レビュー

カリスマ不在の時代にカリスマ足り得るバンド、KASABIANの来日ツアーがスタート

金子厚武
2012/01/13
カリスマ不在の時代にカリスマ足り得るバンド、KASABIANの来日ツアーがスタート

現代は、カリスマ不在の時代である。メディアの発達に伴う個人の趣味の多様化によって、誰もが夢中になるカリスマの登場は難しくなり、ネットから発せられる顔の見えない無数の声こそが、時代を動かしていると言ってもいいだろう。近年アメリカのインディシーンから自由な精神を持った良質なバンドが次々と現れているのも、こういった状況と無関係ではないはずだ。

もちろん、そんな時代においてもカリスマが存在することは事実で、数としては少ないだけに、その分影響力はこれまで以上のものがあるように思う。アメリカには言わずと知れたLADY GAGAがいるし、イギリスに目を向けても、この時代にCDを1000万枚売るという偉業を成し遂げてしまったADELEがいる。バンドでも、FLORENCE + THE MACHINEのフローレンス・ウェルチ嬢は、すでにイギリスでは絶対の存在だ。さて、そう考えると、今足りないのは男性のカリスマということになるだろうか。「草食系」という言葉が世に広まって久しいが、その状況は世界の音楽シーンにも当てはまるようだ。もちろん、ここで登場するのが本稿の主役KASABIANである。

KASABIAN ライブ写真
©Ryota Mori

ティラノサウルスを倒した唯一の肉食小型恐竜の名をタイトルに関した最新作、『ヴェロキラプトル!』を当然のように全英一位に送り込んでの来日となったツアー初日の横浜ブリッツ。ステージに現れたのは、まさにカリスマという呼び名がぴったりのメンバーの姿だった。リーゼントをばっちり整え、フロントマンとしてステージを所狭しと動き回る、まさに「肉食系」なトム・ミーガンと、長髪に髭を蓄え、ロックスター然としたオーラを放つバンドの司令塔、セルジオ・ピッツォーノ (サージ)。この二人が並んだときのインパクトは、同時代の他のバンドではなかなか味わえないものである。やはり、イギリスの音楽ファンは、ギャラガー兄弟に見ていた夢を、今はこの二人に託しているのだろう。

さらにすごいのは、彼らが決して前時代的な肉食恐竜ではなく、進化した恐竜だということだ。サイケデリックなヒップホップをルーツに持つ彼らのロックは、音圧や音量で押すだけの淡白なロックではなく、決して多くない音数でグルーヴの渦を生み出す新しい形のロック(サージいわく「フューチャリスティック・ロック」)である。ミニマルな路線を推し進めた『ルナティック・アサイラム』以降の楽曲を中心とした今回のセットリストは、そんな彼らのラジカルさを改めて際立たせてもいた。最強の恐竜も脳の小ささゆえに滅びたと言われるが、知性を備えた恐竜となれば、まさに鬼に金棒と言えよう。

KASABIAN ライブ写真
©Ryota Mori

今回の来日ツアー、残すは新木場スタジオコーストの2デイズ。カリスマとは、舞台が大きければ大きいほど、その本領を発揮するものである。

イベント情報

『KASABIAN JAPAN TOUR 2012』

2012年1月10日(火)
OPEN 18:00 / START 19:00
会場:神奈川県 横浜BLITZ

2012年1月12日(木)
OPEN 18:00 / START 19:00
会場:大阪府 ZEPP OSAKA

2012年1月13日(金)
OPEN 18:00 / START 19:00
会場:愛知県 ZEPP NAGOYA

2012年1月15日(日)
OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京都 新木場 STUDIOCOAST

2012年1月16日(月)
OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 新木場 STUDIOCOAST

料金:全公演6,800円(ドリンク別)

KASABIAN

トム(Vo)、サージ(G/Vo)を中心に英レスターで結成、後にクリス(B)、イアン(Dr)が加わり、現在のカサビアンとなる。04年のデビュー以降これまでにリリースした3作全てがミリオン・セールスを達成、現在2作連続で全英1位、最も権威あるBrit Awardでは「Best Group」も受賞している国民的バンドであり、海外や日本の大型フェスではヘッドライナーを務めるなど世界を代表するライブ・アクト。

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