レビュー

デザイン家具/インテリアの未来とテクノロジー

川人わかな
2012/05/11
デザイン家具/インテリアの未来とテクノロジー

世界最大の国際的な家具見本市/デザインの祭典である、『ミラノサローネ国際家具見本市2012』が、2012年4月17日(火)から22日(日)まで、イタリア・ミラノ市内にて開催された。会場はメイン会場であるフィエラと、市内会場であるフォーリサローネの2つで構成された。期間中は、家具やデザイン関係のイベントが街中で開かれ、街全体が家具/デザイン一色で埋め尽くされる。インテリアとファッションやアートの境が曖昧になってきている昨今、ミラノサローネも、家具だけではなく、デジタル家電やファッション、車、インスタレーションなども含めた総合的なデザインを発表する場としての役割が大きくなってきているようだ。

入場者で賑わうフィエラ会場入口。
入場者で賑わうフィエラ会場入口。

メイン会場であるフィエラには、約20万平米の広大な会場内に計2,500ブランドのブースがずらっと並ぶ。今年も世界160ヶ国から30万人以上の来場者を迎え、その内6割以上がイタリア国外からの参加者だという。会場内は、デザイン家具、キッチン、バス&トイレ、そして若手デザイナーの発表の場であるサローネサテライトに分けられている。

フィエラ会場の様子
フィエラ会場の様子

近年の傾向であった、デザイナーの名前を最重視することの反発からか、今年のデザインのトレンドは、デザイナーの有名無名に関わらず、素材本来の特徴や利点を活かしたものに再び注目が集まった。たとえば、木目の模様をデザイン要素として上手く取り込んだ、マッシモ・モロッツィによる「EDRA」の収納棚『Bois de rose』や、ミニマルな構造の美しさが光る、若手デザイナー、フランセスコ・ファッチンによる「Miniforma」のチェア『Pelle e Ossa(Skin and Bone)』。どちらもシンプルながら印象的で、飽きがこないデザインだ。イタリア家具ブランドの「Moroso」は、 パトリシア・ウルキオラの『M.a.s.s.a.s.』ソファーを展示。アシンメトリーな形と独特な質感のファブリックが面白い。

Moroso『M.a.s.s.a.s.』by Patricia Urquiola
Moroso『M.a.s.s.a.s.』by Patricia Urquiola

また、世界25カ国で発行されているインテリア誌『エル・デコ』が主催する、「エル・デコ・インターナショナル・デザイン・アワード」の今年度受賞者、「nendo」による『Zabuton』チェアも印象に残る逸品だ。さらに「nendo」は、オリジナルブランドである「1%products」の新作を含むコレクションを、ミラノ市内の会場で発表した。それ以外にも、シンガポール発の新ブランド「K%」のアートディレクションや「LASVIT」の花器のデザインなども手がけ、最近の活動の成果を精力的にアピールした。

Moroso『Zabuton』and『Byobu』by Nendo
Moroso『Zabuton』and『Byobu』by Nendo

そして若手デザイナーを紹介するショーケースである、サローネサテライト。展示されていた中から、目についたものを紹介したい。「SIREN ELISE WILHELMSEN」の『Season Carpet』は気温の変化によって、色が変わるカーペット。気温が低いと緑色だが、気温が上がるにつれて、黄色や赤色に変化していく。カーペットの変化で季節の移り変わりやその日の状態を知れる、というわけだ。機能的には複雑なものではないが、インタラクティブ性(それもアナログ的な)を持った家具としての面白さがある。

SIREN ELISE WILHELMSEN 『Season Carpet』
SIREN ELISE WILHELMSEN 『Season Carpet』

「Milia Seyppel」による陶器のボウル『Chapeau』は、淡い色と丸い造形が可愛らしい。中に入れるものの大きさによって、深いタイプと浅いタイプのボウルとフタを選ぶことで、4つの組み合わせ方ができる。

