レビュー

MINIと人と絵画が一体化!? 女子大生が生み出した驚愕のペインティング

萩原雄太
MINIと人と絵画が一体化!? 女子大生が生み出した驚愕のペインティング

目の前には色とりどりに塗られたMINIと、同じく体中にくまなくペインティングを施された人……。一見すると乱雑に塗られたボディーペインティングのように見えるものの、これを写真に撮影し、ディスプレイにその画像を映し出せば、その真価がわかるだろう。目の前に広がっていたはずの3次元空間が消失し、「まるで絵画のよう」な写真が完成する。そこにあるはずの車が、人が、絵画の中に描かれたものとなってしまうのだ。

『MINI×ミードの常識破りな挑戦!-MINI やんちゃアート in 渋谷』イベント風景

3次元の物体をキャンバスに絵の具を塗り、2次元絵画のように見せる独特のスタイル「リビングペインティング」によって、世界中で注目を集めているのがアレクサ・ミード。弱冠27歳の女性アーティストだ。プレゼンテーション番組『TED』をはじめ、日本のバラエティー番組にも出演し、徐々にその存在が知られるようになってきた。

そんなアレクサのライブペインティングが渋谷・109の入り口で行われた。事前にペインティングされたMINIの前で、モデルの男性の全身に青や黄色の絵の具を塗りたくっていくアレクサ。「人形なの?」「人じゃない?」と、モデルに絵の具を塗りたくる彼女の様子を見て、休日の渋谷を歩く人々も興味をかきたてられ、立ち止まる人が後を立たなかった。

「今回の作品は、東京のエネルギーがインスピレーションになって制作されたの。渋谷のうるさい環境も、それが自分にとってのエナジーになった。いつもヘッドフォンで音楽を聴きながら創作をしているから、ノイジーであることも気にならなかった」

モデルの男性の全身に青や黄色の絵の具を塗るアレクサ・ミード
モデルの男性の全身に青や黄色の絵の具を塗るアレクサ・ミード

途中、スマートフォンを取り出して、作品を撮影するアレクサ。彼女の作品は、自分の目で見るだけでは完成しない。作品を写真に収め、それが2次元として完全にフィットした時に、彼女は絵筆を置く。

「目で見たときと写真で見たときとは全然違うから、2つの目ではなくカメラで確認しながら作る。モデルにもこういうものを作っているんだということを伝えられるし、モデル自身も自分がどう変わっているのかを確認できるから楽しんで絵の具まみれになれるしね」

『MINI×ミードの常識破りな挑戦!-MINI やんちゃアート in 渋谷』イベント風景

作業が進むにつれて、彼女の筆の運びは次第に慎重になっていく。色が重ねられ、陰影がつけられ、白いシャツ、パンツ姿で現れたモデルは、もはや原型を留めなくなった。1時間あまりの間に耳の中まで絵の具を塗られたモデルの男性。アレクサのにこやかな笑顔とともに、ペインティング作業は終了した。

『MINI×ミードの常識破りな挑戦!-MINI やんちゃアート in 渋谷』イベント風景

アレクサは美大などで美術の専門的な教育を受けていない。16歳のときにサマーキャンプで絵画の授業を受けて以来、絵筆を手にすることもなかった。大学では政治学を専攻し、オバマの選挙運動にも協力していた彼女。その目標は出身地であるワシントンD.C.の政府機関に入ることだった。

だが、ある日「物体の陰影」というアイデアが浮かんだ女子大生の彼女は、おもむろに絵筆をとった。そして、物体の影を縁取る作品を創作しはじめ、2008年、それを発展させることで、現在のような「リビングペインティング」のスタイルを獲得した。自らのアイデアに興奮した彼女は、大学卒業後の勤務先を、ホワイトハウスではなく、自宅の地下室に選び、そのスタイルを完成させていったのだ。

アレクサは、自らの作品を「知覚の境界を揺さぶるもの」と考える。彼女がテーマとするのは知覚がもたらすリアリティーだ。本来、3次元である物体が、あたかも2次元であるように知覚されるそのスタイルは、さながらだまし絵に惑わされたような新鮮な驚きを与える。世界中の観客は、はにかみながらその作品の前に佇むこととなるのだ。

『MINI×ミードの常識破りな挑戦!-MINI やんちゃアート in 渋谷』イベント風景

今回のライブペインティングはMINIのキャンペーンの一環として開催された。MINIでは、キャンペーンスローガンとして「NOT NORMAL」を掲げ、「やんちゃしない?」をキーワードにプロモーションを展開している。「日本一のやんちゃもの」として知られるゆるキャラのくまモンとコラボした「くまモンMINI」が話題になったのも記憶に新しい。そんなMINIがコラボの相手に選んだアレクサ。そのスタイルのみならず、独学で発見した手法で、世界的なアーティストの座にまでのし上がった彼女の「NOT NORMAL」なバイオグラフィーもまた、MINIがアレクサを選んだ一因だろう。

「私の作品を通して、普通にあるものを、普段とは違う方法で見てほしい。普通なんてつまらない。殻を打ち破って、さらに上に行くのはチャレンジングだけど最高に楽しいことじゃないかな」

自分の服で絵筆をぬぐうアレクサは、ライブペインティングが終わると、モデルと同じく絵の具まみれになっていた。作業が終わると、スマートフォンを手に写真を撮影している多くの人を眺めていた彼女。その「NOT NORMAL」なチャレンジが成功し、彼女の顔には満足気な様子が浮かんでいた。

イベント情報

『MINI×ミードの常識破りな挑戦!-MINI やんちゃアート in 渋谷』

2013年9月21日(土)11:00〜15:00
会場:東京都 渋谷 SHIBUYA109

プロフィール

アレクサ・ミード

1986年ワシントンDC生まれの米国人アーティスト。2009年、ニューヨーク州のヴァッサー大学にて政治学の学位を取得した後、作品の制作・発表を始める。美術大学や絵画教室に通うなどの経験は一切ない。一見絵画にも見える彼女の作品は、物や人体に直接絵具を塗ることで3次元から奥行きを取り去り、さらに写真におさめることで、2次元の作品としている。このトリックアートの手法を使った絵画、写真、そしてパフォーマンスの要素を組み合わせた彼女の作品は注目を集め、コラボレーションの依頼が絶えない。今もっとも熱い視線が注がれる米国人アーティスト。日本のメディアには、日本テレビ『世界の果てまでイッテQ』(2011年2月11日OA)のカレンダープロジェクトにて出演。

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