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又吉直樹×武田砂鉄 1本のメールから始まった無目的な思索の応答

又吉直樹・武田砂鉄『往復書簡 無目的な思索の応答』
テキスト
タナカヒロシ
撮影:鈴木渉 編集:中田光貴(CINRA.NET編集部)
又吉直樹×武田砂鉄 1本のメールから始まった無目的な思索の応答

人間っていうのは、しゃべってることと、考えてることと、いろんなレイヤーがあるんだぞってことを本は教えてくれる。(武田)

この流れからテレビについての話題に移行するが、又吉が食レポが苦手だと打ち明け、自分にはテンションが足りないと課題を挙げると、今度は人格形成の話に発展。日頃からテンションが低く見られがちな2人だが、その原因に学生時代の影響を挙げ、部活でのエピソードを披露する。

そのなかで「なんとなく自分が思っている自分って、事実と異なる可能性がある」と話した又吉は、「絶対もっと明るかったはずなんですよ」と主張。さらに、キャラを決めつけられることへの不満や、コミュニケーションでの悩みを吐露していく。人見知りで知られるオードリー若林とのエピソードを話すと、それまでカウンセラーのように応答していた武田が大きく反応して、猛スピードで話が転がりだす。

又吉:若林さんが書いた本が面白かったので、「若林さん、面白かったです」みたいなことを言ったら、「又吉くん、驚いたんだけどさ、『なんであんなに心のなかでしゃべってるんですか?』って、けっこう聞かれるんだよね」って言われて。つまり、いまこの瞬間も、ちょっとナレーションつけようと思ったらつけれるじゃないですか。

武田:つけられますよ、当然。今も、半分くらいは別のこと考えてますね。

又吉:そうですよね。僕もそうなんです。常にあるじゃないですか、心の声みたいなナレーションは。それを「なんでこんなに心のなかでしゃべってるんですか?」って。それが衝撃だったので、調査したんです、いろんな人に。

武田:心のなかの声の有無を。

又吉:けっこう、そういう人いるんですよ。

武田:いるんだ! ないってどういう状態なんですかね。

又吉:想像できないでしょ?

武田:想像できないです。たとえば、僕らがいちごパフェを食べに行ったとするじゃないですか。そしたら「おいしいな」と思いながらも、「又吉さんはどんなペースで食べてるかな」とか、もし別のものを選んだとしたら、「又吉さんのマンゴーのもよかったな」と思いますよね。

「いちごのほうがおいしいよ」って言いながら、「マンゴーもおいしそうだ」って思っている。思っていることと言っていることが混ざっている。心のなかの声がない人は、マンゴーのこと考えてないんですか?

又吉:考えてない。言うてるんじゃないですか。「マンゴーおいしそうだね」って。

武田:どうかしてるよ、それ!

武田砂鉄

思わず声を荒げた武田は、さらに暴論とも言える主張を始める。

武田:いちごパフェとマンゴーパフェが一致してるというか、両方話に出す人が増えてくると、自分たちのような人間は、どんどん偏屈な人っていうポジショニングになるじゃないですか。

だから本当に、あらゆる人が素直にならないでほしいって思うんですよ。他人のことなんて基本的にどうでもいい、どうぞご自由に過ごしてくださいって思うんだけど、人が素直になればなるほど、こっちの取れる身動きの幅が狭くなってくると思うと、なんだか困る。「え、あの人って、『心のなかの声があるタイプ』なんでしょ」って言われる日が来るのは、明らかにマズいじゃないですか。

又吉:そういうワードが生まれたら流行りそう。バカにされる名前つけられそうですね。

武田:それこそ「KY」なんて言葉は、ほぼそれと遠からずみたいなところがあると思うんですよね。その場における空気を一致させることが前提だから、「空気読めない」っていう言葉が生まれるのであって。

空気なんて別に読まなくていいことだから、本来的には。それがどんどんグレードアップしていくと、「あの人、『心のなかの声があるタイプ』なんだよね」になる。そうなったら恐ろしいですね。

又吉:嫌ですね、それ。

武田:そういう意味で、読書って必要ですよ。心の声があるんだぞっていうことを小さい頃から植え付けてもらわないと、こっちが困る。人間っていうのは、しゃべってることと、考えてることと、いろんなレイヤーがあるんだぞってことを本は教えてくれますよね。

左から:武田砂鉄、又吉直樹
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イベント情報

『違和感の居場所 ~芸人とライター、書くときに考えていること~』
『違和感の居場所 ~芸人とライター、書くときに考えていること~』

2019年5月17日(金)
会場:紀伊國屋ホール

書籍情報

又吉直樹・武田砂鉄『往復書簡 無目的な思索の応答』
又吉直樹・武田砂鉄
『往復書簡 無目的な思索の応答』

2019年3月20日(水)
価格:1,620円
発行:朝日出版社

プロフィール

又吉直樹(またよし なおき)

1980年大阪府生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑い芸人。2003年にコンビ「ピース」を結成。2015年に『火花』で第153回芥川龍之介賞を受賞。著書に『東京百景』(ヨシモトブックス)、『劇場』(新潮社)などがある。毎日新聞で連載した小説『人間』が今秋に単行本化予定。

武田砂鉄(たけだ さてつ)

1982年東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年よりライターに。著書に『紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)、『芸能人寛容論――テレビの中のわだかまり』(青弓社)、『コンプレックス文化論』(文藝春秋)、『日本の気配』(晶文社)などがある。

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