Milia Seyppel 『Chapeau』
Milia Seyppel 『Chapeau』

ミラノ市内に点在する、市内会場のフォーリサローネでも、さまざまな展示やイベントが開催されていた。その中から日本人デザイナーの展示をいくつか紹介したい。日本人が得意とする洗練されたテクノロジーを上手く使った作品は、今後の家具やインテリアデザインの展開を予感させる。

パナソニックは「光合成」をコンセプトとしながら、今注目の建築家、平田晃久氏による会場構成で、葉に見立てた太陽光パネルのオブジェを、ミラノ大学の中庭のスペースで展開。未来的な太陽光パネルと、古典的なイタリア建築とが面白いギャップを見せていた。

ミラノ大学構内のパナソニックの展示
ミラノ大学構内のパナソニックの展示

たくさんのデザインイベントが開催されていた、トルトーナ地区だが、その中でもひと際目立って注目を集めていたのが、Superstudio Piùを会場とした、『Temporary Museum for New Design 2012』だ。

『Temporary Museum for New Design 2012』会場入口
『Temporary Museum for New Design 2012』会場入口

たとえば、入口すぐ左手の広いスペースでプレゼンテーションを行った、キャノンによる展示『NEOREAL IN THE FOREST』。建築家の中村竜治氏による、ピアノ線が均質な格子状に組まれた立体スクリーンに、アーティストの志村信裕氏の映像を映した『Spring』や、ファッションデザイナーのミントデザインズによる、プリーツ加工を施した滝の流れのようなドレープの立体スクリーンに、同じく志村信裕氏による映像を映した『Fall in Pop』。いずれも家具/インテリアという枠組みを超えて、繊細な光と映像の世界に魅了される作品だ。

「NEOREAL IN THE FOREST」の『Fall in Pop』
「NEOREAL IN THE FOREST」の『Fall in Pop』

そして今回、何よりも個人的に印象に残ったのは、原研哉氏がデザインした、INAXのバスタブ『Foam spa』だ。大量の泡が蓋の役目をするため、お湯が冷めにくく湯気が立ちにくいので、入浴しながら本が読め、さらにはリビングでの入浴までもが可能、とうたう。

原研哉氏デザインのバスタブ『Foam spa』
原研哉氏デザインのバスタブ『Foam spa』

最初見た時は、まさかこれが湯船だとは思わなかった。というのも、繭のような形の白いものが目に入ったからだ。まさにデザインが作り出す、新しいライフスタイルの提案。これは入浴文化が発達した日本だからこそのアイデアだといえるだろう。

素材を活かしたものが話題になっていたフィエラ会場。素材重視の傾向は今後も続いていくと見られている。名前が先に来るのではなく、作品そのものが評価されることで、才能ある新しいデザイナーに注目が集まるのは良いことだ。また、フォーリサローネ(市内会場)のイベントは、さらに年々増えつつあるが、新しいテクノロジーの積極的な導入によって、内容は家具やインテリアの紹介というよりも、美術展やインスタレーションアートのような展示が目立つようになってきている。そのバリエーションは益々豊富になり、家具が果たす役割はさらに広がっていくだろう。このような家具とテクノロジーの新しい関係性に、今後も目が離せない。

イベント情報

『ミラノサローネ国際家具見本市 2012』

2012年4月17日(火)〜2012年4月22日(日)
メイン会場:イタリア ミラノ ローフィエラ ミラノ

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一聴・一見すると繊細に織られたアンサンブルに柔和な印象を抱く。が、極太のベースがリズムとメロディの両方を引っ張っていく様は超アグレッシヴでもある。観客も含めて会場に漂う空気は一貫して緩やかなものでありながら、なによりも3音の鋭い合気道を存分に楽しめるライブ映像だ。ビルドアップした低音に歌心を置くスタイルはまさに今だし、音の余白も心地いい。ポップとエッジィの両極をあくまで愛嬌たっぷりに鳴らす台湾出身の3ピースバンド、その魅力を1カット1カットが十二分に伝えている。(矢島大地)

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