レビュー

ウェブ動画全盛時代に考えたい、映像業界の新しい働き方

宮崎智之
2014/06/05
ウェブ動画全盛時代に考えたい、映像業界の新しい働き方

映像制作の現場から疑問符、「多重下請け構造を変革したい」

インターネットを通して不特定多数に仕事を発注する「クラウドソーシング」が注目を集めている。フリーランサーを中心に新しい働き方として浸透しつつあり、エンジニアやウェブデザイナーのための「ランサーズ」「クラウドワークス」などの各社がシェア拡大にしのぎを削っている。その中でも動画・映像制作に特化したサービスとして台頭してきているのが「Viibar(ビーバー)」だ。5月24日には、サービスに登録するクリエイターを集め、交流イベントが開催された。

Viibarは2013年10月にスタート。映像制作会社や楽天に勤めた経歴を持つ上坂優太氏がクライアント、広告代理店、複数のプロダクションなど何層にも重なった制作の下請け構造に疑問を持ち、「動画を作ってほしい人とクリエイターをシンプルにつなぐサービスを実現したかった」と感じたことが発端となった。

上坂優太
上坂優太

登録したクリエイターは、Viibarに掲載された仕事を選んでウェブ上の企画コンペに参加し、仕事を受注する。他にもポートフォリオのみで応募できるコンペや、指名制で受注することも。動画制作の工程をモジュール化することで、ウェブ上で各分野のクリエイターを集め、分業でひとつの動画を制作することも可能だという。サービスが発足してまだ1年足らずだが、これまでYahoo!やmixi、三井住友銀行、公益財団法人JKAなどの多様な企業・団体がViibarを通して発注した実績を持っている。

クラウドソーシングが求められる背景

動画・映像制作のクラウドソーシングが求められるようになった背景には、ウェブ動画の普及によって企業による動画広告の裾野が広がったことがあるという。これまで映像制作といえば予算1,000万円を超えるCM制作などがメインだったが、現在は100万円を切る制作依頼も多い。広告以外にもサービスの利用法を説明するための簡易的な動画などの需要もある。

交流イベントのトークショーに登壇したフリーランスの大石健弘氏も「制作会社にいた頃から、これまでに対応できていなかった低価格帯で映像を作る需要が増えるだろうと言われていた。Viibarの存在を知ったとき、『このようなサービスがやっぱり出てきたか』という感想を持った」と振り返る。

トークイベントの様子
トークイベントの様子

さらに、クリエイター側としても機材の発達や低価格化によりローコストで質の高い動画が制作できるようになった。制作会社では受けられない少額予算での受注も、フリーランサーならば受けられるのだ。こうしたクライアント側とクリエイター側の需要が動画・映像制作に特化したクラウドソーシングサービスを生む一因となっているのである。イベントに出演した宮本佳典氏は「機材が安くなったことなどにより、会社から独立するフリーランスが増えてきているように思うので、需要が高まるかもしれない」と話す。

左から宮本佳典、大石健弘
左から宮本佳典、大石健弘

クラウドソーシングのメリットとしては、「クライアントとの距離が近くなることによって相手の喜びを実感できるようになり、それが良い作品を制作するモチベーションになる」との声も聞かれた。上坂代表が問題視した多重下請けの構造は、多数のマージンが発生してクリエイターの取り分が少なくなることに加え、クライアントとクリエイターの距離を広げてしまう。間に挟む企業を減らすことができれば、クライアントの意向がクリエイターに伝わりやすくなり、成果物への満足度も直にわかるようになるのである。

クラウドソーシングは、動画・映像市場で働く人を幸せにできるだろうか?

