YONA YONA WEEKENDERSは音に酔う。険しき日々に鳴る、ひとときの晩酌

「酒が美味い」という心の声が、至るところから聞こえてきたような夜だった。いつの時代でも人の心は素直である。隣の家からカレーの匂いが漂ってきたら吸い寄せられてしまうし、好みにハマるルックスの人が前から歩いてきたら目で追ってしまう。YONA YONA WEEKENDERSの音楽も、そんな魔力を孕んでいると思うのだ。無意識に体が揺れていて、お酒がどうにも美味しくて、気づいたらグラスは空。もう1杯飲みたいけど、ステージから離れるのは口惜しい。なんとも贅沢な悩みを抱えてしまう時間が、12月22日(日)の表参道WALL&WALLには流れていた。開催されたのは、1st EP『夜とアルバム』のリリースパーティー。ゲストの奇妙礼太郎と共に、酒が進むグッドタイムを作りあげた。

(メイン画像:YONA YONA WEEKENDERS)

そもそもYONA YONA WEEKENDERSは、少しばかり不思議なバンドだ。メンバー4人全員のルーツがメロディックパンクにありながら、現在はシティポップを展開している。2016年の結成当初に対バンしていたのも、ハルカミライやSIX LOUNGE、LUCCIというメンツ。どこをどう解釈しても、今の彼らのスタイルとは程遠い音楽性である。

そんな彼らがシティポップと結びついたのは、ボーカル磯野くんの存在があったからと言っても過言ではない。彼が以前活動していたバンドも結成当時こそダウンピッキングが腹に響くメロディックパンクだったが、後期では次第に甘いメロディが際立つロックバンドへ転身し、現在のYONA YONA WEEKENDERSに通ずるメロウなサウンドを鳴らしていた。音楽性の変化については「(テンポが)速いのに疲れたな」なんて誤魔化していたが、おそらく本心は違うところにあったのだろう。磯野くんが携わるバンドにこめられているのは、一貫して「J-POPが好き」「声を全面に出した音楽がしたい」という思いだ。それを肯定できるメンバーが集まった今だからこそ、彼の声質を活かすための音楽性に行きついたのだろう。結果的にYONA YONA WEEKENDERS、初のストリーミング配信楽曲である“誰もいないsea”はリリースから3ヶ月を待たずして10万回再生を突破。Spotifyでは『City Pop』を筆頭に8つのプレイリストにキュレーションされ、6月上旬にはバイラルチャートで25位に。磯野くんの歌に対する純粋な思いが、多くのリスナーの心を震わせたのだ。

実際のライブでも彼の“歌を楽しむ気持ち”を強く感じ、それが波及していく様子が手に取るように分かった。真夜中に輝くサーチライトをイメージさせるライトがステージを照らす中、SEに乗りメンバーが登場すると、磯野くんの弾く柔らかいギターの音が“アルプスへGO!”を連れてくる。一瞬にして、夜の表参道に山辺の爽やかな風が吹く。それに導かれるように、オーディエンスもゆらりゆらり。グルーヴの噛み合った演奏が、一人ひとりをそっとエスコートしていく。

センチメンタルなギターソロが観客の心を射抜いたのは“夜のgroovin'”だ。クリーントーンの単音で奏でられる調べは、グラスでキラキラと呼吸する泡のよう。彼らのルーツなどは思い出させる隙を与えず、その演奏には芳醇な余白が残されていた。間髪空けず“15”へなだれこみ、グッと観客を引きこんでいく。

MCに転ずると、すぐさま観客からメンバーを呼ぶ声が会場にこだました。そのどれもが人肌のような温度を放っており、YONA YONA WEEKENDERSは仲間に愛されているバンドだと感じさせる。穏やかな空気のなか“BUREIKO”が導かれると、フロアはホームパーティーのようなムードに包まれた。波が踊るように音を揺らし、キメではカチッと魅せつける。その抑揚は音楽を回転させ、着実に前へと進ませていた。その後も艶っぽいサウンドが際立つ“Good Bye”、フォーク色の強い“誰もいないsea”と様々なカラーの曲を展開する。『夜とアルバム』はタイトルにもある通り“夜”をテーマとして制作された1枚だが、この作品によって彼らのライブが深度を増したのは違いないだろう。散り散りになっていた楽曲たちが“夜”を主軸としたコンセプチュアルな作品のもとに束ねられることで、ライブ全体に一体感が生まれ、同時に1曲ごとの情景を鮮明にすることにも繋がっていた。

ここで磯野くんが「僕がお酒飲んでないのもあれなんで…」とマネージャーを呼び寄せ、ビールを片手に乾杯。「家に帰ったときに、いい日だったなと思ってもらえるように」と思いを告げると“Never Sleep”へ突入した。WALL&WALLに響くハーモニーは切なく、名残惜しさをさらに加速させる。メンバーの表情には寂しさと同時に充足感が広がっていった。ラストを飾ったのは、ミディアムテンポで淡く揺れる“明るい未来”だ。バンドが始まって最初にできた1曲は、磯野くんのサラリーマン生活を色濃く反映していて、思わず胸に染みる。シンガロングも巻き起こり、幸福感が隅々まで行きわたるライブを成し遂げた。

