レビュー

すぐに触れられる「生きている家具」と、近くにいるのに触れられない自分の「家族」

小林宏彰
2009/12/22
すぐに触れられる「生きている家具」と、近くにいるのに触れられない自分の「家族」

『SEKILALA』は、本年度の文化庁メディア芸術祭アート部門で優秀賞を受賞した作品だ。「バイオファニチャー」というネズミを拡張して造られた家具に囲まれて生きる、ある家族の姿を描いた物語である。すぐに触れられる「生きている家具」と、近くにいるのに触れられない自分の「家族」の間で揺れる父親の孤独感が描かれる。本欄で紹介するのは、WEBでの公開用に再編集された1分間バージョンだが、上映会場では必ず3面のスクリーンに映写する形態を取ってきた。それぞれのスクリーンでは、映画のシーンが始まりも終わりもなくランダムに上映され、観客自身が統合して物語を作り上げるという開かれた作品になっている。テーマを「家族」という普遍的なものに据えたのは、観客の感情移入を容易にするための仕掛けなのだろう。映画が「2次元でしかないこと」を疑い、3次元の意識を取り込みつつ表現を行ってきたSHIMURABROS.の面目躍如というべきか。『SEKILALA』が本当に完成するのは観客それぞれの頭の中であり、この作品の真の相貌は、2月3日から開催される、文化庁メディア芸術祭の会場で確かめるしか術はない。

※このコンテンツは旧「ピックアップアーティスト」の掲載情報を移設したものです

プロフィール

SHIMURABROS.

ユカ&ケンタロウによる姉弟ユニット。英国セントラル・セント・マーチンズ大学院映画・舞台芸術学部卒業。新たな映像装置の発明によって既存の枠をこえたイメージの実体化を企てる。カンヌ及びベルリン国際映画祭での上映をはじめ、ロンドン、パリ、プラハ、ウィーンなど、国外にも作品発表の場を広げている。

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