もちろん、課題はたくさんある。Viibarではクリエイターの登録に一定の基準を設けているが、納品する作品の質をどれだけ担保できるかが、サービスが発展するための大きなポイントになる。また、あまりに納期が短かったり、作業に対する対価が低かったりする仕事が多くなってしまえば優秀なクリエイターからは敬遠されるだろう。その部分のコントロールも重要だ。

さらに、「個人だとスタジオやロケ現場などが確保できないことがあるので、Viibarに仲介してもらいたい」との意見も。Viibarは現在、「ベータ版」と謳っているため、今後、クライアントとクリエイターの声を反映してサービス向上を図ることが期待される。

イベントではトークショー終了後に、軽食が用意されて交流会が行われた。Viibarの名前には「Video(動画・映像)を通じて、i(人と人とが)、bar(バル=酒場のように集まる場所)」との思いが込められているという。上坂代表は、「オンライン上でのやりとりは効率的ではあるが、オフラインでクリエイター同士やスタッフが顔を見せ合う場を作るのも重要。お互いを刺激し合う創発的な場をこれからも作っていきたい」と話す。

交流会の様子
交流会の様子

新しい仕事のスタイルが、クライアント、クリエイター双方にとってハッピーな結果をもたらすことができるかどうか? クラウドソーシングの市場を今後も注視していきたい。

イベント情報

『Viibar Creators Meet Up! Vol.1』

2014年5月24日(土)
会場:東京都 Open Network Space Daikanyama

プロフィール

Viibar(びーばー)

動画制作に特化したクラウドソーシング・スタジオ。国内外のクリエイターがそれぞれの創造性とスキルを持ち寄り、協力して動画制作を行う。Viibar独自のオンライン制作支援システムを利用することで、動画制作の各工程を分業できるので、より自身のスキルを活かした制作が可能になる。Viibarは、IT技術を駆使し、映像制作業界を革新、クリエイターにとって新しい自由なワークスタイルを提供する。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

斉藤和義“アレ”

ドラマ『家売るオンナの逆襲』の主題歌でもある斉藤和義48枚目のシングル“アレ”のMVが公開。冒頭から正方形の枠に収められた動画や画像が繋ぎ合わされていくこのMV、実は斉藤本人が撮影・編集・監修を務めたという。某SNSを彷彿とさせるたくさんの動画や画像がめまぐるしく変わる様に注目して「アレ」とは何かを考えながら観るのも良し、ひたすら猫に癒されるのも良しです。(高橋)

  1. OKAMOTO’Sが大人と少年の間で語る、28歳で迎えた10周年の心境 1

    OKAMOTO’Sが大人と少年の間で語る、28歳で迎えた10周年の心境

  2. 竹内結子主演、異色のリーガルドラマ『QUEEN』。監督は関和亮、音楽も注目 2

    竹内結子主演、異色のリーガルドラマ『QUEEN』。監督は関和亮、音楽も注目

  3. 『十二人の死にたい子どもたち』キャラ&場面写真に橋本環奈、新田真剣佑ら 3

    『十二人の死にたい子どもたち』キャラ&場面写真に橋本環奈、新田真剣佑ら

  4. 柴田聡子がジャコメッティら巨匠から活力をもらう展覧会レポ 4

    柴田聡子がジャコメッティら巨匠から活力をもらう展覧会レポ

  5. 『鈴木敏夫とジブリ展』4月から神田明神で開催、鈴木敏夫の「言葉」に注目 5

    『鈴木敏夫とジブリ展』4月から神田明神で開催、鈴木敏夫の「言葉」に注目

  6. 『乃木坂46 Artworks だいたいぜんぶ展』開催間近、齋藤飛鳥らが訪問&感想 6

    『乃木坂46 Artworks だいたいぜんぶ展』開催間近、齋藤飛鳥らが訪問&感想

  7. 石原さとみが後楽園堪能する東京メトロ新CM 曲はスキマスイッチと矢野まき 7

    石原さとみが後楽園堪能する東京メトロ新CM 曲はスキマスイッチと矢野まき

  8. Spangle call Lilli lineの美学 20年消費されなかった秘密を探る 8

    Spangle call Lilli lineの美学 20年消費されなかった秘密を探る

  9. back numberが深田恭子主演ドラマ『初めて恋をした日に読む話』主題歌 9

    back numberが深田恭子主演ドラマ『初めて恋をした日に読む話』主題歌

  10. 漫画本に囲まれる「眠れないホテル」MANGA ART HOTEL, TOKYOが2月開業 10

    漫画本に囲まれる「眠れないホテル」MANGA ART HOTEL, TOKYOが2月開業