「See You!」と言い残しステージから去ったのもつかの間、差し入れのシャンパンを片手に再びメンバーが壇上に現れる。「ハッピーメリークリスマス!」とキリストを祝福すると、アンコールの曲を導いた。「表参道にはラーメン屋あるのかな」「ゆるく踊るナンバーを」という言葉が誘ったのは、“R.M.T.T”。つまりは「ラーメン食べたい」を具体化したナンバー。お酒のあとの締めのラーメン屋を求めて街中を歩き回るように、舞台上で揺れる磯野くん。YONA YONA WEEKENDERの歌が放つのはまさに、酒やラーメンといった「一瞬の安息」を求めて夜な夜な繰り出す解放感だ。そしてそれは、それぞれがそれぞれに日常を讃えるための歌へと形を変えて伝搬していく。この夜だけは。そんな願いが軽やかなステップになって、気づけば会場全体が自由なダンスに埋め尽くされていた。

ライブを観て実感したのは、メロディックパンク出身という経歴をYONA YONA WEEKENDERSが最大限の武器にしているということである。それは、爆音で派手だとか歌っている内容が熱いなどといった端的なことではない。自分たちが信じた音楽に対して泥臭く、愚直で、正直。好きなことへ真っ直ぐに愛を注ぐ。そういったマインドが宿っているからこそ、たとえメロウな曲を演奏しても、リスナーを振り向かせる求心力を保っているのだ。そしてそれはオーディエンスの体と心を揺らし、酒を美味くする魔法なのである。

YONA YONA WEEKENDERSは、いつだって日常を歌う。社会の荒波に揉まれてきた、若すぎないサラリーマンだから歌える日常。何の変哲もない日々は運命を変える劇薬にはならないが、毎日を少しだけ照らす光にはなりえる。その光は「あ、今日も生きていてよかったな」なんて、ふと思わせてくれるものだ。赤提灯のかかった店に入ったら1,000円でべろべろになれたとか、バーに行ったら素敵な出会いがあったとか。そんなほっとしてしまう心地よさがあるからこそ、YONA YONA WEEKENDERSのライブではついつい酒が進んでしまうのだ。そんな心をほどく魔法を感じる音楽であり、ライブだった。

2月15日には渋谷TSUTAYA O-nestにて、『YONA YONA WEEKENDERS presents「BUREIKO」cheers.01』、2月22日には同じくTSUTAYA O-nest『Eggs × CINRA presents exPoP!!!!! vol.130』への出演も決定している。このタイミングで酔わずして、いつ酔うというのだろうか。

イベント情報
『YONA YONA WEEKENDERS presents「BUREIKO」cheers.01』

2020年2月15日(土)
東京都 渋谷TSUTAYA O-nest

OPEN / START:24:00
DOOR ¥2,000+1D
With Flyer ¥1,500+1D

<ACT>
YONA YONA WEEKENDERS
松田“CHABE”岳二, YonYon, has, 暴走天使(trmsc.&slaill), Secret Special Guest

TICKET BUY:当日券のみ
※多数ご来場がありました場合は入場を制限させていただく場合がございます。

『Eggs × CINRA presents exPoP!!!!! vol.130』

2020年2月27日(木)
東京都 渋谷TSUTAYA O-nest

OPEN / START:18:30 / 19:00
TICKET:入場無料(2Drinks)

<ACT>
Omoinotake
YONA YONA WEEKENDERS
evening cinema
and more

料金:無料(2ドリンク制)

プロフィール
YONA YONA WEEKENDERS (よな よな うぃーくえんだーず)

Vo.磯野くん、Gt.キイチ、Ba.シンゴ、Dr.小原“Beatsoldier”壮史の4人で結成されたメロコア・パンク出身の4人組バンド。Vo.磯野くんの表現力豊かな歌声と骨のあるバンドサウンド、長きにわたってアンダーグラウンドなシーンの最前線で活躍した彼らが作りだすステージは必見。2018年9月、自主制作盤『誰もいないsea』を会場限定で発売。同月、下北沢ERAにて行われたリリースパーティーでは、深夜イベントながら500杯近くの酒が出るという異例の事態に……。2019年4月、「RECORD STORE DAY JAPAN 2019」にて1st 7inchシングル『誰もいないsea / 明るい未来』を全国の加盟店にて発売しSOLD OUT。その後アルバム楽曲配信を解禁し、Spotify、Apple Musicなどでは多数プレイリストに選出、再生数は3ヶ月で13万回を突破。メディアや著名人からもピックアップされ自主制作盤ながら各所でO.A.され、“ツマミいらずのグッドミュージック”に中毒者が続出中。2019年11月20日初の全国流通盤1st EP『夜とアルバム』リリース、それに伴い12月22日には表参道WALL&WALLにてゲストに奇妙礼太郎を招きリリースパーティーを開催しSOLD OUT。



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