思想的背景を伝えた講演という印象。ただ、それだけに領域を超えて多くの人に届く語りだったように思える。

左から:中谷日出、ジョン・マエダ、福岡伸一
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イベント情報

『NSK VISION 2026 Project:SENSE OF MOTION-Future Forum 3 不確かなものが生む、あたらしい動き。決め切らない発想から生まれるクリエイティビティ』
『NSK VISION 2026 Project:SENSE OF MOTION-Future Forum 3 不確かなものが生む、あたらしい動き。決め切らない発想から生まれるクリエイティビティ』

2018年11月10日(土)
会場:東京都 表参道 スパイラルホール
出演:
ジョン・マエダ
福岡伸一
荒牧悠
市原えつこ
和田永
中谷日出
紫牟田伸子

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